シベリアチョウザメはユーラシア大陸に広く分布する中型魚で、水質の変化に強いことから世界中で養殖されています。
本種から採れる卵は高級食材「キャビア」の原料として知られており、ロシアチョウザメやオオチョウザメと比較して卵径が小さいものの、生まれて5年程度でキャビアの生産が可能です。この生産サイクルの短さから、日本でも多数養殖される魚の1つになっています。
一方、キャビア生産において採卵対象にならないオスの有効利用が課題とされてきました。そうした中、近畿大学水産研究所新宮実験場の稻野俊直氏と木南竜平氏の研究グループは、メス化させたシベリアチョウザメから採卵とふ化に成功。オスによるキャビア生産が可能になりました。
シベリアチョウザメとは
シベリアチョウザメ(Acipenser baerii ssp. baerii)は、ユーラシア大陸に広く分布する中型の淡水棲のチョウザメです。

本種は水質に強いことから世界中で養殖が行われており、日本でも多数養殖されています。チョウザメから採れる卵は高級食材「キャビア」の原料として知られ、シベリアチョウザメの場合は生まれて5年程度でキャビアが生産できるようです。
ロシアチョウザメやオオチョウザメと比べ卵径が小さいですが、キャビアの生産サイクルが短いことがシベリアチョウザメの魅力となっています。
シベリアチョウザメのメス化
シベリアチョウザメはZZ/ZW型の遺伝的性決定様式を有する魚であり、オス(ZZ)とメス(ZW)の交配でオスとメスが1:1の割合で生まれることがわかっています。
キャビアの生産においては、採卵対象にならないオスの有効利用やオスとメスの判別作業のコストが課題とされてきました。

そうした中、近畿大学水産研究所新宮実験場は2017年、ドイツからシベリアチョウザメの受精卵を輸入。人工ふ化したシベリアチョウザメに女性ホルモンを経口投与することにより、2019年に全メス化に成功しました。
メス化させた供試魚(実験に用いられた魚)の一部に女性ホルモンを含まない飼料を与えたところ、卵巣が正常に発達することが確認されています。
オス化した個体から採卵に成功
その後、供試魚を継続飼育し7歳2ヶ月になったタイミングで、1尾が卵径3.1ミリの成熟卵を抱卵していることが判明。この個体のDNAを分析したところ、遺伝的オス(ZZ)であることがわかり、性転換したシベリアチョウザメでもキャビアを製造できる卵を持つことが明らかになったのです。
その約2ヶ月後、同個体から約68000粒、重さに換算すると約1キロの採卵に成功。別のシベリアチョウザメの精子を受精させた結果、その5日後にふ化が確認されています。
これにより、性転換させたシベリアチョウザメから採卵し、その卵をふ化させた日本で初めての事例となりました。
さらにふ化したシベリアチョウザメを無作為に採取・DNA抽出、PCRによる製版別を行った結果、すべての個体が遺伝的オス(ZZ)であることも判明しました。
なお、これについてはメス化した個体(ZZ)と通常のオス(ZZ)との交配のため、理論上オスのみが生まれると考えられているようです。
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