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共生することを選んだ魚たち 対象はナマコからクジラまで

弱肉強食の世界を生きる海の生物たちは、一見すると己の利益のみで行動しているように見えますが、実は人間と同じように互いに助け合っているのです。

ここでは共生する魚を紹介します。

他の生物に”居候”

魚たちは厳しい海を生き抜くために、分類群を越えた生物たちと共生関係を築き上げています。

魚たちが共生する理由としてよくあるのが住処の獲得です。代表的な例はカクレクマノミとイソギンチャクの共生ですが、他にも住処を他の生物に頼っている生物が多くいます。

アシロ目の1グループであるカクレウオ科は世界に8属37種の小さなグループで、日本では13種が記録されています。このカクレウオ科の魚は名前の通り、ある生物に隠れる生態を持つのですが何か分かりますか?

正解はナマコ、ヒトデ、貝類です。ナマコに寄生するのは有名ですが、ヒトデや貝類にも寄生するのはあまり知られていないかもしれませんね。カクレウオ科の魚は、日本国内では深海で自由生活をするオニカクレウオ属の2種を除き、ナマコ類などの体内に寄生することが知られています。

この共生では、カクレウオ科の魚たちはナマコの体内という安全な住処を得られますが、ナマコ側にはメリットもデメリットもない共生とされています。このような共生を片利共生(へんりきょうせい)と呼び生物界ではしばしば見られます。

ニチリンダテハゼ(提供:PhotoAC)

ダテハゼ属の魚たちは、一部のテッポウエビ科と共生することが知られています。カクレウオはナマコを宿主として住居を獲得しますが、ダテハゼはテッポウエビが砂に掘った巣穴に住み着きます。巣穴を掘れないダテハゼは、テッポウエビに住処を提供してもらう代わりに巣穴の見張り役を担っています。ダテハゼは危険を察知すると尾鰭を振ってテッポウエビに情報を伝える一方、テッポウエビは長い触覚でダテハゼのシグナルを受け取り巣穴に逃げ込むのです。

テッポウエビとダテハゼ仲間の共生は魚が住処を提供してもらうといった点では、先程紹介したカクレウオとナマコの関係に近いですが、この共生ではお互いにメリットがあるという点で異なります。ダテハゼとテッポウエビのようにお互いにメリットがある共生を相利共生(そうりきょうせい)と呼びます。

ハナハゼはクロユリハゼ科の1種であり、この魚もテッポウエビを利用することが知られています。ハナハゼは普段は海底から離れて泳いでいますが、危険を察知するとテッポウエビの巣穴に逃げ込むのです。しかし、ハナハゼはダテハゼのように見張り役をする訳でもないし、巣穴を掘るような習性もありません。ただ単に巣穴を利用していると考えられています。

さらに、ハナハゼは幼魚期を除き、自分よりも体の小さなダテハゼの巣穴を利用することが知られています。これは自然界において、体が大きいほど力が強く有利であることが要因であると考えられています。

魚が住処を提供してもらうばかりではありません。魚が他の生物の住処となることもあります。チョウチンアンコウは提灯(背鰭の先端)に発光バクテリアを住まわせて、提灯の発光に利用します。バクテリアは安全な住処を提供してもらえるという相利共生になります。他にもマツカサウオやヒイラギが発光バクテリアと共生関係にあります。

“おこぼれ”をもらう魚たち

コバンザメ科の魚は主にカジキ類やサメ類などの大型魚に付着、もしくは付随して遊泳生活をする中型魚類です。このグループは頭部に第一背鰭が進化した小判状の吸盤を持ち、大型生物に吸着します。吸盤の形状や大きさ種によって、形状や大きさが異なり種の識別に用いられます。また、宿主も種によって異なっており、ウミガメ類、イトマキエイ、マンボウに吸着する種や、オオコバンのようにクジラ・イルカ類に吸着する種も知られています。

ただし、必ずしも共生生活をするとは限らず、自由遊泳する個体もいます。特にコバンザメでは自由遊泳する個体がよく見られ、南方の島での堤防釣りでは普通に見られる魚です。この共生ではコバンザメ側は大型生物の食べ残しをもらえることや、移動する手間を省けることから、コバンザメにメリットがあり、大型生物にはメリットもデメリットもない片利共生とされています。

しかし、コバンザメの1種は宿主の鰓の中まで侵入することが知られており、これでは宿主の鰓を傷付けてしまう可能性があるという指摘もあります。この場合大型生物にデメリットが生じるので片利共生ではなく、寄生に近いとされています。

クリーニングをするホンソメワケベラ(提供:PhotoAC)

ベラ科のホンソメワケベラは大型魚に付着した寄生虫を食べる習性があります。このような魚を掃除魚と呼びます。これも1種の相利共生であり、ホンソメワケベラ大型魚に付着した寄生虫を食べることができ、大型魚は体を綺麗にしてもらえるというメリットがあります。

この関係を利用したニセクロスジギンポという魚がいます。本種はホンソメワケベラとは別の科であるニジギンポ科に属しますが、体色がホンソメワケベラにそっくりで、ホンソメワケベラに擬態していると考えられています。擬態の目的は大型魚の鱗や粘膜を食べるといった説もありますが、捕食者から敵対されないようにするためという説もあります。

“寄生”する魚

寄生される魚は多くいますが、反対に寄生する魚もいます。カワヤツメは円口類の1種で原始的な魚類とされている生物です。本種は一生のうち、海で生活する一定期間に寄生生活を行います。寄生期間中は他の魚類に口で吸着し、体液を吸収します。

このように海の中では分類群の壁を越えた共生が行われています。その目的や利害関係も様々であり、相互関係が不明な共生も多くあります。一見、利害がないような関係でも、実は何かしらのメリット・デメリットがあるのかもしれませんね。

(サカナト編集部)

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