16種が知られるウナギ属のうち、6種は国際自然保護連合により絶滅危惧種に指定され、資源の保全が急務とされています。
魚の資源を保全する上で食性に関する情報の理解は重要であり、これまでは“胃を切開して内容物を調べる手法”がよく用いられていました。
しかし、この手法ではサンプルを犠牲にする必要があることから、最後に食べた餌に大きく結果が偏ること、ウナギのように様々な餌を利用する魚では多くのサンプルが必要であることが、摂餌生態を把握する上で大きな課題となっていたようです。
そうした中で、東京大学大気海洋研究所の研究グループはオオウナギを対象に、非致死的に胃内容物を調査する手法を開発しました。
この研究成果は「Journal of Fish Biology」に掲載されています(論文タイトル:Development of a non–lethal stomach content analysis method for freshwater eels: An empirical evaluation of the tube method for Anguilla marmorata)。
ウナギの食性調査
ウナギ属魚類は極地を除く全大陸に広く分布する降河回遊魚です。
現在、ウナギ属は世界で16種が知られており、そのうち6種は国際自然保護連合により絶滅危惧種に指定。資源の保全が急務とされています。
資源を保全する上で、その魚の食性に関する情報の理解は非常に重要です。これまでの調査では胃を切開して内容物を調べる手法がよく用いられていました。
オオウナギ(提供:PhotoAC)しかし、この手法ではサンプルを犠牲にする必要があります。
そのため、最後に食べた餌に大きく結果が偏ること、ウナギのように様々な餌を利用する魚では多くのサンプルが必要であることなどが、摂餌生態を把握する上で大きな課題となっていたようです。
チューブと鉗子で内容物を採取
そうした中で、東京大学大気海洋研究所の研究グループは奄美大島の河川に生息するオオウナギ Anguilla marmorata を対象に、生きたまま野外で非致死的に胃内容物を調査する手法を確立しました。
具体的手法としてはチューブと鉗子(かんし)を用いたものです。
この手法では、麻酔をかけたウナギから胃内容物を採取、後にサンプルを解剖し胃内容物の有無を確かめることで、この手法の有効性が検証されています。
検証の結果、チューブを用いた採取方法では、多くの個体で胃内容物をほぼ完全に採取することに成功し、個体毎の採取効率は平均76.5パーセントにも及んだとのこと。
鉗子(提供:PhotoAC)さらに、餌生物の種類に着目し「ある分類群の餌が採取できたかどうか」を調べたところ、92.4パーセントの分類群の餌が採取できることが明らかになっています。
また、採取効率は個体の全長や胃充満度、餌生物の種類による大きな違いは認められていません。このことからこの手法は様々な個体に適用できると考えられています。
一方、カニやエビなど硬い外骨格を持つ大型甲殻類を摂餌していた個体については、チューブで全く胃内容物が採取できなかったようです。しかし、このような個体については鉗子を用いることで、全ての胃内容物を採取することに成功しています。
ウナギ属の摂餌生態解明へ
今回、確立された手法により、魚を傷つけずに繰り返し胃内容物の調査が可能になりました。
現在、研究グループはこの手法で、ウナギ属魚類の摂餌生態を詳細に理解するための調査を実施中とのこと。
ウナギ属の摂餌生態の解明は本属魚類の保全・持続可能な利用、生態系の保全に大きく貢献することが期待されています。
(サカナト編集部)