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「タコも暇なんだな。」 初学者でもタコに詳しくなれる本『タコの知性 その感覚と思考』ブックレビュー

「タコ」はとても魅力的な生き物です。

占いをするタコや、瓶のフタを器用に開けて餌をとるタコの映像を見たことがある人もいるでしょう。昨今では、「タコは頭が良い生きもの」だということが多くのメディアで取り上げられています。

実際、タコはどんな生き物なのでしょうか? どういった点で「頭が良く」、どうやってその能力を活かしているのでしょうか?

『タコの知性 その感覚と思考』(池田譲(2020)、朝日新書)では、琉球大学で頭足類について研究する池田譲氏がタコの頭脳の秘密に迫ります。

初学者にも易しい「タコ」の解説

「タコの知性」と銘打った本書。しかし、タコがどのような生き物かわからなければ、その知性を読み解くことはできません。

第一章から第二章までは、初学者向けにタコの基本情報が丁寧に解説されています。わかりづらい専門用語は噛み砕きながら、時には例え話を挙げられており、頭の中でイメージしやすい内容です。

マダコ(提供:PhotoAC)

生物学に明るいとは到底いえない私が、特に「わかりやすい!」と感じたのは、分類についての説明です。

生物の分類については博物館や図鑑、書物などで何度か触れていましたが、わかったようなわからないような曖昧な感覚でいました。

しかし、この本では分類の方法を階層ごとにわかりやすい言葉で示してくれており、タコがどのような特徴を持った生物なのかを把握してから本文に臨むことができました。

「ボディパターン」「海藤花」など聞き馴染みのない単語も多く登場しますが、易しく説明してくれます。生物学に詳しくない人も置いていかれず、「タコ」のことを高い解像度で学ぶことができました。

後半は難しいながら発見もたくさん

第三章「タコの感覚世界」からはぐんと専門用語が増え、圧倒されます。それもそのはず、この章からは実験をもとにタコの知性を追い求めていきます。

正直、この章から先は生物学を学んでいない人には少し難しいかもしれません。思いっきり文系な私は、何度か同じトピックを読み返すこともしばしば……。

しかし、何度か読めば理解できるものがほとんどです。生物学に馴染みがある人には特にわかりやすいのでは、と感じました。

ミズダコ(提供:PhotoAC)

なかでも第三章の「禁断の果実」という節以降では、池田氏の研究室で実際に行われているタコの学習実験について綴られています。その実験を行うに至った理由や、学生たちと実験内容を試行錯誤しながら「タコの知性」に迫ったさまが描かれます。

また新たな仮説が現れ、実験内容を変更していき、ひとつの答えに辿り着き……。

当研究の興味深さはもちろん、生物学において新たな仮説に向かって歩んでいくことの面白さを覗くことができたように思います。

社会性を持つタコの話

特に面白いと思ったのが、第四章に書かれる「タコ都市」について。オーストラリアのニューサウスウェールズ州にある海底で行われた野外観察に置いて、3個体から10個体で暮らすシドニーダコが観察された、というトピックです。

単独性(単独で暮らす性質)を持つタコに対し、社会性を持つタコがいることが示されます。

ひろく研究に使われるのはマダコであることから、タコは群れないというイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。

そうした中で、社会性を持つタコがいることは驚きでした。人工的に行われた実験でなく自然の海で観察された出来事というのも、なんだかロマンがあります。

多くの人がタコに魅せられる理由が垣間見えた部分でした。

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