日本で見られるほかのトンガリサカタザメ属
日本産トンガリサカタザメ属魚類としては、トンガリサカタザメRhynchobatus australiae Whitley 1939 も知られており、この種は筆者が知る限りでは琉球列島や鹿児島県内之浦(大隅半島)などから記録されています。
八重山諸島においてはサメ駆除により数年に一度水揚げがあるとのことで、2メートルを超える大物の水揚げもあるとか。
琉球列島産のトンガリサカタザメ属はトンガリサカタザメのみが知られているらしく、モノノケトンガリサカタザメは現在のところ琉球列島からの確実な記録はないようです。
トンガリサカタザメとモノノケトンガリサカタザメの見分け方
トンガリサカタザメとモノノケトンガリサカタザメの見分け方としては、トンガリサカタザメの背鰭は大きく、鎌状になるのに対し、モノノケトンガリサカタザメではそうならないこと、トンガリサカタザメの胸鰭には小さな白色斑が多数みられるのに対し、モノノケトンガリサカタザメはひとつの暗色斑とそれに付随する小さな白色の点がある、という特徴によって見分けることができます。
モノノケトンガリサカタザメ(撮影:椎名まさと)なお、従来トンガリサカタザメの学名はRhynchobatus djiddensis (Forsskal, 1775)とされてきましたが、本属の分類学的再検討の結果、この学名の種は西インド洋にのみ生息するものとされ、日本産のトンガリサカタザメとは別種とされています。
日本からはもう一種?
また、日本からはもう一種Rhinobatus laevis(Rhynchobatus laevis)という種がブロッホらにより記録されていますが、この種は背中側に白色点列が並ぶことと、胸鰭付近にある大きな黒色斑をとりまくように4つ前後の小さな白色斑があるという、いずれもモノノケトンガリサカタザメには見られない特徴があるので容易に識別できるとされます。
そしてこの種は日本からホロタイプ標本が得られているとされるものの、実際にはインドで採集されたものとされ(ブロッホは日本以外の東南アジアで採集された種についても、タイプ標本の産地を日本とするなど、タイプ標本の産地を誤ることがしばしばある)、残念ながら日本に生息する可能性は低いようです。
モノノケトンガリサカタザメを食べる
トンガリサカタザメ属の魚は東南アジアではしばしば水揚げされ、当地においては重要な食用魚として扱われています。
私も入手したモノノケトンガリサカタザメを食べてみることにしました。
まな板の上に……乗らなかったモノノケトンガリサカタザメ(撮影:椎名まさと)今回のモノノケトンガリサカタザメは比較的小型のものでしたが、それでもその全長は97.2センチメートルにもなり、我が家で捌いた魚としては巨大な部類です。
実際に捌いてみると身はきれいな白色をしていましたが、捌いたときは若干サメ特有のにおいがしており、エイの仲間というよりはサメの仲間に近い、と感じさせられました。
モノノケトンガリサカタザメのムニエル(撮影:椎名まさと)しかし、加熱するとそのにおいは感じられなくなり、ムニエル、バター焼きなどにしたところ身がやわらかく、美味しく食べることができました。