魚の尾びれは、魚が前進するために一番よく使うひれとして知られています。実はこの尾びれの形は、その魚の生態や泳ぐ速さなどによりそれぞれ異なるのです。
この記事では、魚の尾びれの主な役割や泳ぐ速さとの関係などについて解説します。
魚の尾びれはどんな役割をもつ?
魚の尾びれは、魚が前進するためによく使うひれとして知られています。魚は尾びれを左右に振ることで水を後方に押し出し、その反作用を利用して前に進みます。
また、魚の尾びれは他にも「進行方向の調整」「バランスの維持」「速度調整」といったさまざまな役割をはたしています。尾びれを特定の方向に振ったり、動かし方を微妙に変えたりすることで、それぞれの生態に適した泳ぎのスタイルを保っているのですね。
魚の尾びれの形と泳ぐ速さの関係は?
尾びれの形状や構造は、魚の種類や生育環境によりそれぞれ異なります。ここでは、尾びれの形の違いやそれぞれの特徴について解説します。
先が2つに分かれた硬い尾びれ

クロマグロ(提供:PhotoAC)
高速で泳ぐ魚は、先端が2つに分かれた硬い尾びれをもつことで知られています。
このような尾びれは、水を後方に押し出した際により大きな反作用が得られるため、長距離を泳ぐ魚には最適な形です。マグロやスズキなど大型の魚の多くは、このタイプに分類されます。
先が広がったやわらかい尾びれ

マハゼ属の魚(提供:PhotoAC)
一方、先端が丸く広がったやわらかい尾びれをもつ魚もいます。このような形の尾びれは高速の移動には向かない反面、短い距離での急な動きに適しているといわれています。
長い距離を移動せず、一か所にとどまりながらゆっくりと泳ぐ魚には最適な形といえるでしょう。ヒラメやハゼなど、中型の魚の多くはこのタイプに分類されます。
生態にあわせて進化する魚の尾びれ
種によって形が異なる魚の尾びれは、それぞれの生態にあわせて徐々に進化を遂げていることがわかっています。たとえば、大型の魚に狙われやすいトビウオの尾びれは素早く飛んで逃げられるように、下方が長く伸びた形状になっています。
生き残るための生存戦略として、各々の生活スタイルに最適な形の尾びれをもつ魚たち。自然環境や生態バランスの変化により、今後、見たこともない形の尾びれをもつ魚が発見されることもあるのかもしれませんね。
(サカナトライター・糸野旬)