水族館や自宅のアクアリウムで魚を観察したとき、彼らはどのような反応をするのでしょうか。驚いて逃げてしまう魚、餌を貰えると思い近づいてくる魚、いろんな魚がいると思います。
飼育下における魚たちでも様々な反応を楽しめますが、野生下における魚たちもまた一段と違った反応を見せてきます。野生下における魚の顔は、飼育下のそれとは全く異なるのです。
筆者の水族館体験・フィールド体験に基づいた、飼育下・野生下におけるそれぞれの魚の「顔」について記していきます。
自宅飼育下の魚は“人慣れ”する
自宅でアクアリウムをやっている人は分かると思いますが、魚は種類や個体によって人に慣れます。水槽搬入直後は人影に驚いていても、人が餌を与えてくれる存在だと理解すると、魚の方から近寄ってきます。

人工池で、コイなどが口をパクパクさせながら近づいてくる光景を見たことある方もいると思います。もちろんこの反応は“人を好きになったから”ではなく“人が餌を与えてくれると学習したから”見せるものです。

他にも、水槽掃除を何度か繰り返すうちに水槽に手を入れても反応が鈍くなった魚、別の容器に移すために網で捕まえようとしても逃げるのが遅い魚もいました。
「この人は襲ってくるわけではない」と学習すると、途端に反応が鈍くなるようです。
自宅飼育とは違う表情をみせる水族館の魚たち
水族館の大きい水槽では、自宅のアクアリウムとは違う魚の反応が見られます。
まず彼らはアクリル越しの人にあまり過剰な反応は見せません。魚の方から「人だ!(餌をくれる!)」と思って近づいてくることはなく、人がアクリルへ近づくとゆっくり遠ざかっていきます。

魚たちは人を認識していますが、必要以上に反応することもないのです。
水槽が大きい故の余裕なのか、それとも自宅飼育の魚とはまた違った認識の仕方をしているのか……同じ飼育下でも、魚の見せる表情は違うのです。

水族館の魚は飼育員を認識している?
水族館の魚は飼育員目線で見ると、さらにその表情を変えます。
筆者が以前勤めていた水族館では、大きな水槽であってもバックヤード側から水槽の上に立つと、彼らは自宅飼育の魚と同じように「餌だ!」と認識して近づいてきました。アクリル越しでは人に見向きもしなかったメガネモチノウオ(ナポレオンフィッシュ)も、バックヤードでは水面越しにこちらを見つめてきます。
また、筆者がかつて実習をさせていただいた水族館では、大水槽の上に立っただけでマグロやカツオが興奮して泳ぐスピードが速くなり、水面付近に集まりだしたこともありました。大型の水族館では、ジンベエザメやナンヨウマンタなどに餌を与える際、飼育員さんが水面をバシャバシャ叩いて餌の時間を知らせることもあります。
普段は小さな人間など認識していないかのように振る舞う彼らも、バックヤードではしっかり人を認識していることがわかります。