海は神秘的な美しさに満ちています。
その中で私の心を無条件でつかむ生き物が存在します。それがハタタテハゼです。
小さい体に無限の美しさを秘めたハタタテハゼたち
ハタタテハゼは暖かい海に生息し、華やかな色彩のサンゴ礁を生息地としています。その体長は約5〜10センチです。名前の由来である「ハタタテ」は、背中から伸びる細長い背鰭が旗のようにパタパタ揺れる様子から来たものです。
彼らの最大の魅力はその独特な色合いと動きです。ハタタテハゼに初めて出会ったとき、その色彩の美しさとユニークなスイミングスタイルに思わず息を呑みました。
透き通る乳白色の体には、体の中心から鮮やかな赤色が広がり、尾びれにかけて徐々に褐色・黒色へと変化する、まるでドレスのような美しいグラデーションが施されています。その美しさは体だけでなく顔まで及んでおり、レモンイエローの淡い色がまた一層その美しさを引き立てます。
ユニークな泳ぎ方をするハタタテハゼ
そして、彼らのユニークなスイミングスタイルにも魅了されます。ハタタテハゼは遊泳タイプのハゼであり、他の多くのハゼとは違い、泳ぐ際に底面に体をつけることはありません。彼らはホバリング(浮遊)をしています。
一般的な魚の泳ぎを「スイー」という音で表現するなら、ハタタテハゼの泳ぎは「ピュンピュン」と水中を浮遊する表現がしっくりきます。何かを感じ取るとすぐに巣穴に引きこもる、臆病な性格もまた彼らの特徴的な一面です。急に隠れる彼らの挙動はコミカルで、それがまた見ていて面白いのです。
ハタタテハゼと出会い海の魅力を知る
私は、スキューバダイビングでハタタテハゼに出会いました。
独特な特徴をもつハタタテハゼと出会ってから、私は海の奥深さと美しさに魅了されました。「地球にこんなにも美しい生き物がいるんだ」という事実に衝撃を受けました。その日から毎日、魚の図鑑を眺めるようになり、ダイビングへの興味もどんどん深まっていきました。
私にハタタテハゼをはじめとする海の魅力を教えてくれたのは、座間味島で長年ダイビングのガイドをつとめてきた方でした。この方のおかげで「魚・海・ダイビング」を通して、知ることの大切さに気づきました。
もしあの時ハタタテハゼが目の前にいなかったら、もしあの時ハタタテハゼの存在を知らなかったら、
もしあの時ハタタテハゼの美しさに気づけなかったら、私は全てをかけて愛するものに出会えなかったかもしれません。
1匹の魚を知ることで、私の人生は豊かになりました。私も、その海の尊さを他の誰かに伝えたいと思っています。
(サカナトライター・百葉)