牡蠣と言えば、我々に馴染み深い水産物。生のまま食べたり鍋やフライで食べたりと、幅広い料理で使われています。
ちなみに、筆者はカキフライが好きです。また、オイスターソースを使った料理もいいですね。
そんなカキは、海洋環境においてもとても重要な役割を担っています。その役割のひとつが、生物の定着地・住居としての一面です。
でこぼことしたカキの殻がもつ役割
群生する牡蠣(提供:PhotoAC)牡蠣は岩などに集団で定着し、成長と共に殻を大きくしていきます。
調理中に殻で手を切ってしまいそうになる経験はありませんか? 牡蠣の殻は層構造になっており、でこぼことした貝殻が特徴的です。
卵からかえった牡蠣の幼生は、海中を浮遊しながら自分の定着場所を探します。牡蠣の幼生たちが定着しやすいのが、牡蠣の殻。牡蠣同士が近くで生育し、重なり合って複雑な構造をつくることで、多くの生き物たちのすみかになります。
それだけでなく、牡蠣の殻は栄養豊富な何層もの炭酸カルシウムでできているので、海藻などの付着生物にとっては絶好の付着場所なのです。
牡蠣の殻にいた生き物たち
岸壁には多くの牡蠣が定着しており、まれにポロリととれることがあります。それを観察すると、実に多くの生物が住み着いていることがわかります。
実際に牡蠣殻で見つけられた生きものたちを紹介します。
ツツボヤの一種
ツツボヤの一種(撮影:俊甫犬)冬に生い茂ることが多いホヤです。半透明で白いラインが入っていて綺麗な見た目をしています。
緑藻・紅藻と共に定着しておりました。
マツカサウミウシ
マツカサウミウシ(撮影:俊甫犬)マツカサウミウシは刺胞動物をたべるウミウシの一種。大きさは3~4ミリほどで非常に小さく見つけづらかったです。
ダイビングでよくみられるウミウシですが、牡蠣殻の上にいたのは驚きでした。
クリゲヒモムシ
クリゲヒモムシ(撮影:俊甫犬)クリゲヒモムシは紐型動物の一種。伸縮自在の体を持っており、カイメンが多く付着している牡蠣殻の中にいました。
刺激を与えると体を自切してしましまいます。
ヒドロ虫網のポリプとクラゲ(オベリアクラゲとカイヤドリヒドラ)
ヒドロ虫(撮影:俊甫犬)牡蠣の殻はもちろん刺胞動物にとっても絶好の定着地であり、この殻には2種類のヒドロ虫のポリプ(クラゲになる前の姿)が居ました。
ヒドロ虫網とは刺胞動物のクラゲの分類群で、4種ある分類群の中でもっとも種類が多く、中にはクラゲを作らない種類もいます。
左:オベリアクラゲのポリプ 右:カイヤドリヒドラのポリプ(撮影:俊甫犬)オベリアクラゲのポリプはかなり繁茂しており、カイヤドリヒドラのポリプは牡蠣やムラサキイガイなどの二枚貝の軟体部に付着します。
成熟すると、大きさ1ミリほどの非常に小さなクラゲとなり遊離。クラゲは生殖器官としての役割だけがあり、放卵放精後に死滅します。
カイヤドリヒドラクラゲ(撮影:俊甫犬)
カイヤドリヒドラクラゲの大きさは1ミリと非常に小さいです。
ワレカラの仲間
ワレカラの仲間(提供:PhotoAC)ワレカラは甲殻類の仲間。見た目はエイリアンのようですが、枕草子にも書かれており、古くから日本人に知られていた生き物です。
主に海藻や刺胞動物の上で暮らしていますが、それらは牡蠣の殻にも生えているので、自然に牡蠣殻の上にも住み着くようになります。
ゴカイの仲間
ゴカイの仲間(撮影:俊甫犬)密集した牡蠣殻は小さな空間が多く、ゴカイやウロコムシ含む多毛類にも良い住処となります。
ほんの小さいカキ殻に複数個体棲んでいたのでいかに住処として優れていたか分かりました。
カキが支える海洋生態系
多くの生きものが住み着く性質を利用し、牡蠣殻を使った人工魚礁が全国各地に設置されております。
メバルなどの魚の餌になる生物が住み着くおかげで、生育・漁獲量が増えたというデータもあります。我々にとっても栄養豊富な牡蠣は、他の水産物にとっても栄養をもらえるありがたい存在。
このことを噛みしめて牡蠣を味わうと、おいしさも倍になるでしょう。
(サカナトライター:俊甫犬)