近年、持続可能な漁業で漁獲された海産物の需要が高まっています。
ペルーではアメリカオオアカイカの漁業について、MSC漁業認証取得に向けた改善プログラムが始まりました。アメリカオオアカイカはペルーにおける非常に重要な水産物であり、食用としてはもちろん沿岸部の雇用も生み出しています。
アメリカオオアカイカ漁業が今回のプログラムに組み込まれたことは、アメリカオオアカイカ漁業がより責任のある漁業へ移行していることを示すものです。
大型で成長が早い<アメリカオオアカイカ>
アメリカオオアカイカ(Dosidicus gigas)はアメリカオオアカイカ属に分類される頭足類。種小名に“gigas”と付くだけあって大型になるイカで、成長も早くて繁殖力が高いことが知られています。
生息域は広範囲に及び、アラスカからチリ南部に分布。味がよく、大型になることから食用として重宝されています。
ペルーにおける重要な水産資源
特にペルーでは重要な水産物であり、本種を対象とする小規模漁船が3000隻以上あるようです。
そのため、アメリカオオアカイカは食用だけではなく、ペルーの沿岸地域で雇用を生み出すという意味でも重要な存在となっています。
漁船から運ばれるアメリカオオアカイカ(提供:MSCジャパン)また、経済的意義も大きく、その輸出額は、2025年のペルー生産省によると8億ドルを超えるとのこと。主な輸出国として中国、韓国、日本、スペインがあり、ペルーにおける冷凍品輸出総量の約60パーセントを占めているようです。
持続可能な漁業
近年、持続可能な漁業で漁獲された水産物への需要が高まっており、企業も持続可能性に向けた動きを強めているといます。
アメリカオオアカイカ漁業に関しては、ペルーが以前より改善に取り組んでおり、ペルー国内における漁業の強化に取り組む12社から構成されるCAPECALがプロジェクトを指導してきました。
アメリカオオアカイカにおける生息状況と漁獲可能量は環境に大きく左右されることから、化学的モニタリングの継続と適切な漁獲管理が必要不可欠とされているのです。
改善プログラム開始
そんなペルーのアメリカオオアカイカ漁業ですが、「MSC漁業認証取得に向けた改善プログラム」を正式に開始。
この取り組みはガイドラインに沿って実施されるもので、第三者審査機関による定期的な検証を受けることが定められています。
今後プログラム開始から5年以内に、該当漁業がMSC漁業認証規格を満たしているのかの審査を受けることになります。
MSC漁業認証規格
MSC(海洋管理協議会)は1997年にロンドンで設立された、持続可能で適切に管理された漁業の普及に努める国際的な非営利団体です。
「海のエコラベル」(提供:MSCジャパン)持続可能で適切に管理された漁業のためのMSC漁業認証規格は世界で広がっており、2024年には世界70か国以上で20,000を超える品目にMSC「海のエコラベル」がつけられています。
このMSC「海のエコラベル」は、MSCの厳格な認証規格に適合した持続可能な漁業で漁獲された水産物のみに与えられる証です。
アメリカオオアカイカ漁業の持続可能性
今回、MSC漁業認証規格の認証の審査を受けることを目的に動き出した、ペルーのアメリカオオアカイカ漁業。このプログラムの開始はこの漁業の持続可能性に向けた大きな一歩とされています。
ペルーだけではなく日本を含めた海外でも食べられているアメリカオオアカイカ。同種を未来の世代にも残していくためにも、適切な管理が求められるでしょう。
(サカナト編集部)