「お食い初め(おくいぞめ)」は生後100日の子どもに与える食事のことで、子どもが一生食べ物に困らないよう願いを込めた行事です。
このお食い初めに用いられる魚介類にはマダイやタコがありますが、他にもよく用いられる魚がいます。
それがカナガシラという魚。ではなぜ、このカナガシラが縁起物として扱われているのでしょうか?
カナガシラとは
カナガシラはホウボウ科カナガシラ属に分類される魚です。浅海から深場の砂泥底に生息し、釣りや定置網、底引き網など様々な漁法で見ることができます。
本種はカナガシラ属の中では大きくなることに加え、味も良いことから食用になりますが、近縁種のホウボウと比較すると知名度が低く、価格も比較的お手頃です。
近縁種のホウボウとしばしば混同されますが、ホウボウよりも鱗が粗くざらざらしていることや胸鰭内側の色彩の違いにより区別することができます。
なお、カナガシラ属の魚は日本から11種が知られており、いずれも形態がよく似ることから区別は容易ではありません。
お食い初めにカナガシラを食べる理由
カナガシラはホウボウに比べるとマイナーな魚ですが実はある行事には欠かせない魚といいます。
カナガシラを漢字で書くと「金頭」。これはカナガシラの頭部が非常に硬いことに由来した名前です。カナガシラが縁起物として扱われる理由は、この硬さにあります。
生後100日に行うお食い初めは「子どもが食べ物に困らないように」という願いが込められています。カナガシラを用いる理由としては諸説あるものの、一説には本種の頭部が非常に硬いことから、「子どもの歯が丈夫に育つように」という意味が込められているといいます。
長崎ではカナガシラを節分に食べる
カナガシラが縁起物として活躍するのはお食い初めだけではありません。
長崎県ではカナガシラを「ガッツ」と呼んでおり、主に底引き網で漁獲されています。カナガシラの顔を正面から見ると鬼の顔に見えることから、食べると邪気を払うと言われているほか、金運が上がるとして長崎県の節分にはなくてはならない存在です。
節分の日には、カナガシラの価格が通常の数倍にまで跳ね上がるといいます。
ホウボウの影に隠れているカナガシラですが、味もよく、地域や行事によっては縁起物として重宝されているのでした。このように歴史や文化を知るだけで魚を食べる時の有難みが増しますね。
(サカナト編集部)