魚図鑑を読んでいると、標準和名とは別に学名が掲載されていることがあります。
学名はラテン語で表記される世界共通の名称ですが、日本人にとってラテン語は馴染みがなく、意味が分からないことがほとんどです。
しかし、一部の学名は我々に馴染みのある単語だったりします。
大きな生き物に付けられるシンプルな名前
冬の味覚であるマガキの学名はCrassostrea gigasです。
一見すると難しそうな名前をしていますが、種小名に注目すると馴染みのある単語が使われていることが分かります。この“gigas”はギリシャ語で「巨人」を意味する単語であり、我々がよく使うスマホなどでも見かけるギガバイト(GB)の語源にもなっています。
また、“gigas”は英語の“giant”の語源にもなっていることからも、なんとなく「巨大なもの」をイメージできるのではないでしょうか。
実際、種小名にgigasが用いられる魚は大きなことが多く、世界最大の淡水魚として知られるピラルクー(Arapaima gigas)や、最大で3メートルにもなるメコンオオナマズ(Pangasianodon gigas)はその典型的な例でしょう。
“gigas”が付く日本の魚
大きな魚=海外の魚というイメージを持っている方も多いかもしれませんが、実は日本にも大きな魚が生息しています。
例えば、体長1.9メートル程にもなるゾウカスベは大型種の多いガンギエイ類の中でも特に大きくなる魚です。本種の学名はDipturus gigasであり、大きな体に相応しい学名が付けられています。
ゾウカスベの標準和名の由来は不明であるものの、種小名がgigasであることを踏まえると、巨大なことを日本語ではゾウに例えたのかもしれませんね。
近縁種と比較して大きい場合に命名される
魚自体はそこまで大きくなくても、近縁種と比較して大きい場合に“gigas”が付けられます。
例えば、2023年に新種記載されたクモマダラハゼは本種の成魚の最大体長が近縁種と比較して大きいことからOphiocara gigasと命名されました。コワヌケフウリュウウオも体長13センチ程の魚ですが、同属と比較すると大きいことからMalthopsis gigasと命名されています。
この他にも“gigas”が付く魚にはコクチイシナギ(Stereolepis gigas)、スイトウハダカ(Diaphus gigas)がいます。
学名というと小難しいイメージがありますが、”gigas”のように我々に馴染みのある単語が使われている場合もあります。
“gigas”は魚だけではなく、他の動物群の学名にもたびたび使われているので、探してみるのも面白いかもしれません。
(サカナト編集部)
参考
(A Review of Malthopsis jordani Gilbert, 1905, with Description of a New Batfish from the Indo-Pacific Ocean (Lophiiformes: Ogcocephalidae))
(The genus Ophiocara (Teleostei: Butidae) in Japan, with descriptions of two new species)