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小笠原に集まる<ザトウクジラ>の観察記 間近で見る大迫力の命のショー

クジラの中でも特に有名なザトウクジラ。実は2〜3月に日本の小笠原諸島周辺にもやってきます。そこでは大迫力の命のショーが行われているのです。

今回は筆者が実際に小笠原諸島父島を訪れ目撃したザトウクジラたちの姿をご紹介します。

小笠原諸島へと回遊してくるザトウクジラ

ザトウクジラは、成体で体長13〜14メートル、体重30トン(人間約500人)ほどの大きさになるナガスクジラ科のヒゲクジラの仲間です。

ザトウクジラは2月から春先にかけて北の海から小笠原諸島へ回遊してきます。彼らは夏に餌の豊富な高緯度の冷たい海で餌を食べ、冬に低緯度の暖かい海で交尾・出産・子育てなどの繁殖活動をするのです。

つまり、小笠原諸島には子育てのために来ているわけです。

ザトウクジラ(撮影:みのり)

研究により、北太平洋では「東部北太平洋群」「中部北太平洋群」「西部北太平洋群」の3つのグループがあることがわかっています。

東部北太平洋群はリベヤヒヘド諸島を含むメキシコ周辺を繁殖場とし、カリフォルニア周辺を餌場としています。中部北太平洋群はハワイを繁殖場とし、アラスカ周辺を餌場に。

西部北太平洋群は、小笠原、沖縄、フィリピンを繁殖場とし、餌場はオホーツク海からベーリング海周辺と考えられていますが、詳細は不明です。今回の記事で観察したザトウクジラはこの西部北太平洋群のものです。

展望台からも見えるザトウクジラ

今回筆者は、小笠原諸島父島にあるウェザーステーション展望台と、船の上の2か所からザトウクジラを観察しました。

「ホエールウォッチングは船に乗る必要があるのでは……?」と考える方もいると思いますが、ここでは船に乗らなくてもこのウェザーステーション展望台から簡単に観察することができるのです。

ザトウクジラは白波とは明らかに違う、白い煙のようなものを上げます。これが「ブロウ」と呼ばれる行動、いわゆる潮吹きです。ブロウはザトウクジラがどこにいるかを探す際の目印となります。数十秒の間に3〜4回ほど呼吸して潜水します。

クジラのブロウ(撮影:みのり)

潜る際、尻尾を見せずに潜る場合と、尻尾を高々と上にあげて潜水する場合に分かれます。尻尾を見せず、背びれをはっきり見せて潜る行動を「ペダンクルアーチ」と言います。

また尾ひれの模様を見せて潜ることを「フルークアップ」、見せないで潜ることを「フルークダウン」といいます。

フルークアップ(撮影:みのり)

間近に迫るザトウクジラ

展望台からもザトウクジラは見れましたが、とはいえやはり距離は遠く、息遣いの音や迫力はあまり感じられません。

展望台から観察した数日後にボートに乗り込み、直接ザトウクジラを探しに海へ出ることに。

間近に迫るザトウクジラ(撮影:みのり)

最初は見れるかな……と不安に思っていましたが、いざ海に出るともうどこにカメラを向ければいいのかわからないほどたくさん観察することができました。

手段を選ばないオスクジラ

私が見たザトウクジラはほとんどが親子でした。しかし、たまにそんな親子を狙う悪いオスクジラもいます。

子クジラそっちのけで母クジラに猛アピールするオス。これはエスコートと呼ばれる行動です。人間ではもちろんありえない行為ですが、自然に生きるクジラが自分の遺伝子を残すための至極真っ当な生態なのです。

子クジラ(左)とエスコートするザトウクジラ(右)(撮影:みのり)

今回は見れませんでしたが、オスのザトウクジラ同士の争いも時々見れるそうです。

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みのり

みのり

センス・オブ・ワンダーを大切に

北里大学海洋生命科学部卒・元水族館飼育員。魚類・クラゲはもちろん、イルカの飼育も担当。非常に多趣味で、生き物観察やフィールドワークはもちろん、映画や読書、ゲームも好き。多趣味ゆえの独自の視点、飼育員視点を交えつつ、水生生物やそれを取り巻く自然環境、文化、水族館の魅力を発信していきます。

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