トウカイコガタスジシマドジョウの現状
トウカイコガタスジシマドジョウは静岡県西部、愛知県、岐阜県、三重県に分布していますが、国のレッドリストにおいては絶滅危惧IB類とされています。これは「絶滅危惧IAほどではないものの近い将来野生における絶滅の可能性が極めて高いもの」という区分です。
その一方で岐阜県においてはまだまだ数多く生息しており、トウカイコガタスジシマドジョウにとっては残された楽園ということもいえそうです。
しかし、残念ながらまだ安寧とはいえず、このときトウカイコガタスジシマドジョウを採集した生息地の周辺では河川の改修が行われていました。この仲間は河川の改修や用水路の近代化などには弱いところがあるようで、開発については注視していくべきでしょう。
また、採集場所の近辺においてはアメリカザリガニやウシガエルが見られただけでなく、少し離れた場所においてはオオクチバスやブルーギルといった外来生物が多く入っていたのも懸念事項です。
オオクチバス(提供:PhotoAC)とくにオオクチバスはトウカイコガタスジシマドジョウを捕食してしまうおそれがあり、このような小さな用水路にまで入ってきてしまうとたちまちトウカイコガタスジシマドジョウの生存が脅かされる可能性が高いのです。
トウカイコガタスジシマドジョウの飼育
さて、そんなトウカイコガタスジシマドジョウですが、いくつかのポイントを押さえさえすれば飼育自体は容易であり、丈夫でとても飼育しやすい魚といえます。
寿命は自然下では1年または2年とされるものの、飼育下においては、小さいわりには長生きする魚ともいえ、筆者の水槽でも6年以上生存しているものがいたりします。
トウカイコガタスジシマドジョウの飼育は容易だ(撮影:椎名まさと)しかし、それほど丈夫な魚さえ、自然下では絶滅のおそれがあるというのは残念な話です。
飼育上のポイントとしては、まず、できるだけオイカワやカワムツ、タカハヤといった魚との混泳を避けること。コガタスジシマドジョウというのは、これらの魚と混泳させると餌の取り合いに負けることがあるからです。
またナマズなどのように肉食性の魚はトウカイコガタスジシマドジョウを食べてしまうこともあるため、これもいけません。
オイカワなどとの混泳は避けたい(撮影:椎名まさと)筆者はミナミメダカやゼゼラ、カマツカなどと混泳させています。これらの魚もオイカワなどと混泳させると、なかなか餌をとれず餓死してしまうことがあるタイプの魚です。
次に、その餌についても工夫が必要ということです。ドジョウの仲間は水面に長いこと浮かんでいるようなフレークフードはあまり食べられないので、底に沈むタイプの餌を与えるようにします。
筆者は市販されている配合飼料のほか、通信販売であゆ用配合飼料を購入して与えています。また野菜類のペースト(豆類やかぼちゃなど)なども併用して与え、栄養のバランスのかたよりをなくしましょう。
トウカイコガタスジシマドジョウは小型水槽でも飼育できる(撮影:椎名まさと)その次に、飼育環境をしっかり整えるということです。ほかのドジョウ科魚類と同様に砂に潜る習性が強いため、砂をしっかり敷いて寝床を作ります。砂は川砂のような細かい粒のものがおすすめです。
生息環境を考えると柔らかい泥などが適していますが、濁りが取れにくく鑑賞という意味でも適しません。また、意外と飛び出す事故も多いので、水槽にはしっかりとフタをしてあげましょう。
日本産シマドジョウ属魚類の多くが絶滅危機
最後に、自ら採集して飼育するということです。
これは日本産のシマドジョウ属魚類はその多くが絶滅の危機に瀕しているためで、販売目的の乱獲により個体数が大きく減少するのを防ぐためです。
実際にペットショップなどで販売されているシマドジョウ属魚類を見ると、適切に餌が与えられていないのか、量が少ないせいなのか、ガリガリ、ぺっらぺらの個体を多く見ますが、そのような個体は残念ながら長生きさせるのは難しいです。
トウカイコガタスジシマドジョウが産する岐阜県内の河川。ぜひフィールドへ赴こう(撮影:椎名まさと)実際にフィールドに赴いて生息環境を理解することによって、より飼育の腕が上達するというものです。
もちろん、獲りすぎないように注意し、飼育目的であれば少数を大事に持ち帰るようにします。そして飼いきれなくなっても野外に放つことなど決してしてはいけません。
トウカイコガタスジシマドジョウとこれからも遊ぶ
トウカイコガタスジシマドジョウは、筆者が初めて採集したコガタスジシマドジョウということもあり、筆者にとっては特別な魚です。
こんな美しく、かわいい、不思議な魚がまだまだ生存でき、みながこの素晴らしい魚と遊べるよう、市民も行政も、アクアリストも関係なしに、みなでしっかり生息環境の保全を真剣に考えて欲しいと思います。
(サカナトライター:椎名まさと)
参考文献
相澤裕幸.1981. 東海地方から得られたCobitis taenia. 魚類学雑誌.28(2); 187‐192.
向井貴彦(2019)、岐阜県の魚類 第二版、岐阜新聞社
中島 淳・洲澤 譲・清水考昭・斎藤憲治.2012.日本産シマドジョウ属魚類の標準和名の提唱.魚類学雑誌,59(1):86‐95.
中島 淳・内山りゅう(2017)、日本のドジョウ 形態・生態・文化と図鑑、山と渓谷社
Saitoh K. and H. Aizawa. 1987. Local Differentiation within the Striated Spined Loach (The striata Type of Cobitis taenia Complex). Japanese Journal of Ichthyology 34(3); 334‐345.
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