“全身にヒゲが生えた”カワハギの仲間がいるのを知っていますか。
その名は「ヒゲハギ」。名前の通り、まるでヒゲが生えたような見た目をしています。
少し変わった模様と共にどこか愛嬌のある顔をしていて、目を奪われます。
ヒゲハギってどんな魚?
ヒゲハギ(学名:Stephanolepis cirrhifer)は、フグ目モンガラカワハギ亜目カワハギ科に分類される魚です。中型の魚で、成魚は25cm程度に成長するそう。
千葉県以南の太平洋、新潟以南の日本海、東シナ海、東南アジアやオーストラリア周辺などの水深50mよりも浅い岩礁に生息し、海藻や小型の甲殻類、ゴカイ類などを食べます。
ヒゲハギ(提供:PhotoAC)白から茶色っぽい体色をするヒゲハギは、生息環境によって少しずつ体色が異なります。
これは生物の環境適応によるもの。生育環境に合わせた体色に変化させることで、敵に見つかりにくくなり、生き延びる可能性が高まるのです。
特徴はヒゲのような皮弁(ひべん)を持つことです。皮弁とはウロコが突起状に変化したもので、皮弁を持つ魚を皮弁魚と呼びます。
皮弁をもつ魚には、ハナミノカサゴやボロカサゴなどいくつかの種類がいます。そう、カサゴがもつあの“ひらひら”のことを皮弁というのです。
皮弁は海藻に擬態したり、身を守ったり、エサをおびき寄せたりする役目があるそうです。
ヒゲハギはおとなしい魚?
ヒゲハギは、気性が荒いことで有名なモンガラカワハギの遠い親戚です。
両者は同じフグ目モンガラカワハギ亜目に属する魚ですが、その中でもかけ離れた性格だといえるでしょう。
モンガラカワハギ(撮影:額田善之/撮影場所:桂浜水族館)モンガラカワハギは強靭な顎と歯を持っており、ダイバーやシュノーケラーを噛んでけがをさせてしまうこともある魚です。特に繁殖期である6月から8月は縄張り意識が強く、近付くのも危険なのだとか。
しかし、ヒゲハギのほうはどちらかというと神経質な魚。モンガラカワハギのように、海で見かけたら注意!……というわけではありません。
ヒゲハギ(提供:PhotoAC)水族館では生きものたちの意外な秘密を発見できる
ヒゲハギは怖がりなので、人目を感じると隠れようとします。筆者が水族館で見かけたときには、そのしぐさがまた可愛らしく、つい見とれてしまいました。
水族館でヒゲハギを見かけたら、そっと観察してみてください。皮弁が美しくシャイなヒゲハギがきっと目の前に現れてくれるでしょう。
(サカナトライター:額田善之)