筆者は現在、クサガメを飼っています。以前息子が川に入り、子亀を網で取ってきました。その名を「ゴロー」といいます。
ゴローは毎日、目が合うと必死に前足を動かして「餌をくれ」とねだりますが、人間の手の動きばかりを見て、水に浮かんだ餌が見つけられません。そんなゴローは「愛しいおバカさん」として、家族に愛されています。
さて、私たち親子がどうして亀が好きかというと、それは息子が1歳の頃から、静岡県浜松市にあるNPO団体「サンクチュアリ」でアカウミガメの卵を保護する活動をしてきたからです。
この記事では、アカウミガメの産卵や生活に人間が与える影響についてまとめます。私たちが海にどのような悪影響を及ぼしているのか、一緒に考えてみましょう。
アカウミガメの産卵で大切なのは「明かり」
産卵を終えたウミガメやふ化した子ガメは、月明かりや海上のわずかな紫外線をもとに海へと向かいます。しかし、海岸付近に民家や施設などの明かりがあると、海とは違う方向に向かってしまうことがあるのです。
自動販売機に向かっているウミガメを見たという話を聞いた時はとても驚きました。
ウミガメの産卵シーズンには、打ち上げ花火や車、バイクなどの騒々しい明かりは控えるように呼び掛けている自治体もあります。
(参考:産卵のウミガメ、陸地の照明で迷走…海の方向勘違い 高知県黒潮町 保護メンバー「光に配慮を」-高知新聞)
クラゲと間違えて食べてしまうポリ袋
アカウミガメはクラゲを好んで食べることが知られています。そんなウミガメたちが、ポリ袋をクラゲと間違えて食べて窒息死してしまう事件がよく見られるようになりました。
クラゲはプランクトンや小魚などを食べる肉食性生物です。アカウミガメはクラゲを通して肉食性生物を消費し、栄養や水分を得ることができるのです。
またアカウミガメがクラゲを消費することで、クラゲの大量発生を防ぎ、海洋生態系を保つ一助となっているわけです。
しかし、海にクラゲによく似たポリ袋が漂うようになったことで、ウミガメが誤食してしまう事件が相次いでいます。
ちなみに、アカウミガメは肉食ですが、アオウミガメは草食で海藻などを食べます(ただし、子亀は肉食)。
漂流した亀からゴミが出てくる
沖縄美ら海水族館を管理運営する沖縄美ら島財団は1990年から2019年の約30年間、沖縄島の沿岸に死亡漂着したウミガメを解剖した結果、お腹の中からポリ袋やゴム手袋や釣り針が出てくることがわかっています。
これらは人間がゴミを捨てなければ起きなかった誤食の数々。ゴミがどれだけ海に影響を与えるかがよくわかります。
(参考:沖縄島に生息するウミガメ:約20%が海洋ゴミを摂食 ウミガメ館で30年間の調査結果を公開-沖縄美ら海水族館)。
砂浜にポリ袋やゴミを捨てるのは止めましょう。波で流されて海に入ると、上記のようなことが起こります。
またペットボトルなどもポリ袋同様、有害なゴミですから、必ず持ち帰りましょう。
我々人間が捨てるゴミは、ウミガメだけでなくたくさんの海洋生物に影響を与えます。
私たち一人ひとりがこのことを自覚し、少しずつでもゴミの減少に向けて働きかけていくことが重要です。
(サカナトライター:栗秋美穂)