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最大1.8mの巨大魚<ユメタチモドキ>を食べてみた タチウオの仲間だけど尾びれアリ?

タチウオ科魚類は日本近海から13種が知られています。

そのなかでも一般的に魚屋さんでみられるものはタチウオ、テンジクタチ、そして沖縄産のオキナワオオタチの3種くらいです。

しかし、そのほかにも美味しいタチウオ科魚類はいます。ユメタチモドキも、そんな魚のひとつといえるでしょう。

タチウオ科の魚は日本に13種

タチウオ科の魚は日本に13種が知られるグループです。

いずれの種も体は細長く、口には鋭い歯が並び、腹ビレはないかあっても小さいなどの特徴があります。

タチウオ(提供:椎名まさと)

日本においてはタチウオや、その近縁種であるテンジクタチ、琉球列島近海に生息するオキナワオオタチなどが食用とされていますが、それ以外の種はあまり積極的には利用されていないのが現状です。

しかし、これら3種以外の魚が美味しくないということはありません。タチウオよりも大きく、1.8メートル近くになるユメタチモドキも、タチウオほどは利用されていないものの、美味しい魚のひとつです。

ユメタチモドキとは

そんな巨大に育つユメタチモドキは、従来は日本近海には生息していないとされていました。

本種はキューバから得られた個体をもとに、1863年に新種記載され、それ以降しばらくは大西洋にのみ生息するとされていた珍魚だったのです。

ユメタチモドキ(提供:椎名まさと)

しかし、1938年4月14日、釜山にほど近い巨済島で大敷網によって漁獲された全長1475ミリの雌の個体をもとに、朝鮮総督府水産試験場の内田恵太郎博士により「ユメタチモドキ」という標準和名がつけられました。

ユメタチモドキの形態

ユメタチモドキはタチウオ科のなかでも大型になる種で、大きいものは2メートル近くになるという巨大魚です。

タチウオ科の魚なのですが、その見た目は私たちのよく知っているタチウオとは大きく違っています。

尾鰭の有無

まず、なんといってもタチウオと大きく異なる特徴は、ユメタチモドキには「尾ビレがある」ということです。

ユメタチモドキの尾鰭(提供:椎名まさと)

タチウオや、同じくタチウオ属に含まれる魚は英語で「Hairtail(髪の毛のような尾、という意味)」と呼ばれているように尾部は細長く、尾ビレは外見から見えないほど退化しています。

タチウオでは尾鰭はほぼ見えない(写真:PhotoAC)

その一方、ユメタチモドキには体長と比較すると小さいものの、大きな三日月状の尾ビレを持っていることでタチウオとの比較は容易といえるでしょう。

ただし、タチウオ科の中でも、ユメタチモドキのほか、同じ属のヒレナガユメタチやヒレナガオオメユメタチ、タチモドキ属の魚など、明瞭な尾ビレを持つ種はほかにも何種か知られています。

また、腹ビレを有することもタチウオとは異なります。タチウオ科の魚の腹ビレはどの種も退化的で、痕跡的な種も多く、特にタチウオではまったく無くなってしまっているようです。

ユメタチモドキの腹鰭(矢印)(提供:椎名まさと)

一方、ユメタチモドキでは他のタチウオ科の多くの種と同じように非常に小さく、鱗のような形状をしているものの、明瞭な腹ビレを持っています。

顔つきと背鰭

ユメタチモドキの頭部は眼の上方で膨らみます。タチウオなどでは頭部が細長くとがっており、タチウオとの見分けであれば尾ビレを見なくても、顔だけで十分かもしれません。

ユメタチモドキ頭部(提供:椎名まさと)

しかし、タチウオ科の中には、タチウオのような尾部をしているものの、頭部がやや膨らむような種もおり、注意が必要です。

またユメタチモドキは背鰭が特に長く伸びるということはないのですが、同じ属のヒレナガユメタチ、ヒレナガオオメユメタチといった種は背ビレが長く伸長するという特徴があり、ユメタチモドキとは識別できます。

ユメタチモドキの分布域

ユメタチモドキの分布域は現在のところ新潟県、千葉県、静岡県、宇和海、東シナ海、釜山近海、キューバ、バハマ諸島~ブラジルまでの西大西洋およびその沿海(カリブ海など)に生息するとされています。

しかし、現在「ユメタチモドキ」と呼ばれている種も、日本を含む西太平洋に生息するものと、西大西洋に生息するものが別種として分けられることになるかもしれません。

というのも似た分布域を示していたアオスミヤキの例があるからです。

日本近海のアオスミヤキ(提供:椎名まさと)

従来、アオスミヤキは西大西洋と、西太平洋にすむとされたいましたが、近年の研究により西大西洋のものと西太平洋のものでは異なる種であることが判明。西太平洋のものがカリブ海から得られた個体をもとに新種として記載されたのです。

ただし、大西洋産種との比較には、比較するのに必要なだけのサンプルを集めなければなりません。ユメタチモドキは細長く、各部位の計測を容易にするために魚体がまっすぐ入る容器が欲しいところですが、魚体が非常に大きいので容器も巨大な物が必要でしょう。

つまり、それにより保管できるところの制限もあり、なかなか難しいところです。

また、海外にある、ほかのタチウオ科魚類のタイプ標本を確認する必要もあるため、海外渡航費用が高額になります。そのため近年は、海外の研究者と共同で研究を行うことが多いようです。

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椎名まさと

魚類の採集も飼育も食することも大好きな30代。関東地方に居住していますが過去様々な場所に居住。特に好きな魚はウツボ科、カエルウオ族、ハゼ科、スズメダイ科、テンジクダイ科、ナマズ類。研究テーマは魚類耳石と底曳網漁業。

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