水族館で印象に残っている展示はありますか?
筆者は、北海道のとある水族館でいくらが展示されているのを見たことが衝撃的で忘れられません。
今回はそんな驚きの展示をしていた「サケのふるさと 千歳水族館」(北海道千歳市)についてレポートします。
なお、本記事は2024年10月に訪問した内容を基に執筆しています。時期によって展示内容は異なるため、ご注意ください。
千歳水族館への道のり
「サケのふるさと 千歳水族館」の最寄駅は千歳駅。新千歳空港からはJR千歳線で約10分、駅からは徒歩15分くらいのところにあります。
水族館は「道の駅サーモンパーク千歳」という施設の敷地内にあるので、車で行く場合は道の駅を目指すと良いと思います。

同館は、サケをメインに取り上げている水族館。
どんな展示なのだろう……?とワクワクしながらチケットを購入して、いざ入館。
キラキラ輝くサケたちのあぶらビレを観察!
入り口を入っていくと、早速キラキラと輝く水槽が迎えてくれます。

そう、ここにいるのは全てサケです。キラキラ輝く姿が美しい……!
じっと観察していると、あぶらビレが水流にあわせてひらひらとなびく様子を観察することができました。
あぶらビレは、背鰭の後ろ~尾の間にあるヒレで、サケの仲間がもつ特徴的なヒレです。水の流れを察知するセンサーの役割をしていて、流れが速いところでも上手に泳げるようになっています。
ちなみにワカサギやヤマメも、あぶらビレを持っています。
サケ好きの中には、サケ関連のグッズやイラストにあぶらビレがあるかをついつい気になってしまうという人もいるほど、「サケと言えば!」な特徴ですね。
迫力! サケだけの大型水槽
早速入り口から心を掴まれてしまい、眺めること数十分。なかなか先に進めないという、水族館あるあるをいきなりかましてしまいました。
さて、順路を進んでいくと、ゴツゴツとした岩が目立つ水深の深い大きな水槽がありました。

よく見ると、こちらの水槽もなんとサケしかいません。しかも、近づいてみると圧倒されるほど凄く大きい……!
訪れた10月はまさに遡上のピーク。オスの美しい婚姻色はもちろん、少し曲がりはじめていた鼻もかっこいい。

スーパーで見る切り身の姿からは想像がつかない、堂々とした姿はまるで古代魚のようです。
シロザケの婚姻色には、黄色や緑、赤や黒を含んだまだら模様が浮かびます。そのうちの赤は、アスタキサンチンの赤。アスタキサンチンはサケの餌となるエビやカニに多く含まれている、カロテノイドという栄養素の1種です。サケの身にもアスタキサンチンが含まれており、あの特徴的なピンク色はこの色素によるものです。
サケたちが海で暮らしていた時に摂取した餌が体内に蓄積され、ふるさとの川を遡上する時体表に表れるんですね。<サケの生活史>のクライマックスはなんだか感傷的です。
堂々たる姿のイトウ ギンザケ・サクラマスも
他にも、本州では農地開発により住処を失い、今や野生の姿を見られるのは北海道のみであるイトウの姿も。絶滅危惧種で、釣り人の間でも伝説の魚として有名です。

水槽上部には、ギンザケやサクラマスもいました。

こちらは婚姻色がうっすら出始めているのが見えました。
秋しか見られない! ベニザケに大感動
大型水槽の一角に、一際目立つ魚がいました。ベニザケです。

ベニザケもとても大きくて立派です。この赤い体色は、サケの身の色素と同じアスタキサンチンの赤です。自然界で出会ったらちょっと怖そう……というくらい迫力がありました。
「サケ(類)」と一口に言っても色々な種類がいて、それぞれ婚姻色の出方も異なるのはとても面白いですよね(※ベニサケは常設でなく秋のみの展示。遡上状況によっては展示しないこともあります)。
透明感抜群! 支笏湖水槽
さらに順路を進んでいくと、円柱状の水槽が現れました。この水槽は、実際に支笏湖に潜って撮影した映像が投影されているそうです。なんとその大きさは直径7.2メートル!ゆったりと支笏湖の情景に浸ることができます。

水の透明感が抜群で、岩や植物の表情はもちろん、魚たちの繊細な模様もはっきり見ることが出来ます。
とにかく美しく、筆者はこの水槽が一番印象に残っています。この水槽を見て、実際に支笏湖に行ってみたいと感じました。
魚たちを取り巻く環境から北海道らしさまで余すことなく展示されていて、感動します。
更にサケを感じる! 水槽以外の充実展示
ここまで水槽展示に夢中になっていましたが、水槽の脇には他にも色々な展示が……!
実際にサケの重さを体験できるレプリカです。

そこまで重くないだろうと思っていたら……絶対片手では持てない、ずっしりとした重量感。サケってこんなに重いの……?と驚くこと間違いなしです。
餌やり体験や魚釣り体験ができる水族館はありますが、レプリカでもこうして実際に触れてみることができる体験はあまりないと思います。
こうした体験は、魚たちをもっと知ることに繋がるなと身をもって実感しました。ぜひ、行ってみた際にはサケの重みを味わってみてください。
サケと人の文化やアイヌとの関係性
そして更に順路を進むと、サケと人の文化やアイヌとの関係性などをまとめた博物的な展示がありました。
特に筆者が感動したのが「ケリ」です。ケリとは、サケの皮を使って作ったブーツ状の靴のこと。

小学生の時に「縄文時代の人々はサケの皮で靴を作っていた」という話をマンガ・日本の歴史で読んだのがずっと忘れられずにいたのですが、ついに大人になって、本物を見ることができました。思いがけず出会ってしまい、感動です。
靴の底の部分にはサケの背びれが使用され、氷上でも滑りにくい特徴がされています。
サケ皮は非常に丈夫なので水や風も通しにくく、冬の生活には欠かせないアイテムだったそうです。確かに鮭の切り身など、皮がもっちりしていて簡単には噛みきれないですよね。
他にも漁獲方法や郷土料理の紹介など、人との関係性を深掘りした学べる展示が多数あります。サケが目玉の水族館というだけあって、充実した展示に満足しました。
本物の千歳川へ向かって……
千歳水族館は、脇にある本物の川を覗くことができる<水中観察窓>があることでも有名です。
ということで、順路は千歳川の生きものを中心とした展示へと進んでいきます。

千歳川エリアでは、アユ・アメマス・ヤマメなど千歳川に住む生き物が上流・中流・下流と3つの水槽にわけて展示されています。

水槽は幅も深さもあるので、底にいる生き物もじっくり観察できます。

他のお客さんも時間をかけてみている方が多かったです。
また、水槽の上部にはマイマイ(カタツムリ)の木があり、北海道固有種であるエゾマイマイ・サッポロマイマイ・ヒメマイマイも見ることができます。
ここでも地元・北海道らしい展示があって、筆者は感動しっぱなしでした。
まさかの”アレ”が展示されていた……!
千歳川ロードを抜け、いざ本物の川へと順路を進んでいくと、思わぬ展示に出会いました。

「いくらだ……」とあまりの衝撃に呆然と立ち尽くしました。
水族館では10月~12月にかけてサケの採卵をし、その卵を展示しているそうで、訪れるタイミングによっては孵化仔魚も見ることができるとのことです。しかも、来館者も申込制で採卵体験ができるのだとか。
ちなみにサケですが、カラフトマス・ベニザケなど各種ごとに卵が孵化するまでの大体の日数を算出できる「積算温度」という指標があります。飼育水温×経過日数で出した数字が、各種の目安(積算温度)に達すると孵化するというものです。
このいくらたちも、積算温度をもとに大体この日に孵化するだろう、というのが予測できるのです。
本物の川・千歳川へ
いくらを後にして、ついに水族館の目玉である本物の川へ!千歳川の水中です。
水中観察窓が続きますが、フロアにはボランティアスタッフさんがいて、サケの生態や最近の遡上状況など質問すれば何でも答えてくれます。

この日は遡上数が少なく、サケはあまり見れないかも……とのことで希望薄でしたが、それでも窓には沢山の魚影が。

想像以上に沢山の魚たちがいました。底の方にもいましたが、こちらはウグイでしょうか。
川の流れに逆らって必死に尾鰭を動かしていたので、千歳川は水流が早いことが分かります。なかなか前には進まず、大変そうな魚もいました。
そして、観察を続けていると……野生のサケが現れた!
突如現れました! 野生のサケです。

他の魚たちとは圧倒的に体格も異なり、悠々と安定して泳いでいます。
群れになっている他の魚とは違い、1匹で泳いでいく姿はなんとも言えないかっこよさがありました。
水族館を堪能した後に見る野生のサケの姿には、ちょっとジーンときてしまいました。私たちの知らない世界を沢山見て、生き抜いてここまで戻ってきたという1つの人生(魚生)を想像すると考えさせられるものがありました。
最後の目的地まで、無事に辿り着いて欲しいです。
水族館を出たら、道の駅へも!
水中観察窓を出ると、他にも世界の淡水魚などいろいろな生き物を見ることができました。
そのあと、ぜひ行って欲しいのが、水族館の外にある道の駅。「サーモンパーク」というだけあって、サケ関連の食品なども集まっていて、お土産選びも楽しかったです。
店内にはサケの豆知識や美味しい食べ方の紹介などが随所にあり、水族館を出てもサケを満喫しました。

サケだけに没頭できる1日を過ごして、筆者はなかなか余韻が抜けませんでした。
千歳水族館はサケ好きの人はもちろん、サケはそこまで……という人も、行ってみれば楽しめること間違いなし! 機会があれば、ぜひ行ってみてください。
(サカナトライター:moka)