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DNA検査と性転換技術を駆使

今回の研究の第一段階である偽オスを作り出す工程では、人工授精を用いて作った種苗に雄性ホルモン処理を施し、遺伝的なメス(XX型)をオスに性転換させた個体群を作成。

この中からDNA検査を使って、偽オス(XX型)を選び成熟するまで育成が行われました。第二段階では偽オス親から精子をとり通常のメス親(XX型)に人工授精が施されています。

また、このメス親が産んだ仔魚についてDNA検査を行い遺伝的な性を確認すると同時に、生殖腺の観察が行われました。

全メス生産に成功

第一段階の偽オスの作出では、遺伝子検査と生殖腺を観察した結果、100%の確率で遺伝的なメスがオスへと性転換し、効率的な偽オス生産手法が確立されています。さらに、偽オスの生殖腺は通常の遺伝的なオスと同じように精巣へと分化。孵化から約2年半後には成熟して精子が作られたようです。

第二段階ではこの精子を使って、通常のメス親に人工授精を施し半年間畜養。人工授精したメス親のうち1尾が妊娠し、2024年の春には産仔に至っています。また、これらの仔魚を育成し、生殖腺を観察した結果、通常のメスと変わらない卵巣へと分化していたとのことです。

さらに仔魚の遺伝的な性をDNA検査で確認した結果では、試験を行ったすべての個体が遺伝的なメス(XX型)であることが明らかになりました。なお、平行して実施された通常のオス(XX型)とメス(XY型)の人工授精では、ほぼ1:1の割合で仔魚が産まれたそうです。

こられの結果から、今回の研究ではクロソイの全メス生産に成功したと結論付けられています。

生産効率化への貢献が期待される

今回の研究では偽オスと通常のメスを人工授精させることで、100%メスとなる種苗個体群の生産に成功しました。これは世界で初となる事例とのことです。

オスよりメスが早く大きく育つメバル類の養殖では、この研究成果が生産効率化へ貢献することが期待されています。北日本の養殖魚としてクロソイが代表種になる日も近いのかもしれません。

(サカナト編集部)

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