2024年は、兵庫県神戸市にある「神戸須磨シーワールド」が開園したり、山口県下関市にある「市立しものせき水族館・海響館」が休館したりと、西日本にある水族館の話題が多い1年だった。
そして、その中の一つに、広島市にあった「マリホ水族館」の閉館がある。
閉館のニュースを知り「マリホ水族館」へ
マリホ水族館は、広島市のマリーナホップという商業施設の一角に存在した水族館。2017年のオープン当時には150種5000匹ほどがいたという、魚好きが見て回っても2〜3時間で見て回れる規模の水族館だ。
水族館や動物園のような施設は、よっぽど都心ではない限り商業施設のような場所とは離れた場所にあることが多いが、マリホ水族館はその例外になる。
広島に足を運ぶようになり数年経っていたが、マリホ水族館に足を運んだのは、マリホ水族館閉館のニュースを聞いたあとだった。
「水族館が無くなる」というのはあまり多いことではないが、商業施設と一緒にある水族館であるならば、こういうこともあるのだと知った。
閉館するのなら、行かねばならぬ。そのような気持ちだった。
マリホ水族館は小型の水族館
広島駅からしばらくバスで移動し、たどり着いたのは港の商業施設「マリーナホップ」。
同じような港の商業施設である福岡市の「ベイサイドプレイス博多」に比べると、アウトレットのような雰囲気を感じる商業施設だ。その施設に大きく飾られた青いクジラにワクワクしてしまう。
確かに大きな水族館ではない。だけど、コンパクトながらもしっかりと水族館で出会いたい生き物たちに出会うことができる。
水族館好きの人であったとしても、「みやじマリン 宮島水族館」(広島県廿日市市)などに行くよりも短い時間で満足することができるだろうなと思いながら、館内を見歩いた。
ラグーン水槽にたどり着いたときに、ある生き物に出会う。
トラフザメだ。
まるで「オレが主役だ~!」と言わんばかりに泳ぎ回っているトラフザメ。
ここに来なければ見られないというわけではない生き物だが、この威風堂々ぶりはどうだろう。ラグーン水槽をぐるぐる回って、いかにも楽しそうである。
軽い気持ちでやって来た水族館だったけれど、このトラフザメを見ていると、自分が今までどういう視点で水族館を見ていたかを思い知らされる。
小さい水族館だからこそ感じる“生き様”
飼育・展示されている生き物の種類が多ければ多いほど、“いい水族館”だと思っているところがあった。もしくは、シャチやサメのような大型海洋生物が展示されているから会いに行くということもあった。
水族館はアクセスに時間がかかるし、着いてから展示を見て回ったりショーを見たりショップを見たりするとかなりの時間が経過する。だからこそ、本腰を入れるような、大きな水族館に行かなければと考えているところがあった。
今もその考え自体が間違っているとは思っていない。
だけど、その考えのそばに、他の水族館にもいる生き物であっても、「ここでしか見られない姿がある」「“生き様”のようなものがある」という視点を持つことで、より楽しみが増えるのではないかという考えも置いておきたいと感じた。
「推しは推せるときに推せ」
自分にとっての水族館人生に新たな光を当ててくれたマリホ水族館も、今月で閉館した。「サカナへの推し活のススメ」を教えてくれたトラフザメにも、もう会うことはできない。
閉館に伴う“記念訪問”みたいな気持ちだったが、なんだかものすごく大きな喪失感を抱えて帰ることになってしまった。
「推しは推せるときに推せ」
その言葉を嚙み締めた2024年だった。
(サカナトライター:ゲームいきもの研究所)