筆者は現在は茨城県に居住していますが、これまでにも大阪府、石川県、福岡県、愛媛県、愛知県、静岡県といった地域にも住んでおり、そのうちいくつかの引越しでは<魚を連れての引越し>というのを経験しています。
現在居住している茨城県内の自宅に引越しする前には、同じ茨城県のつくば市内に居住していました。その際に飼育している水生生物を連れての引越しを体験。その際の様子をレポートします。

なお、実際の引越しは5月に行ったもので、気温も20℃を超えるような日が続いていましたが、3月から4月は関東であっても寒く、雪が降ることもあり、この時期に引越しをするならヒーターや車内の暖房を使用するなどの温度調整が必要なことも多くあります。
海水魚水槽の引っ越し準備
我が家にある幅90センチの海水魚水槽では魚だけでなく、移動に弱いサンゴも多数飼育しています。

ろ過方式は水槽の下に「サンプ」(水溜め)をおき、その中でろ過を行い、ろ過された水をポンプで水槽に持ち上げ、あふれた水をサンプに落とすという、オーバーフローシステムです。

引越しが決まったのが実際に引越しをするひと月ほど前。
引越しのスケジュールが決まったら、魚を飼育している90センチ水槽とは別にもう1本、幅60センチの水槽を立ち上げました。
この水槽で海水魚やサンゴを一時的に飼育しておき、その間に新居で90センチ水槽を再度立ち上げることにしました。
お世話になっている海水魚専門店(コーラルタウンさん)に依頼
さすがに90センチ水槽を短期間に一人で立ち上げるのは厳しいので、日頃お世話になっている海水魚専門店(コーラルタウンさん)の方にお願いしました。
立ち上げには前の水槽で使っていた粗いサンゴ砂のろ材、底砂は前の水槽で使っていたアラゴナイトサンドと細かいサンゴ砂のブレンド、ライブロックを少々、海水は一部、前の水槽で使っていた海水と新しく作った人工海水を使用しました。

前の水槽で使っていたろ材や砂、ライブロック、海水を使用している理由は、水槽を早く立ち上げるためにバクテリアの力を借りるためです。新品のろ材、砂やサンゴ岩、新品の海水にはバクテリアが全然含まれておらず、立ちあがりに時間を要するからです。
なぜバクテリアが水槽に必要かといえば、それは水槽内で生物ろ過を行う際に必要だからです。
バクテリアを水槽につれてくる
バクテリアを水槽につれてくるにはライブロックやほかの水槽で使用していたろ材や底砂、海水を使用するほかに、海水魚専門店で販売されているバクテリア製剤を購入して水槽に導入するという方法もあります。

上記写真のようなガラス製容器に封入されているもの、プラスチックや樹脂容器に入っているものなどがあります。
いずれも複数種のバクテリアをブレンドしたものが入っているのだと思われます。ただし、メーカーは普通、製品中に含まれているバクテリアの種を公開していません。
サンゴと魚を水槽に戻す
しばらくして水槽に魚やサンゴを戻しました。概ね問題なさそうです。
遊泳性ハゼのオグロクロユリハゼが泳いでいるのが見えます。

この水槽にはカクレクマノミ、ゼブラハゼ、オグロクロユリハゼ、アオモンギンポ、カエルウオ、ミヤケヘビギンポ、イエロータイルフィッシュ、ハチマキダテハゼがいましたが、オグロクロユリハゼ、ゼブラハゼといった遊泳性ハゼを最初に戻し、その後は徐々にほかの魚を1~2週間かけて戻していきました。
カクレクマノミやカエルウオは最後に戻すようにし、戻すときには複数の種・個体を同時に戻します。海水魚は縄張りを作るものが多く、争いの対象を分散させるのです。
一方オグロクロユリハゼやゼブラハゼは臆病な性格をしているため、最初に導入し、新しい水槽に慣らして落ち着かせるのです。

トラブルとしては、一時的に魚を入れていた60センチ水槽では砂をしいていなかったため、テッポウエビも砂を掘ることができず、隠れ場所がないハチマキダテハゼがカクレクマノミなどほかの魚に襲われぼろぼろにされてしまったということがありました。

その後水槽内でテッポウエビと再度共生させたところ、10月の終わりには鰭の傷も癒えてきました。しかしながら一つの水槽やバケツにほかの魚とごちゃまぜにするということは、このようなリスクがあるということを考えさせられました。

淡水魚水槽の引っ越し
一方、淡水魚については、水槽はいずれも60センチ以下のものであり、飼育している魚もドジョウやハゼといった日本産淡水魚など丈夫な魚のみであったことから、水深を浅くし、水槽ごと車で運びましたが、とくに問題はありませんでした。

ただしその際も水槽に水と魚だけ運ぶようにし、流木や岩、上の写真の中に見られる二枚貝の殻などのアクセサリ類やろ過器、ヒーターなどは別の容器に入れて運んだのでした。
淡水魚の中にはタナゴ類など、スレ傷に弱いものもいるので、注意が必要です。
魚の引越しは大変だけど……
我が家の水槽引越しについてのレポートはいかがでしたでしょうか。
ただでさえ引越しは大変ですが、それに水槽があるとより負担が増えます。しかし私の場合、広い新居でアクアリウムを楽しむことができたので、その引っ越し作業も苦にはなりませんでした。
もし引越しで魚を持っていけないという方は、アクアリウムショップや観賞魚店などで引き取ってもらうようにし、屋外には逃がさないようにしましょう。
なお、本記事は水槽引越しの一例でしかありません。
水槽の数が少なかったり、逆に水槽の数が多かったり、水草の引越しであったり、あるいは遠距離の引越しだったりと、引越しの内容によって水槽や魚の運搬方法が変わってくることがありますので、ご注意ください。
(サカナトライター:椎名まさと)