大分県佐賀関で水揚げされる高級ブランド魚といえば、「関あじ(せきあじ)」と「関さば(せきさば)」でしょう。
関さば・関あじは、なぜ高級ブランド魚と呼ばれるようになったのか。美味しく食べられる旬や“関もの”と言われる背景、漁師の技などをまとめました。
関さば・関あじの魅力と「関」の由来
関さば・関あじの魅力は、なんといってもその食感と味わいです。プリプリの引き締まった身と、口の中でとろける良質な脂がその美味しさを生み出しています。
この美味しさが生まれた秘密は、彼らが育つ環境にあります。大分県の佐賀関(さがのせき)と愛媛県の佐田岬の間に広がる「速吸(はやすい)の瀬戸」は、潮の流れが速いことで有名な海域です。

加えて、この海域はエサとなるプランクトンが豊富であるため、引き締まった身に美味しい脂がしっかり蓄えられます。昔から佐賀関の漁師さんたちは、「この海のアジは、頭が小さく尾柄がたくましい」と、他の海で取れる魚との違いを見抜いていたといいます。
こうして、佐賀関で獲れる魚を“関もの”と呼ぶようになり、ブランドの始まりとなりました。
ちなみに、関さば・関あじは、1996年に日本で初めて商標登録された水産品です。大分県漁協の佐賀関支店がしっかりとその名前と品質を管理しているため、私たちは安心して本物の味を楽しめます。
関さば・関あじは珍しい生態
通常、サバやアジは海を回遊しますが、関さば・関あじは一か所の瀬に居つくと言われています。
このような魚は「瀬付き魚」と呼ばれますが、サバやアジで瀬付きになるのは珍しいようです。
瀬付きになる理由ははっきりしていないものの、速吸の瀬戸の水温と、エサが豊富である環境が関係していると考えられています。
いちばん美味しいのはいつ?知っておきたい「旬」の時期
関さばと関あじは、それぞれ美味しさのピークが違います。関あじの旬は7月~9月、関さばの旬は12月~3月です。
夏の関あじは、さっぱりとした中にもしっかりとした旨味があります。また、冬の関さばは、口の中でとろける脂が最高です。実際に食べた人からは「弾力がすごい」「脂が甘い」といった感想を聞きます。
一方、温暖化による海水温上昇により旬の時期が変化しつつあるようです。
関あじ・関さばが高級ブランド魚になった3つの理由
なぜ、関さば・関あじが高級なのでしょうか。それにはちゃんとした理由があります。
1つ目は漁獲方法。1匹ずつ丁寧に釣る「一本釣り」を採用し、網漁のように魚が傷つかないようにしています。

2つ目は生きたままいけすに入れられること。釣り上げられた魚は生きたまま港へ運搬され、港に着くと熟練の職人さんによる「面買い」という選別が始まります。
水面を泳ぐ魚の顔つきや体つきを一瞬で見極めて値付けする様子はまさに職人技。ここで選ばれた魚だけが、次のステップに進んでいきます。
3つ目は究極の鮮度を保つ「活け締め」と「神経抜き」。出荷直前には、1匹ずつ手作業で「活け締め」と「神経抜き」を行います。これは鮮度を保ち死後硬直で、身が硬くなるのを防ぐための技です。
こうしたひと手間があるからこそ、私たちの食卓に届くまで最高の状態がキープされるんですね。
<関あじ・関さば>最高の味わい方
関あじ・関さばはさまざまな調理法で楽しめますが、素材の魅力を感じられるのはお刺身です。引き締まった身の歯ごたえと、とろける脂の甘みを味わえるでしょう。

また、関あじのお刺身に大分名産のカボスをギュッと搾る食べ方は、爽やかな酸味があじの旨みをグッと引き立ててくれます。
関さば・関あじは、佐賀関が誇るべきブランド魚。大分へ訪れる際には、ぜひ、関さば・関あじを味わってみてください。
(サカナトライター:河野ナミ)