手軽に海の生き物たちを観察できる「磯」。
そんな磯にも、近年懸念される地球温暖化や環境破壊の魔の手が迫っています。今回は筆者が磯遊びで目の当たりにした環境の変化を記していきます。
磯は手軽に行けるフィールド
四方を海に囲まれた日本は、それだけ「磯」の数も多くあります。
海のそばに住んでいる人にとっては、磯は手軽に自然観察できるフィールドの一つだったのではないでしょうか。また、電車や公共交通機関のみで行ける磯も多く存在します。つまり、日本人にとって磯は気軽に海の生き物を観察できる絶好のフィールドだと言えます。
今回、私は大学時代の友人と共に関東某所の磯を探索しました。最近は海外に行ったりダイビングしたりと中々ハードなフィールドワークばかりしていましたが、手軽に遊べる磯もそれらとはまた違った楽しさがあります。
久々の磯でどのような装備で行ったらいいか忘れており、適当にマリンブーツと採集用の網だけを持っていきましたが、まんまとカメノテやフジツボで指を切ってしまいました。
安全に観察するためには、やはり軍手なども必須ですね。皆さんも磯を訪れる際は気をつけてください。
流れ藻を求めて磯の奥へ
磯の少し奥に木屑や流れ藻が溜まっている場所がありました。
「流れ藻」とは、波などによってちぎれてしまい海面に漂っている状態の海藻のことを言います。主に藻体に浮きを持つホンダワラ類が多いです。
こうした木屑や流れ藻の溜まり場に隠れる生き物が多くいます。
早速溜まり場を網で掬ってみると、透明な体をした稚魚が見つかりました。
稚魚の種同定は本当に難しく、稚魚の時と成魚の時で見た目が全く異なる魚も多くいます。
この稚魚もパッと見では何の魚かわかりませんでした。一通り観察した後、優しく海へ還しました。
ルアーや釣り針だらけの磯
流れ藻の溜まり場の写真を見て気づいた方もいるかもしれません。
そう、木屑や流れ藻に混じってゴミも溜まっているのです。
特に今回私たちが探索した磯は釣り人も多く、一部にはマナーの悪い釣り人がいます。
流れ藻を採集している最中、ルアーや釣り針を見つけました。ちょうどビニール袋を持っていたため、微力ながら回収しておきました。
皆さんも磯探索の際にこうしたゴミを見つけた場合、できる範囲で拾ってみてください。少しでも環境破壊になるものを取り除いていきましょう。
レア魚ゲット!しかし…
潮だまりのガサガサで、友人が白点模様のヒラヒラしたかわいい魚を採集しました。
おそらくハクテンハタの幼魚です。
さらにはシマスズメダイの幼魚、フエダイの仲間(イッテンフエダイかクロホシフエダイのような気がします)も採集しました。
私も友人も昔からこの磯に通っていますが、ここで彼らを観察するのはほとんど初めてです。
いつもはボラやアゴハゼなどよく見られる魚を観察していた磯に、本来は南方よりに生息しているレアな魚が見られるのですから、テンションも上がります。
しかし、喜んでばかりもいられません。こうした南方魚が見られるということは、この周辺の海の海水温が上昇している証拠にもなるからです。
友人曰く、ここ数年は以前全く見られなかったチョウチョウウオの仲間でさえ磯に現れると言います。
もちろん夏から秋にかけてのこの時期は、南方の魚(死滅回遊魚)が関東近辺の海にも現れます。南方魚が見られることはなんら不思議ではありませんが、問題は彼らの一部が越冬しているということです。
低水温では生きていけないはずの彼らが、そのまま次の年も関東近辺の海で生き残っているのです。
また、千葉方面の海ではサンゴの一種であるミドリイシの仲間が年々増加しているとも聞きます。私も友人も、南方のカラフルな魚が見られたことにテンションが上がりつつも、同時に少し恐怖も感じてしまいました。
磯の観察でわかる、温暖化の危機
手軽に観察できる磯でも、残念ながら温暖化の影響や海ゴミの光景を目の当たりにできます。
こうした環境の変化が少しずつ積み重なり、やがては手軽に観察できたはずの磯の生き物も見られなくなってしまうかもしれません。
磯観察では手軽に生き物や自然を感じられると同時に、こういった問題を目の当たりにできます。皆さんも磯探索を楽しむと同時に、少しでも温暖化や環境問題を考えていただけたら幸いです。
(サカナトライター:みのり)