幻の魚としても名高いイトウ。
数が少なく、生息地が限られていることから「日本三大怪魚」のうちのひとつとしても数えられている魚です。そんなイトウは、どのような生活をしているのでしょうか。
<幻の魚>イトウの特徴は?
「幻の魚」や「日本三大怪魚」としても名が挙がるイトウは、一体どのような魚なのでしょうか。その特徴や、人間との関わりを見ていきましょう。
国内最大級の淡水魚イトウ
イトウは、サケ科イトウ属に分類される淡水魚です。淡水魚としては国内最大級の種で、体長は1~2メートルに達します。「糸魚」と呼ばれるほどの、細長く大きな体が特徴です。20年近く生きることもある長寿な魚です。そのため成長速度がとても遅く、1メートル育つまでおよそ10~15年を要します。
大きな体と鋭い歯、強靭な顎を持つことから、魚へんに鬼と書く字があてられており、大きくなると魚を食べて過ごします。
サケには産卵すると死んでしまうイメージがあるかと思いますが、サケの仲間であるイトウは産卵しても死なず、一生のうちに数回産卵します。イトウの産卵時期は4~5月頃で、河川に遡上し、上流部の川底に卵を産み付けます。産卵期のオスには婚姻色が表れ、体全体が赤みを濃く帯びます。
アイヌ民族にも親しまれていた
北海道に生息しているため、アイヌ民族には身近な魚でした。アイヌ語では、チライ、トシリ、オペライペ、ヤヤッテチェㇷ゚、シアッチェプなどと呼ばれており、イトウが住んでいた河川の名称にはこれらの言葉が残っている地域があります。食用として利用されていただけでなく、丈夫な皮を衣服や履物に加工することもあったそうです。
アイヌの民間伝承には、鹿や人さえも吞み込んでしまう怪魚としてチライが登場。アイヌの勇者であるカンナカムイにより討伐されました。
なぜ「幻の魚」と呼ばれている?
イトウは以前まで東北や北海道全域で見ることができましたが、年々減少し、現在では北海道の限られた地域でしか見ることができません。絶滅の恐れが高いとして、環境省は本種を絶滅危惧 IB 類に、また国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストは最も絶滅の危険度が高い CR というランクに指定しています。
イトウは中・上流を産卵場所にしているので、河川にダムなどの人工物があると遡上が困難になってしまいます。また、河川の直線化も問題になっています。都市化に伴う河川の直線化による河川の生態系バランスの崩壊に伴って、イトウの稚魚の成育環境や産卵環境も崩れてしまいます。
北海道にある釧路川では、川の流れを復元する「川の蛇行復元事業」が実施されて以降、自然の豊かさを取り戻しつつあるそうです。
釣り人に人気なイトウですが、乱獲による減少を防ぐために、繫殖期にイトウを狙わないことが周知されています。釣ってリリースすればいいともいわれていますが、神経質な産卵期のイトウを釣ってしまうと、その後の産卵活動に影響が出る恐れがあります。
イトウが減少している理由や、個体数増加につながるような環境を知り、自分たちの手で守っていくことが大切です。
(サカナト編集部)