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フカヒレと気仙沼…歴史に刻まれた深い絆

水族館で生きているサメの個体や大きな躯体の剥製に注目し続けていると意外と忘れがちですが、「サメといえばフカヒレ!」という人も多いのではないでしょうか。

シャークミュージアムのある、宮城県気仙沼市はサメの水揚げ量日本一を誇る漁港もあり、フカヒレの名産地でもあります。

シャークミュージアムでは、そんなフカヒレがどのようにして作られているのか、起源から現在のサメ食の姿まで紹介されています。

フカヒレと気仙沼の繋がりとは?(撮影:しょうじ)

サメはほとんどの場合、漁師さんの網にかかってしまうと“厄介者”として扱われます。

気仙沼でも行われているはえ縄漁や定置網漁では、偶然にも網にサメが掛かることがあります。サメが掛かってしまうと、網自体が非常に重くなって巻き上げが困難になったり、大きな体や鋭い歯、小さな鱗が並ぶサメ肌により他の魚が傷つき、魚価が低下したりしてしまうこともあるのです。

サメは肉としての価値も比較的低く、新鮮なうちに市場に出す技術が開発されていなかった時代では、一般的なサメの利用価値は他の魚に比べ少ないと認識されていたかもしれません。一方、フカヒレの需要の高まりから、国内外を問わずサメ漁を行っている漁師さんももちろんいらっしゃいます。

フカヒレラーメン/リアスキッチン(撮影:しょうじ)

しかし、現代ではサメの全てに価値があるといっても過言ではないでしょう。尾をはじめとするヒレは高級食材になりますし、肉も臭みを感じない状態で、家庭でもおいしく消費することができます。

また、サメ肌と呼ばれる体皮は、財布やキーケースといった小物に加工することができますし、肝臓からは肝油を、軟骨からはカルシウム豊富なサプリメントなどを作ることができます。

サメを受け入れる土地が気仙沼になったことは、ほんの些細なきっかけだったかもしれませんが、気仙沼ではサメを活用する事業が続々と生まれていき、よりサメと親密な深い絆で結ばれていると感じました。

サメってなんだろう? 体験しよう!

気仙沼シャークミュージアムの入口をくぐり、気仙沼の説明パネルの通りを抜けると、ウバザメのレプリカが顔を出します。これは沖縄より移設された、実物大のレプリカとなっています。

自分よりも遥かに大きいこのサメは全長8メートル以上にも及び、ジンベエザメについで世界で2番目に大きいサメとされています。その前に立つと初めて、巨大さを肌で感じることができます。

ウバザメのお出迎え(撮影:しょうじ)

ウバザメは体も大きく、動きが機敏でないことや人を襲わない種であることから、ある時期にハンターから乱獲されていた歴史をもつサメでもあります。捕獲されていた個体は一部地域にて、食用肉としてや皮製品の原材料としての需要をはじめ、巨大な肝臓から肝油に加工し、消費されていました。

その時期からの個体数減少に伴い、現在ではアメリカ・イギリスでは捕獲が禁止されており、IUCNでは絶滅危惧(EN)に登録されています。

そのため、これほど近くでウバザメを観察できるのはとても貴重。体表の質感は? 目の大きさは? 口の中はどうなってる? ヒレは何個? エラは何個?……など自分で見て考えることで、サメをより身近に感じることができると思います。

新たに設置された様々な体験型ブースも

ウバザメの反対側には、新たにつくられた体験型ブースが存在します。

「サメってどんな生き物?」という基本的な知識を学びながら、ユニークな性質を持つサメを、パネルをめくったりあみだくじを辿ったりすることで覚えることができる、楽しくも勉強になる「トリビア」がたっぷりのエリアになっています。

かわいいイラストと本格的なサメ知識……!(撮影:しょうじ)

気仙沼ならではと言うべきか、多種多様なサメの持つそれぞれのユニークな特徴を、時には人間と比較しながら学んでいきます。

子どもがサメを見て泣かないのは珍しい?

ところで、取材のため気仙沼シャークミュージアムにお邪魔した際、小さいお子さんを連れ、ご家族で来館していたお客さんもいらっしゃいました。

水族館やサメを好きな人がたまに遭遇する、あるあるな光景として、サメ水槽前で「お子様がサメの容姿のあまりの怖さに泣いてしまう」というものがあるかと思います。しかし、今回の取材中は泣き声があまり聞こえてこなかったのが、非常に特徴的だったと感じました。

確かに、大きなウバザメを見て「こわい~!!」と泣きかけているお子さんはいましたが、その後すぐ、後ろのパネル展示に目を輝かせ、ペラペラとパネルをめくりながら楽しくサメ知識を巡っていて、見ているこちらまでほっこりしてしまいました。

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しょうじ

さもないサメ好き人。幼少期から全国の水族館巡りを趣味としながら、大学はデザイン系学科に進学。編集も文字書きも絵もイラストも満遍なくかじりつつ、現在はサメと人との架け橋的存在を目指して奔走中。

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