「日本三大怪魚」と呼ばれる魚たちを知っていますか?
イトウ、ビワコオオナマズ、そしてアカメ──いずれも日本固有の淡水魚で、その巨大な体と希少性から“幻の魚”とも称されています。淡水魚好きの私にとって、「いつか自然の中で絶対に出会ってみたい!」と、幼い頃からずっと憧れ続けてきた魚たちです。
今夏のある1日。私は、この日本三大怪魚のひとつであるアカメの幼魚に出会うために奮闘しました。
成魚ではなく“幼魚”を探した理由は、私にとってフィールドワークの相棒であるタモ網でアカメを採集するという体験をしたかったからです。
車で8時間 淡水魚の聖地・四万十川へ
拠点の関西から、アカメの生息地である高知までは車で約8時間。長い移動の末、四万十川近くの宿に到着しました。
翌日から始まる“アカメ探し”を思うと胸が高鳴り、その日は興奮でほとんど眠ることができませんでした。
淡水魚の聖地、四万十川(撮影:川鮫工房)朝日が昇り、意気揚々とウェットスーツに着替え、淡水魚の聖地、四万十川へ飛び込みました。
まずは幼魚の隠れ家となるアマモ場を探します。しかし、テングヨウジやクロホシマンジュウダイなど他の幼魚には出会えるのに、アマモ場はおろか、アカメの姿は見当たらず。
沈んだ流木や水生植物の周りは、幼魚たちの絶好の隠れ家となっていた(撮影:川鮫工房)気を取り直し、胴長に履き替えて、事前に調べてきたポイントを巡ります。真夏の灼熱の暑さに加え、熱中症に怯えながら、私は女性特有の体調不良も発生してしまい、徐々に過酷なガサガサへと変貌していきました。
最後のポイントでアマモ場を発見!
日が落ち始め、タイムリミットも迫るなか、全ての望みをかけて最後のポイントへ向かいました。
現地に到着し、水面から川の様子を見ると、アマモらしき水生植物が底の方でユラユラと揺れているのを発見し、「ここなら会えるかもしれない!」と期待を胸に急いで胴長に着替えて川に入りました。
川に入ると、温水プールのような高水温だったので、水着に着替えることに。
正直アカメの幼魚云々よりも、この高水温の環境で生き物が生息しているのかと戸惑いながら水面から見ていた水生植物の元へ近寄ると、探し求めていたアマモ場であることがわかり、捜索を続けることにしました。
金色に光る小さな魚が!
日が傾き始め、次々と多種多様な幼魚が網に入る中、ふと小さく金色に光る魚が目に入りました。
ドキドキしながら網の中をじっくり覗き込むと…。その魚の眼が赤く光った瞬間に、探し求めていたアカメの幼魚だと確信しました。
成魚とは違い、幼魚時は金色の縞模様が美しい(撮影:川鮫工房)体長はわずか3cm。それでも、間違いなく憧れ続けたアカメでした。図鑑の中の存在だった魚が、今、手の中にいる──その事実に、1日の疲れが一気に吹き飛びました(笑)。
あの時の感動は今でも忘れられません。
欲を言うなら、水中世界で幼魚の泳ぐ姿をじっくり観察したかったのですが、観察ケースに入れて様子を見ていると、頭を下の方に向けて、小さな胸鰭でホバリングしながら、眼の視点はこちらに向けて、絶対に逸らさない。
頭を常に下へ向けるアカメの幼魚(撮影:川鮫工房)その様子から、きっと幼魚の間は、アマモ場などの水生植物などに身を隠しながら、餌となる生き物を捕食したり、あるいは、捕食されないように生活をしているんだろうなと想像が膨らみました。
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