全国の海で、アマモなどの藻場が激減する<磯焼け>が発生しています。
海水温上昇や栄養減などいくつもの原因が考えられていますが、ウニやアイゴによる藻の食害も大きな原因と言われています。
そのような中、香川県では大量発生したウニを捕獲して畜養することで、藻場回復とウニの資源化を図る取り組みを実施しています。
“うどん県”ならではの<廃棄うどん>による厄介者のウニの畜養はどうなるのでしょうか?
ウニは磯焼けを誘発する厄介者でもある
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香川県ではムラサキウニによる藻場の食害が確認されています。
海水温の上昇などの影響で海藻の成長が抑制される中、ウニの繁殖と成長は促進されるため、ウニがたくさん増えるそうです。
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大量発生し、エサが少ない状態で育ったウニには身のつまりが少なく、商品価値がありません。
しかし、駆除をしなければ、どんどん藻場が減少して魚の稚魚の住処がなくなり、漁獲量が低下するという悪循環が起こります。
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ウニは、重量当たり卵巣や精巣が12%以上ないと商品にはなりません。そこで、香川県では大量繁殖した小さなムラサキウニを採集し、廃棄うどんをエサにして畜養する取り組みが始まったそうです。
その名も「讃岐うどん雲丹(うに)」プロジェクト。そのままではありますが、なんだかWin-Winの取り組みになりそうな雰囲気を感じられるネーミングですね。
「讃岐うどん雲丹」プロジェクトとは?
2024年、藻場と漁獲量の回復を図るために、香川大学と漁師、多度津高校、うどん店がタッグを組んで「讃岐うどん雲丹」プロジェクトが始まりました。
香川が誇る「讃岐うどん」はコシが命であるため、お店によっては茹でて30分以上経過したうどんは廃棄される場合があります。
捨てずに、お客さんに無償提供したり、油で揚げて「ぴっぴ」というおやつにしたりするお店もありますが、香川ではまれに生じる悲劇なのです……。
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このうどんをエサにしてウニを畜養できれば、食品ロスを減らせるため、香川県内のうどん店はこのプロジェクトに大きな期待をしているといいます。
藻場を回復し、長期的な漁場の形成に
瀬戸内海の厄介者であるムラサキウニを駆除するだけだとコストがかかるだけですが、採集して畜養し、ブランド雲丹「讃岐うどん雲丹」として商品化できれば、利益が生まれます。
そして、ムラサキウニが減ることで藻場が回復すれば、長期的な漁場の形成にもつながるのです。これは漁師さんにとって、とても大切なこと。
産官学連携により、「藻場の復活」「水産資源の回復」「ブランド雲丹の誕生」「大学や高校の成果」「うどん屋さんの課題解決」と“五方よし”をも達成する取り組みが成功することを願ってやみません。
<讃岐うどん雲丹>は甘くておいしい
昨年9月に庵治町で捕獲された400個のムラサキウニを2ヶ月間、「廃棄うどん」もしくは「出汁がら(昆布、いりこ)」などで畜養。
11月22日には、香川大学の関係者や香川県農政水産部などの有識者とともに、畜養を担当した多度津高校の生徒らによる賞味試験が行われました。
結果、成長もよく、身入りは当初4.8%程度だったのが、17.5%を越える個体もあるとのことで、成果は上々。
そして、<讃岐うどん雲丹>の味は甘みが強く磯臭さも少ないという理由で、評価が高かったそう。また、エサによる食味の違いは歴然だったようです。
うどんには、でんぷんとグルテンタンパクが多く含まれるので、甘くなるうえ成長にも良いのでしょうか。雲丹は独特のコクや匂いがあり、子どもには敬遠されがちですが、磯臭さが少なく甘みが多いのであれば、子どもでも食べられそうです。
早ければ、2025年から一部の飲食店で提供されるそうなので、香川を訪れた際にはぜひご賞味あれ。筆者もウニが大好きなので、絶対食べに行きます。
(サカナトライター:額田善之)