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擬態やコミュニケーションのため? 海で発光する魚たち

地球上には既知種だけでも約175万種の生物がおり(2 地球温暖化による生物多様性の危機 環境省 )、その中には発光する形質を獲得した生物が数多くいます。

このような発光する生物(以下発光生物)の大部分は海洋に生息する生物であり、陸上の発光生物はホタルやホタルミミズなどのごく一部です。

今回は魚を中心に生物の発光について解説してきます。

体が光る魚たち

海には魅力的な発光生物がたくさんいますが、特に深海では発光する魚が多くいます。魚の発光には様々な役割がありますが、主に知られているのは攻撃(防御)・擬態・コミュニケーション・捕食(索餌)の4つです。さらに発光する魚たちは大きく分けて自力発光と共生発光の2種類に分けられます。

ハダカイワシ科の魚(提供:PhotoAC)

<自力発光>は自分自身で作り出した発光物質を利用する発光であり、自力発光はハダカイワシ科の魚やカラスザメ科の魚など多くの深海魚が獲得した形質です。

ハダカイワシ科の魚やムネエソ科の魚には腹部に無数の発光器が備わっていることが知られており、暗い深海で自身の姿を消すために使用されていると考えられています。暗い深海では真上から僅かな光が差し込む程度ですが、深海には暗闇に適応した眼の良い生物たちが多くいます。

そのため、魚たちを下から見上げると明るい背景に対して、魚が影になって浮かび上がってしまうのです。これを防ぐために、深海魚たちは腹部の発光器から光を放ち自身の姿を背景に溶け込ませます。「カウンターイルミネーション」と呼ばれ、多くの深海魚がこの方法で身を隠しています。

ハダカイワシ科の魚たちはよく似た種が多いですが、このグループの発光器は観察が容易であることに加えて、種や性別によって発光器の数や配列パターンが異なることから、種及び雄雌を識別する上でも非常に重要な役割を持ちます。

<共生発光>はチョウチンアンコウが良い例です。提灯(第一背鰭)の先端(エスカ)には発光バクテリアが共生しており、チョウチンアンコウはこれを利用して獲物をおびき寄せます。一見、これにはチョウチンアンコウにメリットがあり、発光バクテリアには利益も不利益もない共生(片利共生)に思えますが、発光バクテリアにも生活空間を提供してもらうというメリットがあります。

お互いにメリットのある共生を相利共生と呼び、同じ海中ではテッポウエビとダテハゼなどが相利共生することが知られています。

同じくアンコウ目のThaumatichthys pagidostomusは短くて太い発光器を持ちチョウチンアンコウ同様獲物をおびき寄せるのに利用しています。しかし、驚くべきことにThaumatichthys pagidostomusは裂けた上顎の間から発光器を自らの口の中に入れてしまうのです。口の中に獲物を直接おびき寄せてしまうのですから、まさに究極の捕食といってもよいでしょう。

このようにアンコウ目の魚には背鰭が提灯のように進化した種は多くいますが、ホウライエソも背鰭の先端が提灯のように進化しており、発光することが知られています。ホウライエソの発光器はチョウチンアンコウほど派手ではありませんが、チョウチンアンコウと同様に捕食に利用されていると考えられています。また、ホテイエソ科にはミツイホシエソのように胸鰭の先端が発光する珍しい魚もいます。

髭や顔が光る魚たち

体や背鰭以外にも髭が発光する生物もいます。ホテイエソ科の魚は下顎に髭を持ち、その多くは先端部に発光体を持ちます。これもチョウチンアンコウ同様に捕食に利用される他、点滅させてコミュニケーションを取るとも考えられています。

ホテイエソ科の髭は種によって多様があり、髭の色や長さ途中で分枝するものなど様々です。特に先端部の発光器の形は多様性があり、ホテイエソ科魚類を識別する上で非常に重要な形質です。

また、ホテイエソ科の多くは眼の下に発光器を備えています。この発光器はヘッドライトのような役割があり、索餌に利用したり点滅させてコミュニケーションを取ったりします。

中でもオオクチホシエソは究極のヘッドライトを持ちます。多くの深海魚は赤色の光を感知できないのですが、オオクチホシエソは例外的に赤色の光を感知することができます。その上、自身の目の下には赤色のヘッドライトがあるのです。つまりこの魚は獲物に見つかることなく自身のみが感知できるヘッドライトで索餌をしているのです。他の深海魚からしたら、たまったものではありません。

キンメダイ目ヒカリキンメダイ科のヒカリキンメダイは眼の下に大きな発光器がある魚で、水族館でも発光の様子を観察することができます。従来、日本のヒカリキンメダイ科はヒカリキンメダイ1種のみでしたが、2014年にPhotoblepharon palpebratumが日本初記録種として報告され、オオヒカリキンメと命名されました。

オオヒカリキンメとヒカリキンメダイは形態的な違いも多くあるのですが、光を遮断する方法にも違いがあり、ヒカリキンメダイはレンズを下方に傾けて光を遮断するのに対して、オオヒカリキンメはレンズに膜を被せて光を遮断します。ヒカリキンメやオオヒカリキンメの発光器はコミュニケーションや捕食に使用されていると考えられています。

浅海に住む発光生物

発光する生物がいるのは、深海だけではありません。浅瀬にも発光する魚がいます。

マツカサウオは水族館でもよく見られるお馴染みの魚ですが、意外なことにこの魚も発光するのです。マツカサウオは下顎の先端はただ黒いだけのように見えますが、実はここに1対の発光器があり、発光バクテリアを共生させて共生発光を行います。

マツカサウオ(提供:PtotoAC)

マツカサウオの発光は弱いため、発光している様子を観察することは容易ではありませんでしたが、1914年に魚津水族館の飼育下で偶然発光する様子が観察され、世界的な発見になりました。マツカサウオの発光の役割は不明ですが、捕食やコミュニケーションに役立っていると考えられています。

この他にも浅海には発光する魚が何種かおり、意外かつ身近な魚でいえば、釣りでお馴染みのヒイラギも発光バクテリアとの共生で発光することが知られています。

その他の発光

冒頭で発光には自力発光と共生発光の2種類があると解説しましたが、ハタンポ科のキンメモドキはどちらとも異なる発光を行うことが、2020年に公表された論文で明らかになりました。

キンメモドキの群れ(提供:PtotoAC)

研究の結果、本種は餌であるウミホタルから発光酵素を獲得・利用していることが判明したのです。これは従来考えられていた発光とは異なり、この現象は「盗たんぱく」と名付けられました。

一見、発光しているように見えない魚でも、青色光下で発光する魚がいます。エンビアカタマガシラはアカタマガシラによく似た魚で長らく同種とされていましたが、2020年に新種記載されました。本種はアカタマガシラと酷似しており、識別が難しい種でもありますが、青色光下での蛍光パターンの違いから容易に区別されます。蛍光パターンが識別的形質になったのはこれが初めてのケースであり、蛍光パターンによる識別の可能性を示した事例でもあります。

このように発光する魚は多くいますが、形も役割も種によって様々で、魚の多様性を表しているといえます。魚の発光には未知な部分が多いため、今後の研究から目が離せません。

(サカナト編集部)

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