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『骨』を通じてサカナの魅力を伝える現役大学生・骨密堂さん 夢は<生きものを取り巻く環境を守ること> 

サカナに特化した本屋・SAKANA BOOKS(サカナブックス)で今年8月からスタートした水生生物クリエイター向けの棚貸しサービスSAKANA APARTMENT(サカナアパートメント)

今回はSAKANA APARTMENTの303号室に現在入居中の骨密堂さんに、制作への思いや将来について語っていただきました。

骨密堂:小さいころから生きものが好きで、現在東京海洋大学に在学中。頭骨標本の制作やイベントへの出店などの活動を行っている。

 

憧れの大学で骨と出会う

━━━現在サカナアパートに入居していただいていますが、普段はどのような活動を行っていますか?

魚の頭骨の標本をつくって即売会に出展したりしています。本当は全身骨格標本をつくりたいんですけど、まだ技術が足りないのでなかなか難しいですね…。

最近は珍しい形をしている頭骨の標本をつくったりもしています。今はカレイの頭に挑戦しているんですが、カレイは平べったい体をしているので、左右の骨が非対称でなかなか組み上げられなくて苦戦しています。

━━━頭骨標本をつくろうと思ったきっかけはありましたか?

もともと骨が好きだったというわけではないんです。今、東京海洋大学の2年生なんですが、(入学時の)新入生歓迎会が茨城にナマズを釣りに行くっていう企画だったんですね。そこでアメリカナマズを釣ったんですけど、頭がぬめぬめしていて臭みがあるのでどうしても食べられなくて…。

どうにかして無駄にしない方法はないか、何か記念にできないかと思い、先輩に聞いてアメリカナマズの頭の骨を標本にしたのが活動を始めたきっかけです。

骨格標本をつくっていると、こんな風に骨が繋がっているからあんな形に見えるんだなって考えるのが面白くて、骨が好きになりました。例えば、コバンザメだとくっつくために頭が平べったく板みたいになっていたり、ミシマオコゼは目が上を向くような形になっていたりするんですけど、作業しながらそういう気付きがあるのが楽しいです

ミシマオコゼの頭骨標本

 

学びや活動を将来に活かしたい

━━━東京海洋大学の学生さんなんですね。海洋大を選んだのはどういった理由からだったのでしょうか?

両親が動物園とか水族館が好きで、よく連れて行ってもらっていたので、小さい頃から生きものが好きだったと思います。家にも図鑑とかをおいてくれていて、寝る前に読んだりしていましたね。でも、どちらかというと昔、父が水産関係の仕事をしていてよく魚を食べさせてもらっていたので、最初は生きものとして好きというより、魚を食べることの方が好きだったかもしれません。

生きもののことを勉強したいというのは、漠然と考えていたんですけど、高校一年生くらいまでは「東京海洋大学なんて行けるわけない」ってちょっと諦めていたんです(笑)

選択科目を選ぶときになって、「やっぱり生きものが好きだし、苦手な科目をやってでも東京海洋大学にいきたい」と思い海洋大を目指しました。海洋大ってあまり知られていないんですけど、海に関わる文系の学部があったり、海洋文学の教授とかもいたりするんです。本当に海に関する学部しかなくて、せっかくならとことん好きなことを突き詰めて海なら何でもわかるくらいになりたいと思っています。

━━━文系の学部があるのは知りませんでした。海に関してかなり幅広い分野を網羅している大学だと思いますが、将来の方向性などはもう決まっていますか?

まだ迷っているんですけど…。水質とかプランクトンとかを学びたいなって思っています。海洋大は3年生の後半から研究室に入るんですが、海水の化学的な分析をする研究室にいくか、微生物に関する研究室にいくか、悩み中です。骨はぜんぜん関係ないです(笑)

もともと生きもの全般が好きだったので、この種が好きっていうのは正直あまりなかったんです。生きもの全般が好きだから、生きものを取り巻く環境を守りたいなって思っていて。特に、水質とかプランクトンとかは、水産にも関わりますし、環境保全をする上でとても重要かなと思っています。好きなものの研究をしたいというよりかは、好きなものを守るためにどういう研究をしたら役立つかなということを考えています。

あとはいま学芸員の勉強もしているので、学芸員の仕事にも興味があります。まだ実習を経験していないので、具体的にどんな学芸員になりたいというのも決まってはいないんですけど…。もしかしたら骨格標本をつくる経験も活かせるかな、とも思っていて。骨から得られる気付きや、私が好きになったきっかけをいろんな人に共有していけたら楽しいだろうなと思っています。

標本づくりへの思い

━━━標本制作で気をつけていることや標本を通して伝えたいことはありますか?

標本をつくるときは、できる限り元の骨の状態を意識しています。手に取っていただいた方に魚の骨の仕組みが伝わればいいなと思っていて。

あとは、普段魚を食べていてもまじまじと魚の骨を見ることってないとあまりないと思うので、標本を見ることで魚を食べるときにこの魚ってこういう風に骨が入っているんだ、とか普段の生活でももっと魚に親しみをもっていただけたらなと思っています。実際に私も標本をつくり始めてから、魚を食べるときに、ここの骨ってこうなっているんだとか、これが肩甲骨で…、これが鰭を支える骨で…とか考えながら食べるようになりました(笑)

標本がきっかけで、魚を食べるときにもその魚を知ることに繋がればいいなと思います。

━━━生きもの全般が好きというお話でしたが、しいて言うなら一番好きな水生生物は何ですか?

今、すごく興味があるのはスパインチークアネモネフィッシュという魚です。クマノミにそっくりな魚なんですけど、頬の部分に棘があるんです。その棘が骨でできていて。形態的にはクマノミにそっくりですが、骨があるだけで‟属レベル“で分類が分かれているんです。

骨の標本をつくっているので、何のための棘なんだろうとすごく気になってしまって。海外の魚なので、水族館でもあまり見られないし、標本もまだ見たことがないんです。今は、海外にいって標本を見て骨がどういう風になっているのかを見たり、海に潜って泳いでいる姿を間近で見たいと思っています。

カクレクマノミ(提供:PhotoAC)

 

━━━では、いつかはスパインチークアネモネフィッシュの骨格標本をつくりたい気持ちもありますか?

そうですね。ただ、生きもの採集して食べたあとに頭の部分だけ標本にすることはあるんですけど、なかなかクマノミくらいのサイズだと全身骨格標本にするのも難しいので…。もうちょっとレベルを上げてからかなと思っています。

基本的に標本をつくるときは、釣ってきたものや買ってきたものの頭だけ落として標本にして、体の部分は三枚おろしにして食べています。あとは魚屋さんでアルバイトをしているので、魚の頭だけをもらったりすることがあって、そういうのを使って標本をつくることが多いです。

標本づくりを始めるきっかけとなったアメリカナマズもそうですが、無駄にしないということを前提に活動しています。

━━━最後になりますが、今後の展望はありますか?

骨密堂の活動としては、今はデザフェスに出展することが目標です。あと海洋大で開催するうみたかマルシェにもいつか出店できたらいいなと思っています。

それから骨の標本って大きくて扱いにくかったりするので、魚の骨のひとつひとつをミニサイズの標本にしてガチャガチャにするとか普及につながるような活動をしたいです。

もっと骨格標本を身近に感じていただいて、骨の面白さや生きものの魅力を伝えることでその生きものを取り巻く環境について考えるきっかけをつくっていけたらなと思っています。

SAKANA APARTMENT(サカナアパートメント):本屋・SAKANA BOOKSで2023年8月から行っている棚(部屋)貸しサービス。水生生物をモチーフに創作活動を行うクリエイターのグッズや絵が並ぶ。現在、空き部屋あり(入居者募集中)。

(サカナト編集部)

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サカナに特化したメディア『サカナト』。本とWebで同時創刊。魚をはじめとした水生生物の多様な魅力を発信していきます。

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