日本各地に定着している北米原産のアメリカザリガニ(Procambarus clarkii)。
アメリカザリガニの侵入、定着後に個体数が減少した、もしくは地域絶滅した動植物がいくつか知られています。両生類も例外ではなく、アメリカザリガニ侵入後にカエル類が減少することが指摘されていたものの、詳細な理由は不明だったといいます。
そこで岡山大学の研究グループは、アメリカザリガニとニホンアカガエルの卵または幼生を同居させる実験を行い、アメリカザリガニによる強い捕食圧を確認しました。
アメリカザリガニが及ぼす影響
北米南部を原産とするアメリカザリガニは、国内のすべての都道府県から確認されており、現在は条件付特定外来生物に指定される外来種です。
本種の定着後、在来種が地域絶滅するケースが各地で確認されており、両生類においては岡山県内の絶滅危惧種「ナゴヤダルマガエル」がアメリカザリガニの定着・増殖後に個体数が減少したことが指摘されています。
そういった指摘があった一方で、侵入後にカエル類の個体数が減少する理由については十分に検討されていませんでした。
アメリカザリガニとニホンアカガエルを同居させて実験
岡山大学の研究グループは、カエル類の減少・絶滅の一因がアメリカザリガニによるカエル類の卵・幼生の積極的な捕食と予測。
アメリカザリガニがカエル類に及ぼす影響を解明するため、アメリカザリガニとニホンアカガエルの卵・幼生を同じ水槽内で24時間同居させる実験を行いました。
「アメリカザリガニ+ニホンアカガエルの卵」「アメリカザリガニ+ニホンアカガエルの幼生」「アメリカザリガニ+ニホンアカガエルの幼生+隠れ家」の3パターンでの実験です。
なお、この実験では実験開始前の1週間まではアメリカザリガニに十分な量のエサを与え、実験開始直前の24時間は餌を与えずに実験を開始したといいます。
実験の結果、アメリカザリガニがニホンアカガエルの卵・幼生を食べる姿が観察され、アメリカザリガニによるニホンアカガエルの卵・幼生に対する強い捕食圧が確認されたのです。
隠れ家の効果は?
ニホンアカガエルの隠れ家となる水草が存在する実験条件では、小型のアメリカザリガニに対しては幼生の生存率が統計学的に有意に増加することが判明しています。
一方、中型・大型サイズのアメリカザリガニと同居させた実験では、隠れ家なしの条件下と比較して幼生の生存率はほとんど変わりませんでした。
アメリカザリガニの侵入を防止することが不可欠
これらの結果はカエル類の地域絶滅、個体数減少の一因がアメリカザリガニによる卵や幼生の捕食だということを示唆しています。
また、カエル類を含む希少な生物の保全には、アメリカザリガニの侵入防止や駆除が必要不可欠であることを示す結果となりました。
(サカナト編集部)