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東伊豆・伊東の海で繰り広げられるヒラメの「恋バナ」を観察してみよう【私の好きなサカナたち】

Web『サカナト』には様々な水生生物好きのライター(執筆者)が所属しています。そんなライターの皆さんが特に好きなサカナ・水生生物について自由闊達に語らう企画「私の好きなサカナたち」。今回はサカナトライター・まっさん【伊東のインストラクター】さんによる「私の好きなサカナたち」をお届けします。

私は仕事柄、東伊豆・伊東の水中を毎日観察しています。伊東の海はさまざまな角度から潮が当たり、たくさんの生物が集う、まるで「大都会」な海です。

都会の街に様々なドラマがあるように、伊東の海では様々な人間関係、もとい、「お魚関係」が繰り広げられています。

伊東の海で見られる<恋バナ> ヒラメの求愛行動

さて、私は伊東きっての「恋バナ好き」。その中でも、大好きなヒラメの求愛についてご紹介します。

伊東では、2~3月ごろの水温16度くらいの時期、少し影になっている砂地でヒラメは不思議な求愛行動を行います。体の大きなメスのヒラメの近くに、オスのヒラメたちがひらりと飛んで近づいてきます。まるで、それとなく、本当は興味があるのに無いふりをして話しかける男子のように見えます。

そこからジワジワと距離を詰め、オスはメスの体に背鰭(えんがわ)を当てるようにして、体の一部だけメスの上に重なります。多い時は1枚のメスに対して、6枚ものオスが集まることもあります。

産卵時は<ヒラメのミルフィーユ>?

ここからオスたちのアプローチが始まります。

背鰭を細かく動かして、メスに産卵を催促。産卵が近づくと、1枚のオスがメスの上に完全に重なります。

それに続いて他のオスたちも、さらにその上へ。まるで、ヒラメのミルフィーユのようになります。

顔側から撮影したもの・1番下がメス・上3枚がオス(撮影:DiveFamilyYellow)

ここからオスたちのポジションの入れ替わりなどもあり、最終的には1番下にいるメスが飛び出し、それに追いついたオスが見事メスを射止めます。

ヒラメの産卵の流れはこんな様子。ただ、人間にも色々なタイプがいるように、ヒラメのオスの中でも、それぞれの個体で求愛に個性が見られます。

オスたちの腕の見せ所<アプローチ>

ヒラメのオスたちはメスに対して、どのようなアプローチをしているのか、見ていきましょう。

まるで「いつでもいいよ、君のペースで」と語りかけたり優しく声をかけたりするように、小刻みかつソフトに背鰭(えんがわ)を動かすオス。一方、強く激しく背鰭を動かしてグイグイとアピールし、まるで「早く俺様と付き合えよ」と強気なアピールをするオス。

メスを囲むオスのヒラメたち・左から2番目砂がかかっているのがメス(撮影:DiveFamilyYellow)

他のオスに先を越されて、渋々求愛行動をしているオスもいます。まるで「君を諦めないぞー!」と努力しているようです。

ヒラメのメスが色々なタイプのオスに同時にアピールされる様子は、まるで「乙女ゲーム」。羨ましいなあと思いつつ、私は紳士的に見えるヒラメについときめいてしまうのでした。

親近感を持つことは環境を守る意識へのステップ

魚たちも人間と同じ「生物」なので、私は親近感を持ってもらえるような情報発信を心がけています。

魚たちの住む世界に親近感を持ってもらうことは、海洋汚染などの実態を知り、環境を守る意識を高める1つのステップであると考えるからです。

末長く「えんがわ」を美味しく食べられる海でありますように。

※「えんがわ」は背鰭や尾鰭の付け根を指します。今回の記事では、イメージしやすいようにヒラメの背鰭を「えんがわ」と表記しています。

(サカナトライター:まっさん【伊東のインストラクター】)

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