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「おじさん」と呼ばないで! 名前のおかげで知名度抜群の魚<オジサン>の困った事態

オジサンはそのユニークな標準和名により、テレビコマーシャルにも登用されるなど高い知名度を誇る魚です。しかし、その「知名度」により困った事態も起こってしまっています。

今回はオジサンについてご紹介します。食用になるほか、意外な利用法も?(なお、ここでは標準和名をのぞく地方名や俗称などは原則ひらがな表記にしています)。

オジサンとは

高知県で釣ったオジサン(撮影:椎名まさと)

オジサン(学名 Parupeneus multifasciatus)はスズキ目・ヒメジ科・ウミヒゴイ属の魚です。ヒメジ科の魚は下顎に2本のひげがあり、本種もその特徴を有しており、そこから「オジサン」と名付けられたようです。

オジサンの特徴としては、背鰭の下と尾柄に黒色の太い横帯があること(その前方にも薄く細い横帯があることが多い)、ひげの色彩は明るい黄色っぽい色であるなどの点で、日本に分布しているほかのウミヒゴイ属の魚と見分けることができます。

このオジサンは頻繁に色彩を変える魚としても知られており、白っぽいもの、赤いもの、濃い紫色のものまで見られます。全長は20cmくらいの個体が多く、ホウライヒメジウミヒゴイなどよりも小型の種といえます。

オジサンの分布

三重県尾鷲市の定置網で漁獲されたオジサンの幼魚(撮影:椎名まさと)

オジサンは熱帯性の魚で、日本では主に琉球列島や小笠原諸島に分布しています。基本的に熱帯性の魚であるオジサンですが、四国沿岸などでも成魚が見られます。

このほか夏から秋になると、房総半島以南の太平洋岸や山口県日本海岸などで稚魚が出現しますが、このような個体は越冬できないものと思われます(死滅回遊魚)。筆者は8月の房総半島で銀色の幼魚を、11月には三重県尾鷲で定置網で漁獲された個体を目にしています。

海外では太平洋の熱帯域に広く分布していますが、インド洋における分布域はクリスマス諸島以東に限定されます。またハワイ諸島に生息するものは日本やそのほかの地域のものと色彩が異なるように見えます。

オジサン以外のヒメジを「オジサン」と呼ばないで!

ホウライヒメジ。つい「おじさん」と呼んでしまうかもしれないが……(撮影:椎名まさと)

オジサンという名前はスズキ目・ヒメジ科・ウミヒゴイ属のある種につけられる標準和名です。標準和名というのは原則ひとつの種にひとつ、与えられるもので、複数の魚にひとつの標準和名は与えられません。

しかしながら、しばしばオジサン以外のヒメジ科魚類、例えばアカヒメジホウライヒメジオキナヒメジなども総称して「おじさん」と呼ぶことがあり、現在は「おじさん=ヒメジ科魚類の総称」という感が強くなってしまっています。

このようにヒメジ科のほかの種を「おじさん」と呼んでしまうと、混乱を招くおそれがありよくありません。

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椎名まさと

魚類の採集も飼育も食することも大好きな30代。関東地方に居住していますが過去様々な場所に居住。特に好きな魚はウツボ科、カエルウオ族、ハゼ科、スズメダイ科、テンジクダイ科、ナマズ類。研究テーマは魚類耳石と底曳網漁業。

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