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国立科学博物館で<貝類展>開幕 人類と長く深く関わってきた貝類とどう向き合うか

東京都台東区にある国立科学博物館で現在、企画展「貝類展:人はなぜ貝に魅せられるのか」が開催中です。会期は来年3月2日(日)まで。

貝類展は、古くから私たちと深い関わりのある「貝類」がどういった生きものか、また古代から現代までの人間との関わりを読み解きつつ、私たちを貝類の世界「シェル・ワールド」へと導く内容です。

サカナト編集部は、開幕前日に行われた報道内覧会に参加。内覧会では、同企画展の監修者である国立科学博物館・動物研究部海生無脊椎動物研究グループの長谷川和範氏、地学研究部環境変動史研究グループの芳賀拓真氏、人類研究部人類史研究グループの森田航氏による解説と共に展示を見学しました。

貝類を中心とした大きな展示は41年ぶり

<貝類展:人はなぜ貝に魅せられるのか>(提供:PR TIMES)

企画展「貝類展:人はなぜ貝に魅せられるのか」は、国立科学博物館日本館の企画展示室と中央ホールで行われます。貝類を中心とした大きな展示が最後に行われたのは1983年で、今回は41年ぶりの開催となるそうです。

全体的にシンプルな空間でまとまっており、標本や展示物の見せ方にもこだわりを感じます。

一方、同企画展は、ポスターにAIを使っていることがSNSでも注目されました。

本展監修者である長谷川和範氏にAIを使用した意図を伺うと、「人類が貝類に抱いている憧れや畏怖などの念を表現する手段としてAIを用いている。モデルとなっている貝はあり、特に中央の貝は展示にも使用しているミジンワダチガイの実物の写真を取り込ませてそれに近づけさせている」との回答がありました。

<序章>では「貝類」について知る

さて、今回の展示テーマとなっている「貝類」とはどういった動物なのでしょうか?

「貝類展」は序章から4章まで、それぞれのテーマで構成。序章では<貝類の世界>と題して、貝類という分類について、その特徴が解説されています。

中央ホールに入ってすぐ目に入るのは、異様な存在感を纏った大きなダイオウイカ。まるで「私も貝類です」と主張しているようです。

ダイオウイカ模型(撮影:サカナト編集部)

貝類とは、一般的に炭酸カルシウムの殻をもった生きものを指します。しかしダイオウイカのように、殻をもたない貝類もいます。

貝類とは、広義では無脊椎動物のなかのひとつの動物門として位置づけられている軟体動物のことです。

この章では、貝類特有の器官である「歯舌」(例外的に二枚貝綱では退化)や貝類の進化、最大の貝・最小の貝、最も長い二枚貝について……と、「貝類」という生きものを理解するためのエッセンスが詰まっています。

貝の多様性を学ぶ<第1章>

第1章<貝類の多様性の成り立ち>では、貝の多様性について詳しく紹介しています。

大きく8つの綱グループにわかれる現生軟体動物を、科のひとつ上の単位「上科」ごとに代表的な種を展示しています。

貝類展標本展示(撮影:サカナト編集部)

瓶でなくパウチに入った液浸標本や、ウミウシの色彩が観察できるグリセリン標本など、展示標本にもとてもこだわったといいます。貝類の美しさを来場者に伝えたいという思いが伝わりました。

分類の多様性を学んだあとは、生息環境や貝殻形態の多様性、貝殻を持たない選択といった展示が続きます。さまざまな特徴を持つ貝類が、なぜその特徴を獲得したのかを知ることができます。

<第2章>では私たちと貝類の関わりの歴史を学ぶ

人類と貝類の関わりを知れるのが、第2章<人類と貝類の長い関わり>です。

縄文時代から続く、人類と貝類の関わりを、出土物や歴史的な道具や記述を通して学びます。縄文時代、弥生時代、近代……と順を追って、その当時の人類と深い関わりを持っていた貝類が紹介されています。

貝合わせに使っていた貝、熨斗袋のもとになった「熨斗あわび」、吹くためのホラガイなど、貝類と文化との関わりも学ぶことができます。

文化との関わり(撮影:サカナト編集部)

また、私たち人間の前に脅威となって立ちはだかった代表的な貝類として、ミヤイリガイフナクイムシが紹介されています。

人類と貝類の関わりは、有益なものだけではないのです。

人類と貝類の関わりの深さを示す<第3章>

第3章<人類と貝類の深い関わり>では、特に貝殻のコレクションに着目。標本化が容易で、長い年月にわたって保存が可能な貝類は、さまざまな形で人を魅了してきました。

科博所蔵の代表的な個人コレクションや、収集される貝類の代表的なグループが展示してあります。どれも綺麗で、思わず見入ってしまいます。

なかでも、「ダンスの50貝」という展示は圧巻。英国の貝類学者「ピーター・ダンス」が著した1969年刊行の「Rare Shells」は、当時珍しく、かつ人気のあった世界の50貝を選んで解説した本です。

これら50貝すべてを、今回日本で初めて展示することができたといいます。海外の貝がメインなので、馴染みのない貝がたくさんあり、時代や場所を超えた人類と貝類の関わりを感じます。

ダンスの50貝(撮影:サカナト編集部)

個人では収集不可能な貝類も展示されています。

特に深海洞窟でしか手に入らない種類は、研究の上でもとても貴重なもの。なかでもアマダレガイは、今回が日本初展示だということでした。

アマダレガイ(撮影:サカナト編集部)

<第4章>では貝類とのこれからを考える

第4章<貝類とこれからも長く関わり続けるために>では、現代の貝が直面する危機について解説しています。

過去に獲れた貝の大きさと現代の市場サイズを比べたものは、とても衝撃的でした。

そんな貝類に親しみを持つために、自身で貝を拾うという方法が提案されています。

この展示で貝類に興味を持った人は、ぜひ海岸に出かけてみましょう。

空間を使った美術的な展示方法

展示をみていると、ところどころに貝殻を使った展示を見つけました。これは同企画展の制作を協力した株式会社博展のアイデアなのだそう。

魅力的な色彩や模様を持つ貝類について表現するために、美術的な表現方法を使った展示を行うのはとても良い試みだと感じました。

私の耳は貝の殻 海の響をなつかしむ-ジャン・コクトー(撮影:サカナト編集部)

貝にまつわる名言と、貝殻の美術作品のような展示をいくつか見つけることができます。ぜひ展示室内で探してみてくださいね。

また章タイトルのパネルには、監修グループとビーチコーミングに行った際に拾った本物の貝も使っているのだとか。

第1章 パネル(撮影:サカナト編集部)

<貝類展:人はなぜ貝に魅せられるのか>概要

私たちと貝類の関わりについて改めて考えさせられる展示方法が随所にみられました。「貝類展」は貝類の形態に加え、その多様性と私たちとの繋がりについて、深く考えさせられる展示内容でした。

会期は2025年3月2日まで。「シェル・ワールド」に誘われること、間違いなしです。

企画展「貝類展:人はなぜ貝に魅せられるのか」概要

・開催場所=国立科学博物館(東京・上野公園)日本館1階 企画展示室及び中央ホール
・開催期間=2024(令和6)年11月26日(火)~2025(令和7)年3月2日(日)
・開館時間=9時~17時 ※入館は閉館時刻の30分前まで
・休館日=月曜日(月曜日が祝日の場合は火曜日)、12月28日(土)~1月1日(水・祝)※ただし12月23日(月)、2月17日(月)は開館
・入館料=一般・大学生:630円(団体<20人以上>510円)、高校生以下および65歳以上:無料
※本展は常設展示入館料のみで観覧可能。
・主催=国立科学博物館
・協力=赤星直忠博士文化財資料館、浦河町立郷土博物館、鹿児島県立埋蔵文化財センター、きしわだ自然資料館、東京大学総合研究博物館、鳥羽市立海の博物館、豊橋市自然史博物館、萩博物館、目黒寄生虫館、横須賀市自然・人文博物館

企画展「貝類展:人はなぜ貝に魅せられるのか」の詳細については、国立科学博物館Webサイトに掲載されています。

(サカナト編集部)

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サカナト編集部

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