カエルアンコウは「誘因突起(釣り竿のように伸びた第1背びれ)」を持つ魚で、第1背びれの先端部にはゴカイのような「エスカ(疑似餌のような器官)」が付いています。
名古屋大学大学院生命農学研究科の山本直之教授、萩尾華子特任助教、西野弘嵩氏、中山友哉特任助教らによる研究グループは、カエルアンコウがルアー(疑似餌)を振って獲物をおびき寄せて捕食する行動を「釣り行動」と命名し、本種の脊髄において第1背びれを動かす「釣り運動ニューロン」を発見したと発表しました。
釣竿を持つ魚「カエルアンコウ」
カエルアンコウはアンコウ目カエルアンコウ科に属する海水魚で、主に南日本の浅海域に生息しています。
本種はユニークな形に加え、海底を歩くように移動する姿はとても愛らしく、ダイバーからはもちろんのこと観賞魚としても人気が高い魚です。
カエルアンコウは背びれを4つ持ちますが、第1背びれが釣竿のように変化していることが大きな特徴で、誘因突起を振ることにより、小魚をおびき寄せ捕食することができます。
釣り竿を動かすニューロンが発見される
名古屋大学大学院生命農学研究科の山本直之教授らの研究グループは、カエルアンコウの脊髄において釣竿とルアーを動かす「釣り運動ニューロン」を発見。
この「釣り運動ニューロン」は他の背びれ(第2~4背びれ)の運動ニューロンとは異なる場所にあることも明らかになりました。
さらに行動観察の結果、第2~4背びれは威嚇行動に使用するほか、第4背びれは遊泳行動にも使われていることが判明したのです。
運動ニューロンが移動?
なぜ釣り行動ニューロンが第2~4背びれの運動ニューロンと異なる場所に分布しているのかは現時点で不明とされているものの、機能的な違いに起因する可能性が高いとされています。
また、進化に伴い受け取りたい情報が来る場所にニューロンが移動する現象が知られており、カエルアンコウではもともと背びれの運動ニューロンだったのが、本来の機能とは異なる役割を果たすために分布場所が移動したと考えられているようです。
この研究成果は『Journal of Comparative Neurology』に掲載されています(論文タイトル『Fish That Fish for Fish~A Peculiar Location of “Fishing Motoneurons” in the Striated Frogfish Antennarius striatus』)。
ひれの運動制御の理解はは哺乳類にとっても重要
カエルアンコウの「釣り運動ニューロン」の発見は、魚類の進化において重要な知見を提供する成果です。
また、魚類だけではなく、哺乳類を含めた脊椎動物の進化の謎を解き明かす手がかりとなるかもしれません。
(サカナト編集部)