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『日本の深海魚図鑑』製作の裏側を覗くイベントレポート <深海魚研究と分類学>に大事なこととは?

東京都新宿区にあるサカナに特化した本屋・SAKANA BOOKSは9月14日、深海BOOKS2025『日本の深海魚図鑑』著者&編集者トークイベントを開催しました。

イベント当日のサカナブックス店内(撮影:サカナト編集部)

昨年12月に刊行され、深海魚ファンを中心に話題となった『日本の深海魚図鑑』の編著者で魚類学研究者の岡本誠さんと、編集を務めた山と溪谷社自然図書出版部部長の神谷有二さんによるトークショーのほか、岡本さんによる深海魚標本の展示、深海魚グッズの販売などが行われました。

深海魚好きが一堂に会した、当日の様子をレポートします。

『日本の深海魚図鑑』を細部まで語りつくす!

会場では『日本の深海魚図鑑』のほか、岡本さんがこれまでに関わった本が並んだ(撮影:サカナト編集部)

『日本の深海魚図鑑』は2024年12月、山と溪谷社から刊行された深海魚図鑑です。

日本近海に生息する136科423種の深海魚を網羅する本格的な図鑑で、マニアックな魚から近年記載された新種まで掲載。深海魚それぞれの特徴だけでなく、豊富な知見やエピソードまで盛り込まれています。

深海魚図鑑を作る上でのハードルは「写真」

トークショーの第一部は、「『日本の深海魚図鑑』のディープな話」と題して、同書の編著者で魚類学研究者の岡本誠さんと、編集を務めた山と溪谷社自然図書出版部部長の神谷有二さんが登壇しました。

岡本誠さん(撮影:サカナト編集部)

本書の製作は、2022年12月に山と溪谷社から刊行された『新種発見! 見つけて、調べて、名付ける方法』に岡本さんが執筆したことがきっかけ。山と溪谷社が岡本さんに「深海魚をテーマにした読み物を書きませんか?」とオファーをしたところ、岡本さんから「図鑑を作りたい」との提案があり、「深海魚図鑑」の製作が決まったそうです。

深海魚の図鑑を作るにあたって課題となったのが「綺麗な写真がないこと」。深い海の底にすむ深海魚は潜って撮影することができず、さらに引き揚げたものは皮が剥けたりなどで状態が悪く、綺麗な写真を用意するのが難しいといいます。

しかし、岡本さんは山と溪谷社と打ち合わせを進める中で、綺麗な写真にこだわる図鑑にしようと決め、状態の悪い写真しかないものは例えどれだけ珍しい魚でも掲載を控えたのだそうです。

神谷有二さん(撮影:サカナト編集部)

本書では19人の魚類学者・深海魚研究者が執筆に参加。それぞれ得意な分野が離れていることから、分担して執筆を進められたといいます。

深海魚の稚魚を見つけるのは難しい?

第二部では「深海魚の稚魚と新種を発見せよ!!」と題して、岡本さんが登壇。深海魚や深海魚の稚魚を採集し、同定や新種を見つける方法を語りました。

まず初めに、岡本さんの専門である「魚類分類学」について話があり、多くの魚の種同定を行い、新種(未記載種)を見つけていくこと、分類の整理を行うことについて解説しました。

深海魚に出会う方法

岡本誠さん(撮影:サカナト編集部)

魚類の分類のためには、多数の魚に出会うことが大切です。深海魚とは市場や釣りで出会うこともできますが、岡本さんは積極的に船に乗っているといいます。

これは、船での底びき網などは一度に出会える魚の量が圧倒的に多いこと鮮度もよく、綺麗な体色のうちに写真を撮影しておけることなどが理由なのだそう。さらには、オンデンザメなど大きな深海ザメに出会えるといった特別な経験も、自身で撮影された貴重な動画と共に語りました。

また、近年ではROV(無人潜水艇)で深海の調査をすることもあるといい、沖縄美ら海水族館のROVや人が乗れる小型の潜水艇「Curasub」を使った研究の事例についての話もありました。泳ぐ深海魚や生息環境など貴重な情報が撮影できるうえ、潜水艇についた吸引器で対象を採取できることから、新種発見に繋がったといいます。

稚魚の発見にはスケッチが欠かせない!

成長するに従って姿を変える──変態する魚たち。成魚と稚魚の分類学は多くかけ離れたものだといいます。

稚魚の同定では、主にヒレを支える筋である鰭条や背骨の数を数えて、一致する成魚を探していきます。実際には、レントゲン撮影やCTスキャンを通して分類を進めるそうです。

さらに、仔稚魚の研究にはスケッチが欠かせないといいます。

特にヒレが完全に成長していない仔魚の状態では、顕微鏡で撮影しても細部がぼやけてしまうことから、手作業での観察・スケッチはとても大事なステップなのだとか。絵がうまい人は、仔稚魚の研究に向いているそうですよ。

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