東アジアにおける重要な食用魚「ニホンウナギ」。
近年は、生息環境の悪化などで資源量が減っており、ウナギはIUCNによって絶滅危惧種に指定されています。これまで日本では資源を回復させる取り組みの1つとして、ウナギの放流をおこなってきました。
しかし、資源量が豊富な河川への放流は天然ウナギと競合してしまうことから、養殖ウナギの成長に好ましくないころがわかってきています。
そこで注目されているのが、ダムなどの河川横断構造物の上流域です。
重要な食用魚「ニホンウナギ」
ニホンウナギ Anguilla japonica は日本をはじめ、東アジア諸国で重宝される食用魚です。
ニホンウナギ(提供:PhotoAC)しかし、近年は稚魚であるシラスウナギの乱獲や生息環境の悪化などにより、資源量が減少。現在、ニホンウナギは国際自然保護連合(IUCN)により絶滅危惧種に指定されています。
ウナギの放流のデメリット
こうした背景から、ニホンウナギの資源を回復した取り組みが求められており、日本ではその一環として各地で養殖ウナギの放流をおこなってきました。
しかし、近年の研究によると天然ウナギが豊富にいる河川は、天然ウナギと競合していまい、養殖ウナギの生存・成長に好ましくないことがわかっています。
そこで注目されているのが、天然ウナギがほとんどいないダムなどの河川横断構造の上流域です。
琵琶湖のウナギ
琵琶湖は滋賀県にある日本一大きな湖です。ここでは、淀川を通じて海からウナギが遡上していました。
さらに、琵琶湖の下流部に位置する瀬田川では、琵琶湖から海へ下るウナギを対象にした漁業が行われ、20世紀中頃で年間20~55トンの漁獲量があったといいます。
しかし、1964年に淀川中流で天ヶ瀬ダムが建設されたことをきっかけに、天然ウナギの遡上が困難になってしまいました。
琵琶湖(提供:PhotoAC)そこで、琵琶湖では現在に至るまで、漁業者による養殖ウナギの放流を実施。商品価値の高い大型のウナギが漁獲され、地域経済の活性化に貢献してきました。
こうして、琵琶湖は養殖ウナギの生育に良好な環境であると考えられてきた一方、科学的な根拠は示されておらず、放流後、何年で漁獲サイズになるのかなど詳細もわかっていなかったといいます。
養殖ウナギと漁獲されるウナギを調査
そうした中で、近畿大学大学院農学研究科の髙作圭汰氏らの研究グループは、琵琶湖に放流する前の養殖ウナギと春~夏に琵琶湖で漁獲されるウナギを入手。性別やサイズ、年齢などの調査を行いました。
その結果、放流前の養殖ウナギの年齢は1~2歳であり、多くが30センチ未満の雌雄が決まっていない個体であることが判明。30センチ以上の個体は概ねオスになっていたようです。
ウナギ(提供:PhotoAC)琵琶湖で漁獲されたウナギに関しては4~6歳が主群であり、大きさは全長40~80センチほど。すべてメスに分化していることが明らかになっています。
このことから、性別が決定していない小型のウナギが、琵琶湖へ放流された後にメスに分化し、放流後3~4年で漁獲サイズに成長することが示されました。
“銀ウナギ”に類似した個体も確認される
さらに研究では、琵琶湖における養殖ウナギの成長速度は他の水域のウナギと比較して良好であること、養殖場で成長が好ましくなかったウナギが琵琶湖への放流後に大きく成長することがわかっています。
また、琵琶湖で漁獲された一部の個体において、体色や生殖腺の発達段階で、産卵親魚(銀ウナギ)に類似した特徴を確認。このことから、琵琶湖のような湖沼は養殖ウナギを大型のメスに生育できる環境で、良質な卵の確保につながる可能性が示唆されたのです。
ウナギの資源量回復に貢献
今回の研究により、ダムなどの河川横断構造物の上流域に養殖ウナギを放流することで、ウナギ資源を増やせる可能性が示されました。
この成果は、資源回復を目的とした放流施策の立案に貢献できるかもしれません。
この研究成果は「FISHERIES SCIENCE」に掲載されています(論文タイトル:High growth and silvering status of cultured Japanese eels (Anguilla japonica)stocked into Lake Biwa, Japan)。
(サカナト編集部)