瀬戸内海東部のイカナゴについては近年、漁獲量が減少傾向にあり、特に2017年以降は3千トン未満という低水準が続いています。
イカナゴ減少の原因については、海がきれいになりすぎた結果、餌となるプランクトンが減り、イカナゴの産卵量が低下したことが指摘されてきました。
しかし、餌環境の悪化や産卵量の減少は、通常であれば時間をかけて徐々に進行するとされています。そのため、2017年から激減したイカナゴの漁獲量については、明確な理由はわかっていませんでした。
そうした中で、広島大学大学院統合生命科学研究科の冨山毅教授らから成る研究グループは低水準の要因を調査し、イカナゴ激減の主要因を明らかにしました。
この研究成果は「Marine Environmental Research」に掲載されています(論文タイトル:Local environmental changes boost predation risk in foragefish: application to the sand lance in the eastern Seto Inland Sea)。
重要な水産資源「イカナゴ」
イカナゴはイカナゴ科に分類される小型魚。各地で漁獲があり、食用として重宝されています。
特に瀬戸内海東部の大阪府、兵庫県、香川県では重要な水産資源であり、3~4月に漁獲されるイカナゴの稚魚を原料とした「くぎ煮」は全国的にも有名です。
イカナゴのくぎ煮(提供:PhotoAC)しかし、瀬戸内海東部におけるイカナゴの漁獲量は減少傾向にあります。2016年までは年間1万トンを維持していたものの2017年に激減。現在まで3千トン未満という低水準が続いています。
イカナゴ減少の理由
イカナゴの漁獲量減少についてはこれまで「海がきれいになりすぎたこと」が指摘されてきました。
具体的には、海がきれいになったこと(栄養塩濃度の低下)が原因で、イカナゴの餌となるプランクトンが減少。これによりイカナゴの産卵量が減少したという考えです。
イカナゴ(提供:PhotoAC)しかし、餌環境の悪化や産卵量の減少は、通常であれば時間をかけて徐々に進行するため、2017年にイカナゴの漁獲量が激減した原因について、はっきりとした理由はわかっていなかったといいます。
そこで、広島大学大学院統合生命科学研究科の冨山毅教授らから成る研究グループは低水準の要因について調査を実施しました。
2016年に捕食者が増加
研究では「イカナゴを捕食する魚の増減に着目したデータ解析」「水温上昇と餌不足がイカナゴの行動に及ぼす影響を調べる飼育実験」が行われました。
イカナゴは春~初夏にかけて餌をたくさん食べ、夏に潜砂し冬まで眠る「夏眠」という習性を持ちます。そのため、イカナゴは夏眠までに十分な栄養を蓄えられるか否かが、生き残る上で重要だといいます。
そこで、データ解析では1~7月における魚食性魚類14種(ハモやヒラメなど)の漁獲情報を元に、捕食者の分布状況の変化を調査。解析の結果、2015年以前と2016年以降では状況が大きく異なることが判明しています。
これにより、2016年から捕食者が急激に増加していることが明らかになったのです。
餌不足になると夏眠が遅くなる?
飼育実験では「餌が十分な条件」「餌が不足した条件」の2パターンでイカナゴの飼育が行われました。
それぞれの行動の違いについて比較を行った結果、餌が不足したイカナゴでは夏眠が遅れることが判明。この影響は水温上昇による影響よりも大きく、餌が不足しているとイカナゴは栄養を十分に蓄えるために長期間活動する必要があることが示唆されました。
これは、イカナゴは捕食者と遭遇する機会が増え、捕食される危険性が高まっていることを意味しているといいます。
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