日本に広く生息するアズマヒキガエルは本州に自然分布する両生類です。
一方、北海道においては国内外来種として知られています。過去に複数回導入されており、1980年代以降は旭川市を中心に急速に分布を拡大しているといいます。
先行研究では、アズマヒキガエルの幼生を捕食したエゾサンショウウオ、エゾアカガエルは中毒死することが知られています。
北海道における<アズマヒキガエル>
アズマヒキガエルは東日本に自然分布する両生類で、西日本に生息するニホンヒキガエルの亜種です。
また、アズマヒキガエルは「ブフォトキシン」と呼ばれる強い毒を持つことが知られています。
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近年、アズマヒキガエルは自然分布域以外へ移入されており、北海道、伊豆諸島、佐渡島で確認されています。
北海道では1980年代以降、旭川市を中心に急速に分布を拡大。2015年には北海道の指定外来種に指定されました。
北海道内の生物多様性に著しい影響を及ぼす恐れ
北海道における指定外来種とは、在来種との競合、交雑による遺伝子攪乱など、道内の生物多様性に著しい影響を及ぼし、まはた及ぼす恐れがあるものを指します。
北海道の指定外来種にはアズマヒキガエルのほか、トノサマガエル、チョウセンスズガエルなどが含まれ、指定された生物は野外に放つことが禁じられているほか、適切な飼養等をしなければなりません。
アズマヒキガエルが在来種に与える影響
北海道大学では、アズマヒキガエルが外来種に及ぼす影響を研究しており、エゾアカガエルのオタマジャクシとエゾサンショウウオの幼生がアズマヒキガエルの孵化直後の胚や幼生を捕食すると、死んでしまうことが知られています。
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しかし、アズマヒキガエルの毒はエゾアカガエル幼生に対して致死効果が大きい一方で、エゾサンショウウオの幼生では生き残る場合が多いことも分かっており、生き残ったエゾサンショウウオに与える影響はほとんど分かっていませんでした。
アズマヒキガエルの毒はどう影響する?
北海道大学が新たに行った研究「Alien toxic toads suppress individual growth and phenotypic development of native predatory salamanders」では、有毒種であるアズマヒキガエルが在来種に与える影響を調査し、生き残った在来種がその後どうなるのかを明らかにしています。
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室内実験ではエゾサンショウウオの幼生を単独飼育し、アズマヒキガエル幼生を1匹与える区と与えない区を設け、その後は同じ餌を与えて成長を比較。
また、エゾサンショウウオの幼生は大きな餌生物が高密度でいる場合に顎を大きく発達させる「大顎化」が知られていますが、アズマヒキガエルの毒が大顎化にも影響を与えるのか調査が行われています。
一方、野外実験では、野生の密度を再現した自然池でエゾサンショウウオの幼生を飼育。孵化直後のアズマヒキガエルの幼生の在・不在を操作して、室内実験と同様の結果が得られるのか調査が行われました。
この実験では、アズマヒキガエルの産卵のタイミングがエゾサンショウウオの幼生に与える影響も調査されています。
毒により成長が抑制されることが判明
実験の結果、アズマヒキガエルの幼生を1匹でも食べると、エゾサンショウウオの幼生は成長が抑制されることが判明。捕食後16日経過時点では、アズマヒキガエルの幼生を捕食しなかった個体と比較して、成長が約25%低下することが分かったのです。
加えて、アズマヒキガエルの幼生を捕食したエゾサンショウウオの幼生は大顎化ができなくなることも分かりました。
野外実験ではアズマヒキガエルの幼生がいる場合、エゾサンショウウオの幼生の平均サイズが小さくなることに加え、日数の経過とともに生存率が低下。有毒な外来種は在来種に負の影響を与えることが示されました。
在来種に対する外来種の影響は中毒死のみならず
これまで、有毒な外来種による影響として中毒死が注目されていたといいます。
今回の研究でも明らかになったように、有毒な外来種による影響は中毒死だけではありません。
今後は中毒死だけではなく、生存した在来種に与える影響などにも着目していく必要があるでしょう。
(サカナト編集部)