ソウシハギはフグ目カワハギ科の魚で、カワハギ科の最大種でもあります。このソウシハギは近年メディアにもよく出るようになりました。
しかし、それは「猛毒魚」として恐れられるような報道が中心です。ではその実際はどうなのでしょうか。
今回は毒魚として、食用魚として、そして観賞魚としてのソウシハギにスポットをあててみたいと思います。
ソウシハギってどんな魚?
ソウシハギはカワハギ科に属する大型の魚。この項では、ソウシハギについて紹介します。
ソウシハギはカワハギ科魚類としては世界最大
ソウシハギ(学名Aluterus scriptus(Osbeck, 1765))はフグ目・カワハギ科・ウスバハギ属の魚。全長1メートルを超える大きさにまで育ち(普通は70センチほど)、カワハギ科魚類としては世界最大です。
大きな特徴は細長い体と長い尾鰭、それに体側に入る青い模様です(ただし青い模様は不明瞭なことも多い)。成魚の背鰭棘はカワハギやウマヅラハギよりも細くアンテナ状で細長いのも特徴的ですが、これは市場などに上がるときに切られて短くなっていることも多いです。
ソウシハギという名前の由来については「草紙に線や点を書きなぐったような体表からいう」とされていたこともありましたが、榮川(1982)によれば、上記の説は誤りであろうとして、「藻姿」、つまり海藻の中にいると海藻と見分けがつかないような見事な擬態をするから「ソウシハギ」ではないかとしています。
近年、ソウシハギ関連のネットニュースなどが流れるとそのコメント欄に「人が死ぬからソウシキハギ」などと書かれることがありますが、これは「おふざけ」レベルの誤りです。
ソウシハギによく似ている<ウスバハギ>
ソウシハギが含まれるカワハギ科・ウスバハギ属の魚は大西洋に分布する2種、日本を含む全世界の暖かい海にすむものが2種、合計4種が知られています。
ウスバハギ(学名Aluterus monoceros (Linnaeus,1758))はソウシハギによく似ていますが、尾鰭がやや短く、体側の斑紋はソウシハギのように目立つものではありません。
日本に分布しないウスバハギ属の魚でソウシハギによく似るのが、大西洋の広域に生息するヒメソウシハギ(学名Aluterus heudelotii Hollard, 1855)という種です。
ヒメソウシハギはソウシハギと同じく、体側に青い斑点が並んでいますが、ソウシハギの背鰭軟条数と臀鰭軟条数はそれぞれ43~49、46~52なのに対し、ヒメソウシハギでは背鰭軟条数と臀鰭軟条数はそれぞれ36~38、39~41と少なく見分けられるようです。
流れ藻につくソウシハギ
このソウシハギは世界ではインド~中央太平洋域のみならず、東太平洋や大西洋にも分布しており、カワハギ科魚類では珍しく、ほとんど世界中の海に見られます。日本においても温暖な海域に広く見られますが、北海道でも採集されています。
この広域な分布を実現するのがソウシハギの習性です。ソウシハギは稚魚や幼魚が流れ藻(およびそのほか浮遊物)につく習性があります。
流れ藻は1~数か月の間海洋を漂い、海流にのってかなり長い距離を移動しますが、これによりソウシハギは世界中の暖かい海でその姿を見ることができるといえそうです。実際に夏から秋にかけて表層を漂う流れ藻では、全身が真っ黒であったり、茶色の体に黒い点があったりするソウシハギを見ることができます。
同様にウスバハギ属のウスバハギや、ハクセイハギ属のハクセイハギなども流れ藻にのって広範囲に移動するタイプの魚です。
カワハギ科魚類の分布特性としてはインド~太平洋域に種が多く、大西洋にも固有の種が何種か見られますが、東太平洋の南北アメリカ西岸にはその地域固有のカワハギ科魚類というのは存在せず、太平洋の広い範囲に見られるソウシハギ、ウスバハギ、ハクセイハギが見られる程度です。