フィールドワークという言葉を聞いたことはありますか?
フィールドワークとは、実際に現地へ赴き、自然をこの目で観察し、文献だけでは得られない“生きた情報”を収集する調査手法のことです。
遠くへ行かずとも、思わぬ発見は身近な自然に潜んでいるもの。でも、「フィールドワークってどうすればいいのか分からない」という人も多いはず。
そこで、フィールドワークの取り組みをまとめた本のほか、フィールドワークの魅力や注意点を伝えてくれる本など3冊をピックアップしました。いずれも、「水辺の生きものと人をつないでくれる本」ばかりですよ。
10年間にわたり追い続けた川の記憶『ふるさとの川をめざす サケの旅』
岩手県内の川で生まれたサケを追う写真絵本、『ふるさとの川をめざす サケの旅』(平井佑之介(2024)、文一総合出版)。
著者のいきもの写真家・平井祐之介さんが、東日本大震災からよみがえった河川を舞台に、サケの一生を追い求めます。
『ふるさとの川をめざす サケの旅』(画像提供:SAKANA BOOKS)被災後の川に約10年通い、命が行き交う風景と、そこに暮らす人々の姿を丁寧に記録してきた平井さん。本著は、丁寧で粘り強いフィールドワークの積み重ねが凝縮されています。
迫力満点の写真たちは、サケが力いっぱいに生きてきた命を鮮明に映し出します。この記録を読んだあなたはきっと、自然との向き合い方が変わるはずです。
魅力いっぱいの淡水生物を紹介『たくましくて美しい 淡水生物図鑑』
『たくましくて美しい 淡水生物図鑑』(関慎太郎(2025)、創元社)は、幼少期から淡水の生きものに魅せられ、以来50年近く向き合い続けてきた関慎太郎さんによる著書。
『たくましくて美しい 淡水生物図鑑』(画像提供:SAKANA BOOKS)図鑑といえど、関慎太郎さんの“淡水生物愛”が詰まった一冊で、非常に読みやすいのが特徴。「淡水生物とは? そもそも淡水とは?」という身近な疑問に始まり、淡水生物の多様な魅力を写真とともに紹介してくれます。
さらに本書の最後では、著者が琵琶湖畔に立ち上げた小さな水族館「びわこベース」についての話と共に、フィールドの楽しみ方を教えてくれます。
身近な河川や湖をより楽しむ手助けとなる一冊です。
マナーを守って自然を楽しもう 『改訂版 いきもの六法』
海や川で魚を釣ったり、田んぼでカエルを捕まえたり、海辺で貝を拾ったりといった日常的な自然とのふれあいが、思いがけず法律にふれることがあります。
この生きものは触っていいの? ここの魚は釣っていいの?
そんな疑問に答えるのが、『改訂版 いきもの六法 日本の自然を楽しみ、守るための法律』(監修:中島慶二、益子知樹/編集:山と溪谷社いきもの部(2025)山と溪谷社)です。2022年に刊行された『いきもの六法』が改訂され、法改正や新たな保護対象にも対応し、2025年7月に改訂版として刊行されました。
『改訂版 いきもの六法 日本の自然を楽しみ、守るための法律』(画像提供:SAKANA BOOKS)生きものや自然と気持ちよく触れ合うために、正しい情報を知っておくことが大切です。
生きものに関わる「種の保存法」「外来生物法」「自然公園法」「文化財保護法(文化財保護条例)」「森林法」「漁業法(漁業調整規則・遊漁規則)」「地方条例」の7つの法律に触れながら、分類ごとの注意点を解説しています。
特に、フィールドワークで生きものに触れ合う人におすすめしたい一冊です。
まずは身近な自然から観察してみる
いかがでしたでしょうか。自然に触れ、生きものが歩んできた歴史を知る──デジタル化社会の今、“人間”という生きもののあり方を見つめ直すひとつの術だと考えます。
ぜひ、紹介した本を片手に、身近な自然を観察してみてください。きっとそこには素敵な景色が広がっているはずです。
(サカナト編集部)