海にすむ長くて存在感のある魚、ウツボ。「海のギャング」と呼ばれることもあり、どう猛なイメージがあるのではないでしょうか。
しかしウツボの仲間には小型の種も多く存在していて、それぞれ違った魅力がある楽しい魚なのです。
中には自宅で飼育できる種もおり、家にいながらウツボの生活を眺める、というとても贅沢な時間を過ごすことができます。
ここでは筆者によるウツボの仲間の飼育経験に基づき、ウツボの仲間の飼育方法を解説します。ほかのアクアリストの方とは飼育スタイルが異なるかもしれませんので、あらかじめご了承ください。
水槽は小さくても60センチ規格を用意しよう
水槽は、小さくても60センチ規格(60センチ×30センチ×36センチ)の水槽を用意しましょう。
マリンアクアリウムにおいては「水量は大きければ大きいほどよい」という風潮があります。これは真理なのですが、一方で初心者のアクアリストが120センチや180センチといった大型水槽を管理するのは難しく、安易に勧めにくいというのもまた真理といえます。

初心者のマリンアクアリストには管理がしやすく、そこそこの水量も確保できるという意味で、バランスが良い60センチ水槽が選ばれることが多いのは当然といえます。
予算やスペースが許すのであれば、同じ幅60センチであっても、より多くの水量を確保できる60センチ×45センチ×45センチの水槽という選択肢もあります。60センチ規格水槽だと水量は50リットル強しか確保できないのに対し、60センチ×45センチ×45センチの水槽だと水量も100リットルほどを確保できます。
幅と高さ、それぞれ15センチの違いが意外と大きいわけです。ただしその分水量が増すため重くなることと、60センチ規格水槽用の水槽台は使用できないことに注意が必要です。
クモウツボなどの種は小さいうちであればより小型の水槽(幅40センチの小型水槽など)で飼育することもできるのですが、水槽内で成長すること、ウツボは生の餌を与えることになり水を汚しやすいことも踏まえると、最低でも60センチ規格水槽で飼育してあげたいところです。
筆者は60センチ規格水槽でウツボの仲間を飼育しています。
専用の水槽台

水槽は通常、床の上に直接置いて使用することはしません。
このウツボ水槽は自作の木製水槽台の上において使用していますが、プロでない方が自作した水槽台の場合、重さに耐えきれず、つぶれてしまうと危ないので、読者の方は専用の水槽台の上に置くようにするべきだと思います。
水槽台の素材は木製や金属製などいろいろありますが、海水魚水槽で使用する場合、金属製の水槽台はやがてサビがでてきますので、注意が必要です。
排せつ物や残り餌を分解「ろ過装置」
海水魚水槽においては、魚を飼育する過程でどうしても出てくる排せつ物や残り餌を分解するための生物ろ過が重要になります。
魚の排せつ物や残り餌を放置しておくと有機物を分解するバクテリアにより、有害なアンモニアが発生します。このアンモニアは魚にとって猛毒ですので、アンモニアをどうにかしなければなりません。

そこで別の種のバクテリアの出番です。ニトロソモナス属などのバクテリアが亜硝酸に分解しますが、この亜硝酸も魚にとってはまだ毒性が高いため、ニトロバクター属などのバクテリアが亜硝酸を硝酸塩に分解して無害化します。
これらのバクテリアは水槽内のどこにでもいますが、とくに有機物を分解するバクテリアはろ材についていることも多く、そのろ材を収納するのがろ過槽です。
大きければ大きいほどろ材を収納できるスペースが多く、海水魚飼育に有利になります。ただしこれらのバクテリアはいずれも好気性とよばれるもので、酸素を消費します。したがって酸欠にならないように注意する必要もあります。
海水魚水槽で一般的に使用されるろ過装置には、上部ろ過槽、外掛け式ろ過槽、外部ろ過槽、底面ろ過槽といったろ過装置がありますが、初心者には上部ろ過槽をおすすめします。
これは上部ろ過槽は安価で、ろ材を多く入れることができ、かつ酸素を取り入れやすいなどメリットが大きいからです。とくにウツボの仲間は意外にも酸欠に弱いという特徴があり、そのような意味でも上部ろ過槽がおすすめといえます。
一方、上部ろ過槽のデメリットとしては音がうるさいことと、適切に扱わないと塩だれがでるということがあげられます。照明を置くスペースにも制約がでてきますが、ウツボ水槽の場合は観賞に必要な照明以外は不要です。

外部ろ過槽(通称 パワーフィルター)は単体ではウツボの仲間の飼育には向かないことがあります。
外部ろ過槽は密閉式のろ過槽であり、海水魚水槽ではどうしても酸欠になりやすいというデメリットがあるからです。しかし、上部ろ過槽と併用することにより、ろ過能力の増強に役立ちますし、後述する水槽用クーラーへの接続がしやすいなどのメリットもあります。

外掛けろ過槽(通称ワンタッチフィルター、ハングオンフィルター)は、酸素を取り込みやすいという点では優れているのですが、ろ材を多く入れることができず、また、その構造上水槽の上方に隙間ができやすいため、ウツボの仲間の飼育に適したろ過装置とはいえません。
底面ろ過槽は能力は高いのですが、砂を定期的にメンテナンスする必要があり(「毒抜き」と称される)、それが敬遠される向きがあるようで、現在は少数派のようにも思います。なお我が家ではウツボの仲間の水槽は上部ろ過槽を使用して飼育しています。
もちろん、オーバーフロー水槽にすれば、上記のろ過槽よりも圧倒的な量のろ材を収容でき、高いろ過能力もありますので、おすすめといえます。
しかしオーバーフロー水槽は高価であり、重量が大きいので設置場所を真剣に考えなければいけないというデメリットがあり、だれにでも置けるというようなものではありません。
ろ材とろ過バクテリア
ろ過装置にはろ材を入れる必要があります。一般的な海水魚であればサンゴ砂を使いますが、それにセラミックろ材を組み合わせて使ってもよいでしょう。
このようなろ材には小さな穴が多数開いており、表面積を大きく確保できるため、生物ろ過を行うためのろ過バクテリアの着底場所を増やすのに都合がよいのです。

写真は筆者のウツボ水槽のろ過槽で、ろ材はサンゴ砂を使用しています。荒めのつぶのサンゴ砂を上部ろ過槽のろ材スペースにぎっしりと詰め込んでおきます。ただし、サンゴ砂のつぶが小さすぎると水の通りが悪くなってしまうので注意します。

ろ過バクテリアについては、一般的にバクテリア剤を購入して水槽に添加します。
観賞魚店には色々な種類のバクテリアが販売されていますので、わからないというときは店員の方に聞いてみるとよいでしょう。