漁師めしとは、漁師が漁の合間や港へ戻った際に作る、獲れたての新鮮な魚介類を用いた料理です。船の上や港で簡単に作られることが多いので、食べやすく手間がかからないのが特徴の漁師めし。さらに、地魚を知り尽くした漁師たちによって考えられているため味もばっちり。郷土料理としても、旅行で楽しみたいグルメとしても話題になっています。
この記事では、各地方の漁師めし5選をご紹介します。
千葉県房総地方「なめろう」
千葉県南部の房総沿岸部に伝わる料理「なめろう」は、房総の漁師が獲れたての魚を船上で食べるように考えられました。
アジに味噌としょうが、ネギなどの薬味を和えて混ぜ、粘りが出るまでたたきます。房総一帯で一年中獲れるアジが主に使われていたようですが、季節や獲れた魚によって、イワシやサンマ、トビウオ、イカなどでも作るそう。
お酒によく合うので、おつまみとして提供する居酒屋も多くみられます。
愛媛県宇和島市「ひゅうが飯」
ひゅうが飯は、愛媛県と大分県の間にある宇和海の日振島に伝わる漁師めしです。「ひゅうが丼」と呼ばれる、ひゅうが飯と同様の料理が大分県にも伝わっています。
すりごまとネギ、みりん、しょうゆを混ぜた調味料に漬けた刺身を卵と混ぜ、ご飯の上にかけて食べます。アジやマグロ、タイがよく使われます。タイを使ったものは宇和島鯛めしともいわれており、宇和島市を代表するグルメとしても有名です。
三重県志摩市「てこね寿司」
三重県志摩地方に伝わるてこね寿司。船上で獲れた魚をその場でさばき、手で混ぜ合わせたことからそう呼ばれています。
マグロやカツオなどを醤油ベースのタレに漬け込み、酢飯の上に並べ、しそや海苔、しょうがなどの薬味と一緒に食べます。現在では代表的な郷土料理となり、現在はお祝いの席で食べることも多いそうです。
東京都江東区「深川めし」
江戸時代、現在の江東区辺りは「深川浦」と呼ばれ、貝類の漁業が盛んにおこなわれていました。その漁師たちが仕事の合間に食べていたのが深川めし。
深川めしにはぶっかけと炊き込みの2種類があります。ぶっかけは、ネギとあさりを味噌で煮てご飯にかけたもの、炊き込みはあさりとネギの炊き込みご飯です。
現在、深川浦は埋め立てられてしまい、深川めしが食べられる港町も姿を消してしまいました。しかし深川めしは、今も飲食店や駅弁で食べることができます。
静岡県伊東市「ねごめし」
名前だけではどんな料理かわからない「ねごめし」は、静岡県の伊豆半島に位置する伊東市で楽しめる漁師めしです。
マグロやカツオ、タイやサーモンなどの季節の魚や、イカなど数種類の魚介類と、しょうがやネギなどの薬味をご飯に乗せた料理です。半分ほど食べ進んだら、後半はだし汁をかけて味噌を溶かして食べます。
乗せる魚介類の調理法は、ぶつ切りやタタキとばらつきがあります。また、船の上でも簡単に食べられるようにと、だし汁をかけて流し込みやすくしてあります。
伊東市のご当地グルメとしても人気があり、明確に定まったレシピがないためお店によってさまざまな味が楽しめます。ねごめしの名前の由来はわかっていませんが、「猫めし」がなまったという説があります。
漁師めしを通じて地域の特色を知る
これらの料理は地方の郷土料理としても知られており、港町の飲食店で振る舞われています。漁師めしを食べ、料理について学ぶことは、その土地の地魚や漁の特色や歴史を知ることにつながります。また、深川めしのように、今では失われた風景を学ぶきっかけにもなります。
旅行に行ったらぜひ、その土地特有の魚や料理を探して食べてみてくださいね。
(サカナト編集部)