大阪市立自然史博物館は2月22日から5月6日まで、第55回特別展「貝に沼る ―日本の貝類学研究300年史―」を開催します。
江戸時代から現代までの貝類学の研究史について、その成果を紐解く展覧会です。
“沼る”とは、なにかに夢中になっている、のめり込んでいる状態を指す通俗的な表現。沼にはまると足を取られて、その場から動けなくなる様子からきた言葉です。
同特別展では、貝に“沼った”人々がどのように貝の実態に迫ってきたのか、本草書や初期の図鑑から、歴史的な発見をもたらした実物標本、最新の研究技術までを一堂に集めて紹介し、貝類学研究の歴史を紐解きます。
江戸時代の貝類学から現代貝類学まで
特別展「貝に沼る」では、江戸時代の貝類学から現代貝類学までを扱います。
幕末から明治を生きた博物家・堀田龍之助の実物標本
まず江戸時代の日本で行われていた本草学としての貝類学を紹介するほか、同時期に西洋の生物学者が取り組んでいた日本の貝類研究についても紹介します。
幕末から明治にかけて大阪に生きた博物家・堀田龍之助の貝類標本は、重箱におさめた貝類の実物標本。重箱の仕切りには種名が書かれており、本草学における貝類の分類や研究手法を類推できる資料です。
そのほか、19世紀の西洋で発刊された日本の貝類のモノグラフなども展示されます。
近代貝類学の幕開け 開国以降の貝類研究
次に「近代貝類学の幕開け」という題で、明治の開国以降の貝類研究について紹介します。
明治の開国以降、西洋から近代科学が流入し、本草学は生物学へ転換しました。
当時の帝国大学の貝類学や化石貝類研究の始まり、台湾、南洋群島など統治領での貝類学について展示を通して学ぶことができます。
大正から昭和、戦後まで 広がっていく貝類学
さらには「貝類学のすそ野の広がり」と題し、大正から昭和、戦後にかけて、さまざまな学問分野に展開していった貝類学について、また、幅広い層に普及していった標本の採集や収集活動について紹介していきます。
御木本幸吉が作成した半円真珠標本や、1954(昭和29)年に大阪の小学校教員で寺の住職だった吉良哲明が執筆した「原色日本貝類図鑑」に掲載されている標本など、貝類研究にまつわる貴重な展示が多数。
採集技術が発達し、さまざまな貝類の分布や生態が明らかになっても尚、なかなか手に入らない「幻の貝」を複数の貝類研究者にリストアップしてもらい、それらの実物標本や写真、スケッチを展示するコーナーもあります。
そして現代貝類学へ 新技術を用いた新たな研究
そして、「現代貝類学の最前線」と題し、時代は現代に移ります。
ここでは、新しい技術を使った現代の貝類学、特にDNAの塩基配列といった遺伝情報に基づく貝の系統分類額について解説。また、貝類の置かれている現状や保全のための研究活動についても紹介します。
そして最後に「キミも沼ろう」という題で、貝類研究学へのさまざまな入口を紹介します。
<スーパーの貝類学>というコーナーでは、鮮魚コーナーで発見できる貝類について解説されています。
研究者による特別講演会やギャラリートークも
特別展の開催期間中には、研究者による特別講演会が行われます。
3月9日には東北大学・東北アジア研究センターの千葉聡教授による「進化史と貝類学史の交点:小笠原の陸貝」、4月20日には岡山大学学術研究院環境生命科学学域の福田宏准教授による「貝類のまぼろしに沼らされて」と題して、それぞれ講演が行われます。
両日ともに会場の定員は先着170名で、YouTubeを使った同時配信も予定しています。
また、期間内には同特別展を担当した学芸員による展示解説や子ども向けワークショップも開催予定です。
詳細は、「貝に沼る -日本の貝類研究300年史-」の公式ホームページで確認することができます。
※2025年1月●日時点の情報です
(サカナト編集部)