美味しいウマヅラハギ
ウマヅラハギはカワハギ科の魚のなかでも美味しい魚です。
従来はカワハギの代用という扱いをされ、カワハギよりも安価な魚でしたが、大きいからか、あるいは漁獲量が減少しているのか、現在はほぼ同じ値段で扱われています。
ウマヅラハギの造り(提供:PhotoAC)筆者も魚屋さんでウマヅラハギを販売しているのを見たら、以前よりもずっと高価になっていたのに驚きました。
刺身やお造り、唐揚げ、鍋物などにして美味しい魚で、食べる際には肝も欠かせません。そして鱗を取る手間も不要で、皮を引くだけなので、簡単に調理できるというのも魅力的です。
今年の干支である「ウマ」の名前がつくウマヅラハギを食べてみてはいかがでしょうか。
このほかの「ウマ」にちなんだ名の魚
ウマヅラハギやその近縁種以外にも、「ウマ」にちなんだ名前の魚がいくつか知られているため、最後にちょこっと紹介します。
水族館の特別展で、これらの魚を見ることがあるかもしれません。
ウマヅラアジ
ウマヅラアジScyris indica Ruppell, 1830はアジ科ウマヅラアジ属の魚です。
よく似た見た目で、長いこと同じ属に含まれていたイトヒキアジと比べると、頭部が直線的なのが特徴(イトヒキアジではやや膨らむ)で、この名前がついたのかもしれません。
ウマヅラアジ(提供:椎名まさと)大型になり美味しいアジですが、日本ではやや少ない種。釣りや市場よりも水族館のほうが見られる可能性が高い種といえるかもしれません。
というのも、幼魚は背鰭や臀鰭、腹鰭の鰭条が何本も伸び、格好いい姿であるからです。
観賞魚として輸入され、観賞魚店で販売されますが、成魚は80センチと巨大になり、そもそもそこまで成長させることは難しいので、一般アクアリストは手を出すべきではありません。
オオウミウマ
オオウミウマHippocampus kelloggi Jordan and Snyder, 1901は、ヨウジウオ科タツノオトシゴ属の大型種で高さ25センチになることもあります。
タツノオトシゴ属の魚はその上半部の形状から英語で「Sea Horse」と呼ばれており、英名も標準和名も「海のウマ」です。
オオウミウマ(提供:椎名まさと)このほか標準和名に「ウマ」とつくタツノオトシゴ属の魚にはクロウミウマというのがいます。この2種は主に尾輪と呼ばれる形質で見分けることになり、標本がないと見分けが難しいことがあります。
タツノオトシゴの仲間は水族館ではよく飼育されており、辰年の特別展だけでなく、午年の特別展でもその姿が見られるでしょう。
タツノオトシゴの仲間は中国などで漢方薬の需要があり、乱獲され絶滅のおそれがあることから、CITES(ワシントン条約)II類とされ、国際的な取引が規制されています。
その一方で、海水魚では珍しく比較的繁殖しやすいため、養殖個体が鑑賞用として出回っているのをよくみかけます。
ホースシューレザージャケット
ホースシューレザージャケットMeuschenia hippocrepis(Quoy and Gaimard, 1824)は眼の上の棘からもわかるようにカワハギ科の魚なのですが、この種はオーストラリア南部に広く分布する、日本には産しないMeuschenia属の魚です。
ホースシューレザージャケット(提供:PhotoAC)名前は、体側の模様が馬の蹄鉄(馬のひづめを保護するための金具)のように見えるところから来ているとされます。
体色がカラフルなので熱帯魚のように見えますが、やや低めの水温を好む温帯性の種で、日本で飼育している水族館は少ないです。
メガネゴンベ
ホースシューレザージャケットと同じく蹄鉄にちなんだ英名をもつ魚に、日本にも分布するゴンベ科のメガネゴンベParacirrhites arcatus(Cuvier, 1829)がいます。
メガネゴンベ(提供:椎名まさと)この種の場合、眼の後方に蹄鉄のような模様をもつことからHorseshoe hawkfishという名前がついていますが、近年はArc-eye hawkfishと呼ばれることが多いようです。
日本の水族館でもよく見る種で、家庭での飼育もできますが、性格はきつく、ほかの魚を攻撃することがあります。
ホースフェイスローチ
ホースフェイスローチAcantopsis dialuzona van Hasselt, 1823は、インドネシアやタイなどに生息するドジョウ科の淡水魚です。
ホースフェイスローチ(提供:PhotoAC)名前の由来はその名の通り、ウマのような顔をしているところからつけられたのでしょう。この種は飼育しやすく、熱帯魚店で出会う可能性がある種で、水族館でも展示されることがあるかもしれません。
「午」にちなんだ魚たち
干支に魚はいませんが、干支とされる動物たちにちなんだサカナはたくさんいます。
ぜひウマにちなんだ魚に会いにいってみてください。
(サカナトライター:椎名まさと)
参考文献
榮川省造. 1982. 新釈 魚名考.青銅企画出版.箕面.
畠中智康 ・佐藤 崇 ・宮崎佑介. 2024. 千葉県館山市布良沖から釣獲されたウマヅラハギの色彩変異個体. Ichthy, Natural History of Fishes of Japan, 49: 14?21.
小枝圭太・畑 晴陵・山田守彦・本村浩之編.2020.大隅市場魚類図鑑.鹿児島大学総合研究博物館.鹿児島市.
中坊徹次編. 2013.日本産魚類検索 全種の同定 第三版.東海大学出版会.秦野.
Smith M.M. and P.C. Heemstra (eds.) 1986. Smiths’ sea fishes. Springer-Verlag, Berlin.
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