筆者の私には10歳の息子がいるのですが、息子が幼かったころはテレビではなく主に読み聞かせで育てました。ですから、当時はよく本屋の絵本コーナーに行ったものです。
さて、最近になって絵本コーナーに行くと、10年前とは新刊絵本の中身が随分変わっているように思います。中でも、道徳的なことを伝えるものだけでなく、生きものや環境にまつわる内容のものが増えたように見受けられます。
今回は、10年前にはあまりなかった「環境を考える絵本」を紹介します。
それが、『くじらのぷうぷう』(文:はらまさかず 絵:山本久美子、イマジネイション・プラス)と、その続編『ぷうぷうとごみくじら』(同)です。
この絵本は、2冊揃って完結するお話なので、ぜひ合わせてお読みいただければと思います。
「スイミー」を描いたレオ・レオニを思わせる、カラフルで創造性を掻き立てる絵が特徴です。
友だちがほしいくじらのおはなし 『くじらのぷうぷう』あらすじ
主人公はくじらの「ぷうぷう」。ぷうぷうはお母さんと離れ離れになって、寂しい思いをしていました。しかし、そんなぷうぷうにある友だちができました。
そこへウミガメがやってきて、喜んでいたぷうぷうに友だちの正体を明かしてしまうのです。なんと、友だちはプラスチックのお人形だったのです。
そしてウミガメは、このプラスチックのために、大変な傷を負ったこと、クラゲと間違えてポリ袋を食べてはいけないことなどを、ぷうぷうに教えます。
大切な友だちが、自分にとっては危険な存在であると分かった時、皆さんはどうしますか?
そして続編では、ぷうぷうやぷうぷうの仲間たちが、友達であるプラスチックのお人形のためにある作戦に出ます。
ここまで海の仲間がしてくれたら、あとは人間たちががんばらないといけない…。そんな使命感を小さな子どもに与えるラストになっています。
小さい頃に読んだ絵本がもたらす影響
さて、海洋プラスチック問題は一朝一夕で解決できる問題ではありません。
幼少期から危機意識を持ち、自分に何ができるかを考えることが大切です。幼少期からその心を持っていれば、大きくなったときに街にゴミをポイ捨てすることはないのではないでしょう。
1990年代、日本ではそれまで主流だった黒色のゴミ袋を撤廃、ゴミへの意識改革が始まりました。透明の袋になってからは、袋の中身が見られるようになり、ゴミを細かくしてから捨てたり、ゴミ袋を大切に使うようになったりしていきました。
しかし同じ頃、ドイツではすでに何種類ものゴミの分別が始まっていました。ドイツの子どもたちは小さいころから、分別作業をしてきているので、当たり前のようにきちんと分別をするといいます。
幼少期から絵本で環境を学ぶ
そういった教育を受けてこなかった大人たちの中には、見えない所にこっそりとゴミを捨てる人もいます。ゴミ拾い活動をしていると、見えにくい場所にこそ、ゴミが捨てられているのが分かります。
そのため、筆者は幼少期に読む絵本を通して、「環境問題」を身近に考えてほしいと思っています。
海がテーマのもの以外にも、環境を考える絵本はたくさんあります。ぜひ、手に取って読んであげてください。
(サカナトライター:栗秋美穂)