スルメイカは日本の食卓に欠かせない海産物の一つですが、近年は漁獲量が著しく低迷しており、ニュースでもスルメイカの不漁が取り上げられることが少なくありません。
これまでにも漁獲量が低迷した結果、代わりとなる海産物を利用し食用とされてきました。
新たな原料としてアカイカ(別名:ムラサキイカ)が知られていますが、最近はドスイカという“謎のイカ”も注目されているようです。
冷たい海に生息するドスイカ
ドスイカ(Berryteuthis magister)はテカギイカ科ドスイカ属に分類される頭足類。本種は冷水性広域分布種であり、三陸沖、日本海から北大西洋一帯の水深300メートルに多く生息します。
外套長22センチ程のスルメイカ型の頭足類で、生時は赤い色をしていますが、漁獲時には網によるスレで皮が剥がれ、白っぽい見た目をしていることが多いです。

ドスイカと呼ばれている種には複数の亜種が含まれているとされ、ドスイカ(Berryteuthis magister magister)を基亜種とし、ニホンカイドスイカ(Berryteuthis magister shevtsovi)、カタドスイカ(Berryteuthis magister nipponensis)が知られています。
ドスイカの亜種<ニホンカイドスイカ>と<カタドスイカ>
ニホンカイドスイカは名前の通り日本海に分布するドスイカ属の頭足類で、水深50~500メートルに生息。北太平洋に広く分布するドスイカと比較して成熟サイズが小さいとされています。
カタドスイカは1987年、奥谷喬司らが三陸沖の定置網で漁獲された雄個体を元に記載した種。本亜種はドスイカによく似るものの、ドスイカと比較して筋肉質であるほか、ヒレが小さく、触腕中央の吸盤は縁辺のものよりも僅かに大きいことで区別することができます。
一方、最近の研究ではニホンカイドスイカとカタドスイカをBerryteuthis septemdentatusとする見解もあるようです。
ドスイカは新たな資源に? 兵庫県で調査も実施
国内では日本海や三陸、北日本に広く分布するドスイカは底曳網などにより漁獲されます。
特に日本海の大陸棚上や離礁周辺での底曳網混獲物として出現頻度が高く、物生産量が比較的貧困とされている日本海中層水塊内生物群集中の優占種の一つだそうです。
本種は見た目の悪さに加え、まとまった漁獲がないことから食用としている地域は少ないものの、スルメイカの漁獲量が低迷している近年の日本ではドスイカが潜在的な資源として注目されつつります。

最近、兵庫県浜坂漁協所属の底曳網船が行った調査では、大和堆西部で漁獲量が多いことが判明。この調査では実際にドスイカの販売も実施しており、無選別の冷凍ブロックが1キロ300~400円、綺麗に並べたものでは1キロ600円だったそうです。
調査を実施した船は調査後もドスイカ釣りを継続しており、採算が取れるか検証しています。
「大和イカ」の名前で流通 天丼などで提供
地元ではドスイカの加工試験も行われており、「大和イカ」の名前で食用として流通。天丼などにして地元飲食店で提供されているようです。
また、北海道の羅臼町では刺網により漁獲されたドスイカを水揚げしており、スルメイカの漁獲低迷に伴い浜値が上昇しているといいます。
気になるドスイカの味ですが、水分が多く肉質は柔らかいものの、味と香りはスルメイカに近く、美味だそうです。
ドスイカが食卓に上がる日も近い?
スルメイカの漁獲量が低迷する現在、新たな原料として注目されているドスイカ。このイカが我々の食卓に上る日も近いのかもしれません。
一方、スルメイカの資源管理はもちろんのこと、ドスイカの資源についても引き続き議論し、適切な資源利用が望まれているでしょう。
(サカナト編集部)