古くから日本で馴染みがある甲殻類ですが、現在ではマイナーな生き物となっているワレカラ。
そんな彼らの詳しい生態はあまりわかっておらず、研究する際も基本的には野外から採集してきたワレカラを用います。そのため、ワレカラの飼育方法もほとんど確立されていません。
今回は過去にワレカラを飼育・展示していた筆者の経験に基づいた、ワレカラ飼育方法をご紹介いたします(※あくまで筆者なりの一例です。これらがベストな飼育方法というわけではありません)。
大前提としてワレカラの飼育は難しい
飼育方法を紹介する前に大前提ですが、ワレカラの飼育は簡単ではありません。
かなり高い機材が必要になることもありますし、海水魚飼育経験のない方にとっては海水を準備することも難しいでしょう。今回はそうした海水の準備方法や水温維持の方法、機材などの紹介は端折り、ワレカラ飼育における重要事項のみ紹介します。
ワレカラの酸欠に注意
酸欠はワレカラ飼育において一番注意するべき点と言っても過言ではないかもしれません。彼らは遊泳力に乏しいため、魚のように泳いで自ら水中の酸素を取り込むのが難しいのです。
実際の経験談として、たった半日酸素を供給しなかっただけで全滅したこともあります。飼育時はもちろん、採集して持ち帰る際もエアーポンプで酸素を供給することが必須です。
ワレカラは水質に敏感
ワレカラを含む多くの無脊椎動物は直接海水を取り込むため、水質の影響を受けやすいです。
詳細は後述しますが、特にワレカラたちはエサが生餌となることが多いため、水を汚しやすいです。そのため適度な水換えも必要となりますが、一気に水換えすると急激な水質変化が起こってしまい、それもワレカラたちにはダメージとなります。
水換えの際は口の細いホースなどを用いて少しずつ換水しましょう。外部フィルター等を用いて水質浄化してもOKですが、小さなワレカラたちが吸水口に吸い込まれないように、吸水口をネットで囲うなどの工夫が必須です。
ワレカラの適温は?
ワレカラは日本に約100種類以上いると言われているため、ワレカラ種ごとに適温は異なります。もっと言えば、同じ種でも採集された場所によって水質や水温も異なるので、「この温度にすれば絶対大丈夫!」というものは正直ありません。
そのため一概にはいえませんが、例えば筆者が飼育していたトゲワレカラやオオワレカラなどよく見られるワレカラ種は大体20℃ほどで安定して飼育ができました。
また、冷水域に生息するワレカラを飼育していた際は、常時10℃ほどにしてあるクーラー室に水槽を置いて飼育していました。この記事を読む皆様が採集しやすいワレカラたちは大体20℃前後の水温で飼育出来るかと思います。
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