スナギンチャク類はサンゴやイソギンチャクと同様に刺胞動物に分類されます。
このグループは世界中に広く分布し、様々な生物の棲家としても重要な存在です。しかし、魚や造礁サンゴと比較すると研究が進んでおらず、地理的分布も進化史も謎に包まれていました。
そこで、琉球大学を含む国際研究チームは、スナギンチャク類の地理的分布や進化史を明らかにするための研究を開始。生物地理学的なアプローチでこの課題に取り組みました。
この研究成果は「Frontiers in Biogeography」に掲載されています(論文タイトル:Global biogeography of zoantharians indicates a weak geneticdifferentiation between the Atlantic and Indo-Pacific oceans, and distinct communities5PRESS RELEASEin tropical and temperate provinces)。
刺胞動物「スナギンチャク」
スナギンチャク類はサンゴやイソギンチャクと同様に刺胞動物の仲間です。
このグループは世界中に広く分布。スナギンチャク類は様々な生物の棲家としてだけでなく、浅海に広く分布することで生態系の構造と機能の維持に重要な役割を担っています。
スナギンチャクの仲間(提供:PhotoAC)スナギンチャク類は重要な生物である一方、魚や造礁サンゴと比較して研究が進んでおらず、地理的分布や進化史は謎に包まれていました。
スナギンチャク類を世界規模で解析
そうした背景で、琉球大学を含む国際研究チームはスナギンチャク類を謎を解明すべく、世界規模での分布および進化史の解析を行いました。
この研究は、研究代表者の1人が2015年に沖縄で初めて潜水調査を行った際に、大西洋に分布する種と酷似したスナギンチャク類が数多く存在することに気づいたことがきっかけだといいます。
マメスナギンチャク(提供:PhotoAC)この研究では、世界各地のサンゴ礁での調査結果と文献データ統合。スナギンチャク類の分布情報について、網羅的な整理が行われました。
スナギンチャク類は汎世界的に分布することが判明
従来の研究では、大西洋とインド洋の生物相の違いはイシサンゴや魚類などの分類群が中心であり、スナギンチャク類はこれまで研究例が少ないといいます。これらの分類群では、両海域で生物相や多様性に大きな違いがあることが知られており、特にイシサンゴではインド太平洋の方が多様性が高いようです。
今回の研究で、スナギンチャク類が従来のパターンとは異なる分布様式を示すことが判明。さらに、複数の科・属において、汎世界的分布(特定の生物が世界中のほぼ全域、もしくは多くの大陸や海洋に広く生息している状態)が確認されました。
さらに、インド太平洋域と大西洋域では外見と遺伝子が類似いた姉妹種群の存在も明らかになったのです。
これらのことは、多くのサンゴ礁生物が示す地域固有の分布パターンとは対照的な結果となりました。
サンゴ礁生態系研究に貢献
今回の研究により、複数の科・属のスナギンチャク類が汎世界的に分布することが明らかになりました。また、インド太平洋と大西洋では、見た目がよく似た姉妹種群が存在することも判明したのです。
これらの結果は、海洋生物における多様性理解が研究の進んだ分類群に依存していることを示すと同時に、今後の研究ではこれまで注目されてこなかった生物群にも着目する重要性を示しています。海洋生物における多様性理解が研究の進んだ分類群に依存していることを示すと同時に、今後の研究ではこれまで注目されてこなかった生物群にも着目する重要性を示しています。
近年は、環境ストレスの高い海域で、スナギンチャク類が造礁サンゴを凌駕し優占する事例もあるようです。そうした中で、今回の研究成果は将来のサンゴ礁生態系の予測・保全に貢献することが期待されています。
(サカナト編集部)