皆さんは最近、水族館に行っていますか?
私は水族館巡りが趣味なので、かなり頻繁に水族館に行っています。地元の水族館はあまり気負わずに行けて身近に感じることもありますよね。
日本にはありがたいことに、全国各地に水族館があります。また言わずもがな各地の水族館には、飼育している動物の種類や建物の構造、水族館の展示を通して伝えたいメッセージが違うなどそれぞれの特色があります。
改めて水族館について考えてみると、生きている海洋生物・水生生物に陸で会えるという、かなり画期的な場所ですよね。水族館のアイドルといえばイルカやシャチ……近年だとクラゲブームも重なり、かわいらしく愛嬌ある生き物が挙げられることも多いかと思います。
では、「サメ」は……?
私は海洋生物の中ではサメが一番大好きなので、毎回サメ水槽を目指して館内を練り歩くのですが、皆さんはいかがでしょうか。今回はそんな「サメ」の飼育種類数日本一の水族館・アクアワールド茨城県大洗水族館(略称:アクアワールド・大洗)の魅力をたっぷり紹介していきます。
インタビューから<サメの聖地>の実態に迫る
今回は、9月中旬にアクアワールド茨城県大洗水族館にお邪魔しました。
学生の夏休み期間が明けた時期なので、比較的館内が空いているかと思いこの時期に訪れたのですが、館内は学校の遠足で来ている様々な年代の学生の皆さんで大いににぎわっていました!
訪れる際の混雑状況については、アクアワールド茨城県大洗水族館のXで駐車場の満車情報を更新しているのでチェックしてみましょう。
アクアワールド茨城県大洗水族館の歴史
アクアワールド茨城県大洗水族館は、歴史ある水族館の一つです。
茨城県は1951年、夏季のレジャーの代名詞である海水浴をさらに推し進め、多様な楽しみ方ができるようにと大洗県立自然公園を指定。国内でも数少ない水族館も併設されることになり、1952年に現在の姿の前身となる水族館「県立大洗水族館」が設立されました。
県立大洗水族館は海水浴に訪れるお客さんにも人気を集めましたが、増床を理由に1970年に一度閉館し、同年11月頃に「海のこどもの国大洗水族館」として新たに開館。日本で初めてのペンギンショーを開催した水族館として、国内でさらなる注目を集めたそうです。
その後、1981年に「大洗水族館」に改称し、20年を経て2001年に施設の老朽化に伴い、新たな水族館の建設のため閉館。2002年に全施設や展示内容をフルリニューアルする形で現在の「アクアワールド茨城県大洗水族館」としてオープンしました。
現在はサメに特化した水族館として有名なアクアワールド・大洗ですが、そのルーツは2002年のリニューアルオープンに合わせ、豊かな大洗の海にすむ様々なサメたちに焦点を当てようと決めたことによるそうです。
チャレンジ精神溢れる展示を続ける水族館
このような歴史を経て、アクアワールド・大洗は現在にいたります。個人的にも、アクアワールド・大洗は日本初のペンギンショーを始めた頃から変わらず、挑戦心にあふれている水族館だと感じています。
様々な生物の研究という面では、独自に展示している生き物の観察による生態調査も行われていますが、サメに限らず、組織を超えた共同研究などを積極的に行われており、館内の展示に対しても試験的な方法による展示に進んで挑戦しています。
独自発行されている機関誌「Sea遊」を1年に2回ほどのペースで発行するなど、情報発信にも熱心な水族館と感じました。
シンボルマークは「サメ」 大水槽が迎えてくれる
入館は玄関口のゲートから。海岸に沿うように広がった水族館は横に広く、中央にそびえる大きなシンボルマークのサメが輝いて見えます。
外観や入場ゲート付近から既にサメがいて、ワクワク感が刺激されるシックな面構えの水族館ですね!
開園時間ぴったりに到着したので、さっそく入館していきましょう!
チケットを購入し入館ゲートを通ると、カスザメなどを飼育している横長のかなり大規模な水槽が見えてきます。これは館内の屋外に設置されている水槽の断面部分で、じっと見ていると水面がゆらゆらと揺れている様子が分かります。
この水槽では、機械を使用し人工的に波の動きをつくりながら、潮の満ち引きも再現しているそうです。
一般的に、水槽の水生生物たちは、本来の生息地とは違い、日々変わる海洋の環境や海中の水の流れなどを体に受けることがない、人工的に作られた環境でくらしています。
一方、この水槽は、生物としての本来の姿を少しでも観察しやすくなっており、様々な水槽の条件下で生き物たちの様子を観察することで、生き物たちが持つ能力や生態を知ることができます。
早速、研究施設としてのアクアワールド・大洗の姿を垣間見ることができますね。
水量約1300トンの「出会いの海の大水槽」
館内へ進んでいくと、暗い順路を示す幻想的な光が……。
なにやらワクワクするような予感を抱きながらそのまま歩くと、アクアワールド・大洗が誇る水量約1300トンの「出会いの海の大水槽」に到着します。
ただ窓のように横穴があいているというものではなく、ガラス面が上に向かってカーブするようにつくられており、手すりを握りながら水槽を覗いていると、大きな水槽の中に入り込むような光景を見ることができます。
順路を進むと、改めて正面から大水槽を見ることができます。約80種・2万5000匹の生き物を観察でき、水族館のお膝元である大洗沖の海にすむ生物を、より近くで楽しむことができます。
大洗沖には黒潮と親潮がもたらす豊かな環境がある
大洗沖は日本の南岸に沿って強く速く流れる「黒潮」と、千島列島に沿って南下しゆるやかに日本の東まで達する「親潮」の流れがぶつかっています。
ぶつかると言っても、黒潮と親潮が直接ぶつかりあって水流が激しく乱れている……という訳ではなく、水質の異なる両者が混ざりあい、プランクトンの発生と増殖がしやすい環境を作り出しているおかげで、生態系的に非常に豊かな場所となっています。
アクアワールド・大洗は、そんな海に集まってきた多くの種類のサメを飼育・研究しており、地元の海を知り、その海に住む生き物を知るきっかけ作りを行っていると言えるでしょう。
2024年3月にリニューアルされた水槽「くらげ365」
この先は、水族館らしい深く暗い海中のような空間が続きます。
個人的には、壁や暗闇の色である黒と、水槽が鈍く光る時の青色、そこに鋭く突き刺さるように輝く太陽やライトの光の白色が合わさっている空間こそ、“水族館らしさ”を強く感じ、何度も水族館に行くうちに薄れていく「水の中にいることを特別と感じる気持ち」を改めて思い起こさせてくれて、とってもワクワクします。
水族館は生き物を見るだけの空間ではなく、館内の空気や雰囲気を楽しむ場所でもあるんだと、アクアワールド・大洗を訪れて強く思いました。
館内のゆったりと流れる時間に呼応するように、クラゲたちもゆっくりと泳ぎ回っています。中でも目を引く「くらげ365」と名付けられたこの空間は、2024年3月20日にリニューアルされた水槽です。
クラゲは成長段階により形状が大きく異なります。
そんなクラゲたちが365日を過ごしていくライフサイクルを表現しているこの水槽は、プロジェクションマッピングによって幻想的にライトアップされるとともに、季節ごとに変化する香りの演出によって、他では味わうことのできない非日常を楽しむことのできる場所となっています。
また、同じエリアにはクラゲ専門の研究室風の空間「くらげバックヤードのぞき窓コーナー」もあります。
2020年8月には、黒潮生物研究所と新江ノ島水族館との共同研究により「オトヒメクラゲ」という新種のクラゲを発見したことをきっかけに、その生体展示を行っていたという実績もあります(なお、現在はオトヒメクラゲの展示は行われていません。詳しくは「世界初!新種のクラゲ「オトヒメクラゲ」生体展示 ※令和4年8月30日更新-アクアワールド茨城県大洗水族館【公式】」)。
珍しい個体や生まれたばかりの個体が展示されることもあるようなので、訪れた際はぜひ忘れずにチェックしてみてください!
環境豊かな生き物の聖地「大陸棚」にすむ生き物たち
「神秘の海ゾーン」にすむ住人たちは、クラゲたちだけではありません。
茨城県の眼前に広がる海の沖合にある、環境豊かな生き物の聖地「大陸棚」にすむ、キアンコウやタカアシガニ、キンメダイなども見ることができるのです。
たくさんの生き物たちの展示は人気も高く、足を止めてじっくり観察しながら楽しむお客さんも多いようです。
サメに着目すると、このエリアにはアブラツノザメが展示されています。全国的にも割とポピュラーなサメの一種で、全国の水族館で飼育されています。
私の地元の地方では食用としても人気の高い種類のサメで、漁場や漁師さんの間では同じく食用として人気の高いホシザメやシロザメ、アブラツノザメのことを「あぶらざめ」と呼び、多くの人から親しまれています。
もちろんホシザメとアブラツノザメは全く別の種類のサメで、学術的には混同してはいけないのですが、サメの中でも小柄な体つきや、体表の白く小さな模様は、風貌が似ていると言えるかもしれません。
アクアワールド・大洗には本当にたくさんのサメたちがいますから、多種多様な名前や顔、体の大きさや自分の気になったポイントなどを1匹ずつ探しながら見てみるのも、楽しい水族館の思い出をつくれるのではないでしょうか。