人間の競泳では4種類の泳ぎ方が知られていますが、水の中に棲む魚たちは泳ぎ方も多様性に富んでいます。知っているようで知らない魚の泳ぎ方や、独特な泳ぎをする魚について紹介します。
一般的な魚の泳ぎ方とは?
魚には基本的に、胸ビレ・背ビレ・尾ビレ・腹ビレ・臀ビレの5つのヒレがあります。
一般的な魚の泳ぎ方は、尾ビレを左右に振りながら、体の後方も一緒に左右に振ることで前に進み、胸ビレで方向転換をする泳ぎ方です。
タイやアジなど、多くの魚がこの泳ぎ方をしています。
水の抵抗を減らすことで速く泳ぐ
マグロやカツオの仲間は泳ぎが速いことで有名ですが、体の構造や泳ぎ方に特徴があります。
マグロやカツオの仲間は、体は左右に振らず尾ビレだけを左右に動かして泳ぎます。さらに、背ビレや胸ビレは畳んで溝に収納することができ、水の抵抗を減らして速く泳ぐことができます。
マグロやカツオが高速で泳ぐ理由は、呼吸の仕方が他の魚と少し異なるためです。魚類の多くが鰓で呼吸をしていることはご存知の方が多いでしょう。一般的な魚の呼吸の仕方は、口から取り入れた水の中に含まれる酸素を鰓で吸収することで呼吸しています。
この時、鰓を開け閉めすることで酸素と二酸化炭素の交換を行っています。しかし、マグロの仲間は、鰓蓋を開け閉めして呼吸するだけでは酸素の量が足りなくなってしまうため、常に口と鰓を少し開けたまま高速で泳ぐことで、より多くの水を流し込み、体内に酸素を取り入れています。
意外と知らない?ヒラメやカレイの泳ぎ方
ヒラメやカレイは誰もが知っている魚ですが、意外と泳ぐ姿を目にすることは少ないのではないでしょうか。ヒラメやカレイの仲間はいわゆる底魚と呼ばれる魚で、普段は海底の砂や泥に隠れてじっとしていることが多いです。
あまり泳ぎは得意ではないといわれていますが、外敵から逃げるときや餌を見つけたときには中層まで泳ぐこともあります。泳ぐときには、体全体と背ビレ・腹ビレをひらひらと波打つように動かすのが特徴です。
このヒレを動かすための筋肉がいわゆるエンガワと呼ばれる部分です。エンガワがコリコリとした食感なのは、泳ぐことで鍛えられた筋肉の部位だからです。また尾ビレは切れ込みのない扇型をしているので、一振りで得られる推進力が大きくなります。
尾ビレがなくても泳げる魚
ゆったりと泳ぐイメージのマンボウは、実はフグ目の魚です。マンボウ科の魚はフグの仲間の中ではもっとも大きくなり、種によっては体長は3mを超えることもあります。
フグの仲間の多くは背ビレと臀ビレを使って泳ぎますが、マンボウも背ビレと臀ビレを同じ方向にぱたぱたと動かすことで泳いでいます。
さらにマンボウには尾ビレがありませんが、体の後方には舵鰭(かじびれ/だき)とよばれるひらひらした鰭があり、文字通り舵をとるために使っています。
泳ぎが下手といわれることがあるマンボウですが、餌を食べるときには意外と速く泳ぐことができ、大きな体の割に小回りもきくようです。
もっとも泳ぐのが遅い魚?
タツノオトシゴはトゲウオ目ヨウジウオ科タツノオトシゴ属の小型魚です。タツノオトシゴ属の魚も尾ビレがなく、背ビレと胸ビレを小刻みに動かすことで泳ぎます。
その姿は何とも言えない可愛らしさがありますが、泳ぐスピードは非常に遅いことで知られています。
敵から狙われたときに逃げ遅れてしまわないか心配になりますが、泳ぎが得意でない代わりに、海藻やサンゴなどに擬態して身を守っています。
立ち泳ぎする魚
変わった泳ぎ方をする魚の代表ともいえるのは、タチウオではないでしょうか。スズキ目タチウオ科の魚で釣り魚としても人気です。タチウオは漢字では「太刀魚」または「立魚」と書きます。
名前の由来は太刀のように見えるからとも立ち泳ぎをするからともいわれますが、水平に泳ぐこともあります。立ち泳ぎするときには、体操選手が着地をするように一気に後ろ向きに体を起こします。
立ち泳ぎをする理由は、餌となる魚を待ち伏せしているためや休息をするためといわれています。
魚だからといって泳ぎが得意とは限らない
魚と聞くと泳ぎが得意なイメージですが、得意な魚もいれば苦手な魚もいるようです。
泳いでいる魚を観察するときには、体のどの部分を動かしているのか注目してみると面白いかもしれません。
(サカナト編集部)